すべてのおすすめ
まばゆい夏制服の午後をも
陽はゆっくりと、やがては暮れ

あれほどまでに心の通じた学友とも
いつの間にか、もう間に合わず
バイエルの教本の新しいまま
ピアノを辞めてしまった日の夜か

右手、指番号の1番2番にて
恐る恐る、亀頭の皮を剥いたのは
指に指の毛が生えていること
永いあいだ、すっかり忘れていた

まだ僕に夢も希望もあったころ
いつかの祖父らと田植えをしたのに
白鯨ゆく遥かな青天を

僕もゆけたなら

四肢の折り目を開き

やっと、やっとの夏の日を

僕もゆけたなら

平泳ぎの一掻き、一蹴り

果てしなく自由に

生まれたまま ....
木洩れ日の揺れる小道に神様が、やはり現れてはくれず、けれど。
けれどとは言ってみたものの、やはり現れてはくれず、けれども。
寒夜の洗面所に、固形石鹸は芯から冷え、それは無垢な恋人のよう。
悪事に染まった我が黒き掌でよければ、優しく包んであげましょう。
遥かな草原に立ち尽くす夏制服の、三限にて早退した僕の、幻影の。
四限のプールの、命の歓びの、それだけが心残りのような細き背の。
春画の夜を覗きたければ、まずは中指をじゅぽっとシャブリナヨ。
襖障子の処女膜に、優しく、優しくね、中指の先でアナアケナヨ。
兄は水墨のような影を落とし、今にも消えそうに、間もなく消えた。
兄の痕跡は参道に滲み、それすらも次の霧雨に消されるのだけれど。
実家の方角から、炊き込みご飯の炊ける薫りのしたような。
晩秋の寂しそうな母の背が、硬い根菜を刻んでいたような。
たとえば接続詞の消えた世界で、そうして人類は文脈から解き放たれ。
ゆえに僕は何にも縛られる事なく、しかし君とは手を繋ぎたいけれど。
紙飛行機じゃ重そうだから、かみひこーきを飛ばそう。
ひらがなを覚えた頃の、あの、とてつもなく軽い心で。
その蜩は、おそらく、その日暮らしで生きておられる。
その鳴き声は、その日一日のための鳴き声ゆえに美しい。
夏夜にヒューズが飛んで、飛んだヒューズを両手で優しく捕まえた。
そいつの正体は何と小さな蛍で、僕はその小さな光で一夜を過ごした。
病床の旧友よ、それでもなお、夏への憧れを失わずにいておくれ。
学び舎は今でも坂の上に、サイダーは学食の自販機で冷えているよ。
蜘蛛を決して殺さないこと、幼き夏の夕に僕は僕と約束をした。
左右の小指で指切りをし、指が切れ、僕は8本指の少年となった。
落ちこぼれの僕たちは、硝子瓶の外へこぼれ落ちてしまおうぜ。
美しいだけの硝子瓶の外へ、泥臭いトレッキングブーツを履いて。
いつか父が日曜大工で建てた日曜日の家。
その小さな家から僕が巣立つ月曜日の朝。
一石二丁目にも一石三丁目にも鳥は一羽もいやしない。
例えどこへ引っ越そうと、僕らは何も得られやしない。
3密の季節が終わったらね、あんみつを食べに甘味処へ。
秘密の小道を3つ抜け、いつか見つけた、あの甘味処へ。
春の詩集の、その綴じ紐をさ、ほどいてしまおうよ。
春はもっと自由に、毛布を干して、さぁ出掛けようよ。
夕刻のアパートで青年は自らの胸板にニスを塗る。
それを急いで乾かし、稼ぎのために夜へと出掛ける。
青空のリトマス紙は今日も赤く夕焼けてゆく。
実験結果をノートに記し、少年たちは帰路につく。
君のほっぺた、むにむに、君の太もも、むにむに。
君のむにむに、君だけのむにむに、唯一無二無二。
通販番組のトマトは未だ切られたことに気付いていない。
事件は既に発生しているのに、この国の警察はまだ動かない。
出題例:パンはパンでももう二度と食べられないパンは?
解答例:あの子がトングで配膳してくれた給食の揚げパン。
駄々をこねて発酵させてオーブンで焼いて食べた。
君は呆れて家を出ていったから、一人で黙々と食べた。
こっくりさんに使った右手人差し指の先。
あの夏夕の魔力、未だに僅かばかり残ってる。
口内炎を舐めながら新年を迎えた。
舌先に、除夜の鐘の青銅の味がした。
僕の経営するさみしがり屋は年中無休だよ。
店先にちょこんと座り、君が来るのを待ってるよ。
ひだかたけしさんのクーヘンさんおすすめリスト(88)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
夏制服- クーヘン自由詩3*22-7-21
- クーヘン自由詩2*22-7-13
田植え- クーヘン自由詩10*22-7-7
ゆけたのなら- クーヘン自由詩6*21-6-21
けれども- クーヘン自由詩3*21-1-3
恋人- クーヘン自由詩8*20-12-22
早退- クーヘン自由詩9*20-12-17
ナヨ- クーヘン自由詩3*20-12-4
水墨- クーヘン自由詩2*20-11-17
炊き込みご飯- クーヘン自由詩12*20-11-1
接続詞- クーヘン自由詩8*20-10-26
かみひこーき- クーヘン自由詩7*20-10-12
そのひぐらし- クーヘン自由詩5*20-8-10
- クーヘン自由詩7*20-8-7
サイダー- クーヘン自由詩15*20-7-23
指切り- クーヘン自由詩11*20-6-8
落ちこぼれ- クーヘン自由詩13*20-5-29
日曜日- クーヘン自由詩5*20-5-10
- クーヘン自由詩3*20-4-24
甘味処へ- クーヘン自由詩4*20-4-12
- クーヘン自由詩1*20-3-21
ニス- クーヘン自由詩1*20-3-1
リトマス紙- クーヘン自由詩3*20-2-8
むにむに- クーヘン自由詩8*20-2-2
トマト- クーヘン自由詩3*20-1-26
揚げパン- クーヘン自由詩3*20-1-23
駄々- クーヘン自由詩5*20-1-13
魔力- クーヘン自由詩2*20-1-8
口内炎- クーヘン自由詩2*20-1-3
さみしがり屋- クーヘン自由詩12*19-12-29

Home 次へ
1 2 3 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する