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猫砂に埋もれた二人の思い出は
一部は綺麗に乾涸らびて
形だけくっきりと存在している

一部は砂がかけられずに
異臭を発して、未だ砂の上の鎮座する。


軋む心と身体を引き摺って
ほん ....
めざめは はるかとおく
めざましは なりやまない
汽水域からの 電話の呼び鈴が 
あんなに激しく鳴っているというのに
あらたな就職口からの
電話だというのに

めざま ....
私が不治といわれる病気になった時
学校のことや
子供会のことなんか
代わって引き受けてくれたママ友に
「いろいろごめんね」と謝ったら

事情を知っている彼女は言った
「そんなこと、気にし ....
 
わたしを見て

瞳に映るわたしだけがわたし

わたしがわたしでいるために、わたしを見て




 
大陸を渡り海を越え
渦を巻き
街を空を
夜を冷気をかき混ぜる
降り落ちた闇を雪をまき上げ
小枝を折り幹をしならせ
あらん限りの嘆きを呪いを
憎しみを籠め
声を震わせ
吠える
呻る
 ....
『お母さん、最初から一緒に寝てほしいの』
『あのね、お母さんは忙しいの。
 後で行くから、最初は一人で寝ないとね』

今夜も娘は
テディベアを抱きしめて寝ている
その規則正しい寝息を確認し ....
己の罪の数だけ
要らぬ蕾をつけるがために
言葉と孤独を闇に吐きつつ
切ない光合成を繰り広げる

届かぬ時空に
半端な想いを投げ上げて
何もつかみ取れない握力を
夜毎くどくどしく恨み ....
日本にはね
本当の荒れ地も 砂漠もないんだよ
確かに 
火山の荒れたガレ場や 海浜の砂丘は
あるけれど
それは 緑豊かな大地のツマ
それがあって
それも含めて
大地は一層美しくなる
 ....
 *与ひょう(仮)

あなたのいのちの陰影を
はきだめから拾い集めた
{ルビ文字=もんじ}の墨と二枚の舌で
なぞりたいのです

顏の砕けたおつうさん
どうか一編の愚行と
淡雪のよう ....
歩き始めたのは いつだったろう
曲がり角 いくつこえただろう
何気なく 左に 曲がってしまって
迷い犬よりも 途方に暮れてた

別れ道で あることさえ
気がつかず 通り過ぎてた
いくつも ....
人には全裸になっても
見えない部分があります
隠しているわけではありません

母は江戸と背中を見て死にたい
と言っていました
  その頃 
  江戸はもうありませんでしたけれど
  背 ....
細々と清らかな
自我を削ぎ落したような声の集合

僕らはみんな生きている
生きているから歌うんだ・・

なにかもっと
違う歌を歌えばいいのに
コミュニティセンターの廊下に
西日はさし ....
夜な夜な隣の家から
変な呪文と甘ったるい匂い

お化け屋敷に住むのは
お婆ちゃんに化けた女の子

大鍋に入れるのは
吸血鬼の冷蔵庫から盗んだ
ラズベリージュースと
人魚と取り ....
セロリくん
臭いから苦手だっていう人
あんがい多いんじゃないかな

触感はシャリとして蕗みたい
いたって淡泊な味なのに
強烈な野菜臭で
やたらと自己主張している

漢方薬みたいなあの ....
 数え切れない
 手に負えないくらいの
 幾千枚の白いはなびらが
 ほとんどいっせいに
 枝という枝を離れて
 舞い踊る
 まるで蝶のように
 儚げであるのだけれど
 或る意志を持って ....
小野道風は 
柳に何度も飛びつく蛙を見て
一念発起したという
  そのとき 蛙が 
  あの虫はまだ不味い
  と負け惜しみ言って諦めたら
道風はただの人になって
歴史に埋もれていっただ ....
あそこに星が、と
きみのさししめす指があわれで
ぼくはこころで百万粒ほども涙をながす
なにもかもまっしろなこの部屋で
きみはそうしてはるかかなたを眺めているのか


生き ....
よろこび
いつくしみ
むさぼり

穢土はひとのこころにすむものか
浄土もまたひとのこころにあるものか

コーヒーに
砂糖とクリームをゆっくり溶かしながら
そんなことをおもう

そ ....
窓のない部屋 
白い手首がシャッフルする
水面に触る木洩れ日の
うやむやな笑み と
瞳に乗せたアリジゴクの
匂い 夏の
あまいめまい
名を呼ばれて振り返る
捏造された記憶
朝顔によく ....
目を閉じると
緋色珊瑚色菜の花色
まぶたの裏に
現れては消える明るい斑

風の無い中庭は
緩やかな分子で満たされて
枯れ枝から枯れ枝へ
見知らぬ鳥が声を探している

鎖骨のあた ....
「さて、今日は何をしようか」
朝起きるとひとまず煙草を吸って考える
吸いきらないうちに人間を卒業して
ロボットにでもなれたらいいのに
たったと行動計画をたてて
それがいかに杓子定規であっても ....
ここから先は立ち入り禁止
ガードもなくエリアラインがなくても
分かっているさ そんなことは

向こうのエリアの熟れたリンゴが
極彩色の芳香を漂わせてくる
閉ざされた花園には
咲き乱れる虹 ....
 
隣の芝生が青くみえる丑三つ時

いっそ眠れないならと珈琲を飲み

ため息、またひとつ



 
カモの群がる池の畔
桜花映える日差しに包まれ
川鵜と小白鷺が向き合っている

川鵜
  すっかり春だねえ
  これから北へ帰るのか

小白鷺
  いや まだ田に水が入っていないので
 ....
一人だけホテルに泊まらず
テント暮らしのあなたは
私と同じね

私も中学生の頃
今よりずっと幼く見られたから
子供料金で電車に乗っていたのよ

そのお金で本を買ったり
駅のホーム ....
真昼のまま凍りついた
ひとつの情念
名づけようもない一編の詩を装い

光明な思想が引きずる裳裾の陰鬱
石仏のように摩耗して正体もなく

言葉は羽 風に舞い
人は水 流れ集まる低く低く色 ....
のんべんだらり
日長一日 だらだらと
ソファーの小舟で
文庫本が櫂に
目が疲れたらひと休み

音楽の風に吹かれながら
好きな時間を小舟に乗せて
無為の海を漂流しよう

のんべんだら ....
バッタの死骸に群がる蟻は
ひとっかけらの憐憫も持たず
手を合わせることもない

蟻には何の罪もない
わたしが
とても小さなこどもだった頃
なにも知らない
知らないということが許されていて
それが
どんなにか幸せだったかということさえも
知らなかった
笑うたび頬に
くぼみを作っていた頃 ....
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す

月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた

就寝前に外の便所
白い庭に ....
北大路京介さんの自由詩おすすめリスト(16299)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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