愚か者
こたきひろし

若い女性のみずみずしい肢体が
老人の眼を焦がすんだ

見てはいけないのか
いやらしく見ていたら
汚ならしいのか

同じ位の年頃の娘が俺にはいるんだから
恥ずかしくないのかと
自分に言い聞かせるが
家族と他人は一緒にはならない

若い女性のみずみずしい肢体が
老人の眼を焦がすんだ

老いても
男の本能はまたまだ元気なんだよ

死んだ親父がよく言っていた
男だって女だって
灰になるまで続くんだって

よくもまあ我が子を前に堂々と言ったもんだ
勿論
酒が入ってたけどな
そんな時
お袋は何も言わないで
下を見てたっけな

小さな体で五人も産んだんだから
親父の言う事も嘘じゃなかったんだろう

俺は酒を一滴も飲まないから
口を裂かれないかぎり
娘の前では素振りも見せられないけどな

それを隠す事に必死だけどな

親父のように頑固で癇癪持ちで
我が儘な男が昔はいたもんだ
一家の柱になってさ

引き換えて
俺はか弱い男さ

からきし意気地のない
嫁さんに頭のあがらない

でもよ
でもさ

男の性からは死ぬまで逃げられないさ

若い女性のみずみずしい肢体が
老人の眼も焦がすのさ


自由詩 愚か者 Copyright こたきひろし 2020-06-14 09:21:26
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