昭和5年の夏、関西のとある町にて
縁側に横たわり昼寝する
少年が目覚めた頃、母親は
まっ赤に濡れた{ルビ西瓜=すいか}を
お盆に乗せて、持ってきた
庭に立つ一輪の{ルビ向日葵= ....
「位置について、用意」
乾いた鉄砲が空に鳴ったら
時を忘れて
自らの存在が溶け去る迄
只、走り続けよ
脳内から分泌される
あどれなりんの快楽が
体内を巡り
魂の ....
こしかけていたひとが
もういないので
そのいすに
こしかけてみる
いなくなったひとと
おなじくうかんに
ねぇ こっち向いてよ
誰としゃべっているの
ねぇ こっち向いてよ
何を考えているの
嫉妬の始まりはみんなこう
恋人でも 友達でも 両親でも
さみしい って気持ち
愛されたい ....
空き缶がある
中に一匹の蝿がいて
ぶんぶんと旋回している
わたしの耳に聞こえている
耳にだけ聞こえている
蝿は蝿を欠いている
蝿は蝿を欠いている
....
逆立ちをして血が上り続けてしまったことを悔やんでいた男たちは鉄錆になく
暮れとも明けともつかない空は鈍色だ。鉄骨の喉元を明け透けにして、鉛筆の芯みたいにうらやましい胚内をうらんで、せせこましくも ....
死者の世界をも包括しないと
現代に物語が成立することはない
といったのは誰だっけか
死者の世界とは
異形の世界であり
異能の世界でもある
リアルが
揺るぎないものとして
そこに ....
目を刺す金色、完璧な夕方、漫画雑誌の白黒
まずそうな紙の上で女の子が笑ってる。明朝体でしゃべるのが逆に
ポップ。あらかじめ用意された運命がめぐる毎週、終わる前提の世
界で、それでも恋 ....
富士山が爆発で
その姿かたちを変えてしまったら
あの容姿をもう
見つめることが出来なくなってしまったら
やはり過去なんだ
ぼくらは過去で出来ているんだ
過去とは原因のことではない
過去と ....
赤い糸切れて結んで春隣
鬼やらいリップクリーム貸したげる
早春や秘めた想いをチョコに載せ
まぶた閉じ2月の睫毛恋してる
菜の花忌司馬遼読んだことがない
春遠し十円ハ ....
.
なぜ真っ黒な爪を残そうとするのか
なぜこんな真っ黒な棘をおれたちの
臥床{ルビ=ふしど}の下に残そうとするのか
おれが寝返りをうつたびきみが頬杖をつくたび
おれたちの手を胸をちくちく ....
{引用=
新人の台頭にカメラマンはシャッターをきりきり舞いさせ
華麗なジャンプはエッジを立てきりきりと氷を削った
綺麗な放物線を描いて舞った氷は
スケート靴すぐ傍ぎりぎりに
命がけ(とプレー ....
顔見知りの男が死んだ
いつも何かにイラついていて
斜に構える自らの姿に酔いしれていた
そんな一人の男が死んだ
※
よくある話しだけど
おんなが二人いた
別れた奥さ ....
愛してるそんな言葉を載せられる川の流れと笹舟さがす
僕と君名前を交換し合わないか嫌いな名を捨て好きな名になる
歳を取ってその分きれいになったよね僕もそろそろ白が混じった
ほんとうの言 ....
自分の人生を愛おしんで
ここまでつき合ってくれた
セーターの青ミックスの色を
両の腕に抱きしめる
コープのお店に並んでいた
赤ミックスも緑ミックスも
好きだったな
モールのセーター
....
この世界は綺麗です
あなたはそう言って
どこかへ去って行った
この世界は綺麗です
あなたは泣きながらそう言った
この世界は綺麗です
あなたは痛みに顔を歪ませて言った
....
43歳の大人の男なら
こんなふうに言うんじゃないか
こんなふうに動くんじゃないか
そんなことを考えながら
喋ったり行動したりしている
たぶんみんなもそうなんだろう
「普通」ってなんなんだ ....
時計のない国で
のんびりと暮らしています
時計はなくとも
時間はあるわけで
朝、昼、夜と
まこと
大雑把な時間の感覚ではありますけれど
いちまばたきが
およそ一秒
....
屋根裏に集めた傘をさす 息が飛行機雲のようにまぶしい
物言わぬ駝鳥の目
遙か目の先には地平線がある筈なのだが、
駝鳥は相変わらず地面を見つめせつせと虫を啄む。
せつせせつせと虫を啄む
危険を感じたとき駝鳥は首を長くして遙か遠方を睨む。 ....
許容量を超えた痛みには
モルヒネを!
彼女にとってのモルヒネは
慰めでも愛でも誰かの保護でもない
背中に彫られ増殖しつつあるドラゴンタトゥーと
顔のいたるところに開けられたピアス
....
オーケストラの調律の基本となるのは
オーボエの出す440HzのAの音程
オーボエは音程の不安定な楽器であるのに
ただ音程が聴き取りやすいために
その任を担わされる
しかしコンサートマ ....
独り暮らしに
慣れたのか
不安なのか
はたまた
楽しんでるのか
つまらないのか
休みの日の夜は
あてもなく
バイクでちょっとお出掛けをする
街から少し離れた
農道を走る ....
子供のころ
ブランコを漕ぎながら目をつぶり
どじょ〜、どじょ〜、と叫ぶと
気持ちよくて好きだった
なぜ
どじょうだったのか
それを思い出すたび
胸に痛みが ....
ホッテントット
ビッケ
ブッシュマン
ホッテンプロッツ
ノルマン人
ロイバー
メスチゾ
蒙古斑
マッケンジー
アルマゲドン
マーマーレード
モカマタリ
テーブルのチェス盤を
ホームレスの男が布きれで拭いていた
ジュースや鳥の糞をこすり落とし
手でベンチの砂を払う
彼は物乞いではなかったけれど
ここに通う常連は
ヌードルやスナック、財布 ....
頬杖をつく
頬杖をついたところに魚が生まれる
机の地図をそよがす尾びれ
三秒とたたず
世界を跳ねまわっている
少し寒い(少しでなくとも寒い)冬の日は
暖房のスイッチへ泳ぎ着く
小銭がたま ....
シに到達できず、
ラララさまよう、
♭や♯は
いくらでも付けれるけれど、
僕は鮭の子孫じゃないし、
川に逆らって産卵できるほど、
金の感情が得意ではない
ひかるよひか ....
歩くのに疲れて
たどりついたところに
バスの停留場があった
時刻表に記された時間は
呆れるほどのまばらさだった
古めかしく
ところどころ錆びに侵食されて
そもそもちゃんと
機能して ....
死神は深い森の中で魂を喰って生きている
奴は言う
美味い魂もあるが不味い魂もあると
私は訊く
どんな魂が美味く
どんな魂が不味いのかと
奴は答える
善なるものの魂は美味く
悪な ....
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