昨年わたしが二十年ぶりに、故郷の秋田に帰ってきて感じた印象は、飲食店の接客も、人々の仕事への接し方も、いい意味で「いい加減」なのである。ちゃんと暮らしを成り立たせるための時間を守りながら働 ....
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野に集えよ
きんぽうげ
小さき
いつつの
花弁ゆらし
....
迷子のような顔をして
歩いているおっさん
優しいひとがいる店へ
とんぼりゆくんだね
あれがとうさんなら
ちょっと許せるわ
あんなひといっぱいいるから
一緒にかえりたい
とうさん ....
雑種の黒い犬を飼っていた
足と耳のさきっぽが白い犬
散歩もご飯の世話もブラッシングもわたしがしてた
学校から帰ると
尻尾をふってぴょんぴょん飛びついてきて
ハッハ言いながらどこまでもつい ....
登校中の女の子と男の子が
道路を横切ろうとしている
飛び出しに供えて ブレーキに足をかける
春の陽射しの中 防寒着の子達は
車道の前に立ち止まり
急に 女の子がしゃがみこんだ
その手に ....
あ という間に時だけが経ってゆく
から、寝て起きるのに
生きるのが 駆けてゆく
思うことはたくさんあるのに
からだは痣跡だけをのこし
かさぶたあとはなかなか消え ず
甘ったるくし ....
お祭りなので
顔を汚くしていた
ドラム缶いっぱい
葛湯を作ってふるまう
青い星だけをつないだ星座を下さった
青いネックレス座だと
いって
作業台の上にはつねに
いっぽんの薔 ....
恋人の心臓を
水槽で飼ってる
鳳凰が月を飲み込む春の空
剪定で残れた枝がホッとする
春の土 寝っ転がって自分知る
童貞が羨ましがる猫の恋
白子干 生まれ変わって白子干
古巣には戻りたくない戻れな ....
減災は、災害による「被害を出さない」ことを目指すのではなく、「被害をできるだけ小さいものにとどめる」ことを目指す考え方です。防ぐではなく、軽減する、ということなので、被災して当然、その時、それから ....
コイントスで
絞首刑か電気椅子か無罪かを決める
若い裁判官は
早く家に帰りたい
可愛いワイフが
彼を待っているから
手を翳すだけで
治癒できるとは限らない
....
ぼくは沸騰するスープである
ジャガイモが崩れていく
ぼくは真っ赤に茹で上がる毛蟹である
苦しさに前脚を伸ばして泡を吹く
底から熱せられていて
二重の蓋がかぶさる
重くてもちあがらないで ....
煮つめられた、ような
まよなかのにおいを
くたびれた寝床で嗅ぐ、遠いこめかみの痛み、ディスプレイの照明を、受けとめ続けたせい
おとなしい雨の日の
波打ちぎわみたいな間隔で ....
東京にいた頃から中華料理を頻繁に食べていたのは、割と安めの定食があるから、と、一人で入っても気兼ねのあまりしない店が中華料理屋に多かったからで、今日も、むーすーろーを食べた。
きのうは春巻 ....
ぎぜんしゃは
いつもきづついてる
ふりをする
ぎぜんしゃは
いつもなにもできない
ふりをする
ぎぜんしゃは
いつもがんばれと
エールをおくる
ぎぜんしゃは
....
一粒の私を
順番に潰していく
一粒の私は
潰れるたびにまた現れる
一粒の私は
いつまでも一粒の私でいるつもりらしい
あの日
真っ逆さまに落ちていく景色の中で
....
{引用=テーマ/創世記の作意を疑ってみる}
ここ100年間、基礎科学、応用科学とも各分野の発展はめざましい。10年タームで加速度が増している感がある。
それでも一般庶民が享受するのは、さしあた ....
目を覚ますと、とある住宅街の狭い路地、これを抜けた先の、猫の通るような路地に出ました。ここはまるで知らない場所でしたので、道ゆく人々を目配せして捕まえ、わたしはこう ....
家を出る時に
ちらほらと
降り出した雪が
そう時間をおかないうちに
吹雪いてきた
三月もなかばだというのに
フロントガラスに
積もってゆく雪を
ワイパーでどける
ラジオか ....
ブラックバード
真っ白な羽を持つ鳥 地味な自分の色を嫌った
そして綺麗な色に出会う為 長い旅に出た
透き通る青は空の色 誰もが託す未来への願い
旅立ちの朝は それはそれ ....
今しがた風呂吹き大根炊く母がとろとろ火かけ黒き碑
点滴の音やかましき隣には空いた花瓶を洗う細君
気散じに蘇州夜曲を口遊む火吹き男の碧き虹彩
無花果のひとつ転がり胞衣壷に翅を揃えて番う ....
1
しかし人生はあまりに冗長で
ただ生きているというだけのことすら
難儀に感じられるというのに、
人を愛している余力も余裕も
無い。
それでもなお、
愛せずにおれぬと叫ぶなら ....
鮭は生まれてから
海を目指して何万kmにも及ぶ
果てしない距離を旅する
その海で4年暮らしたら
産卵期が近づくために
過つことなく自分が生まれた川を
目指して過たず
流れに抗いながら ....
ちくしょう…
と 呟いて
見上げた 闇は
紅く染まって
でも
星は綺麗で
ちくしょう……
呟いた
その言葉さえ飲み込まれて
六分咲きの梅をゆく
見つめる訳でもなく
香りのなかを歩いてゆく
ちいさくなって
盆栽を歩いてゆくようだ
つぎの休みまで待てなかった
人込みはまだ
春ほどではなくて生を隠している
お茶 ....
耳をすますときは
手と足が
とまる
だれにしたって表情が凝固して
仮面になる
手配写真のようにだ
音がするほうに
むける
....
あなたの
骨に
刻む
エピグラフ
八丁湖に近い里山の中
築130年の古民家をマスターが再生させたという
彼は光の彫刻家漂泊の魂
彼のミュージアムで光の芸術を見せてもらう
暗やみのなか中心となるオーロラ様の赤 ....
かわろうなんて
おもわないほうがいい
ひとはうまれてしぬまで
かわっていくからだ
ゆるやかに
むりのないように
しぜんにかわるように
できているからだ
エイハブの 煮えたぎる執念はない
サンチャゴの 生業における死闘もない
ただほんの一瞬
銀色の飛沫 宙に身を躍らせた
美しい魚の姿
七色の光の欠片をまき散らし
碧き海原に滑り込んだ
海の ....
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