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冬庭は音符を奏でる
花の終わった残骸は
案外気難しく
やっと植木鉢から引き抜けば
無数にめぐらせた白い根は
持てるかぎりの土をかかえこんでいる
ああ うたはここからも
うまれてきてい ....
針を指先に刺して、
血の花を咲かせるように、
ことばを呼ぼう。
浮かんでは消えていく気配が、
幻聴によく似た囁きに呼応する。
....
看取りは二晩続く。その二晩が終われば、二日お休み。そのあとは三日間通常の勤務。そしてまた看取りだった。看取り二日目の日はいつも息子は老人ホームで遊んだ。
「すっかり人気者だね」
同僚の立石さんがぼ ....
朝
おはよう
と言う
それだけでほっとする
朝が来たということ
と
声がちゃんと出るということ
おはようを言わない1日は
もやもやしている
昨日がまだ続いているよ ....
臨界に旅立った母は、すこし痩せたみたいだ
もう、帰りたい。という
ここには団欒がない。という
距てるものは何もないのに
働きすぎたのだろうか
午後十時二分の、電動歯ブラシは
....
母から聞いた遠い日の思い出話です
貧しい農家だった父と母は
農耕馬に馬橇を引かせ
町の市場へ暮れの買い物に行きました
正月のための食材を買い
家族の冬のビタミン源として
おそらく当 ....
存在の不安を癒すはずの
名も知れず 闇から生まれ闇に去る運命の
生者よりも はるかに数多い死者を看取った
神が それを許したのか?
大好きな町が 罪のない血に染まった
夜が真 ....
秋と冬の境目の
限りなく冬に寄り添う秋だから
ならべてみたくもなる
あったかいものをしこたまに
{ルビ炬燵=こたつ} 湯たんぽ 綿入れ{ルビ袢纏=はんてん}
焼き芋 甘酒 鍋料理
{ルビ熱 ....
時々家族みんなで行く
安く食べられる回転寿司
息子たちは魚が少し苦手
回転寿司は最近何でもあるので
行くことを楽しみにしている
気軽に握り寿司を食べられる
安く食べられるので
何 ....
名も知れぬ花々が倦怠を司っている。
彼方に聳える山々が郷愁を誘う。
人間は目に見えるものを真実だと捉えがちだが、
夢の中までそれを固持することもないだろう。
夜空に浮かぶ三日 ....
天の慟哭か大地の怒りか人間が驚愕するのは決まって夜だ。
神秘の詰まった夜を私は愛する。
それはロマンに満ちた星空だけによるものではない。
何とも言えぬ甘美な恐怖とそこはかとない漂いが ....
マッチを擦った
においが好き
懐かしいから
クリスマスのロウソク
ストーブ
父さんの煙草
子供の頃に
安心した匂いだ
尊いものを知る喜び
この世にある
数えきれないすべてのもの
命や自然や
歴史や宇宙や
誰かが誰かを想う小さな優しさまで
嘘をつけない人
じっと耐える人
誰かのために笑う人
....
古びたティーポットの、口先から
白いゆげはしゅるるるる…
ぼくの唇からも
凍える誰かを暖める言葉が、たち昇るといい
111520
たまらない貯金箱を作った
材料に凝って、指物師も厳選
手作り品なので原価が2万円となった
流通経費と当方の利益を15パーセント上乗せしたら
一個 ....
あなた方の死骸を埋めると 私が芽を出して育っていく
アイ、の呪いはコトバと声を包んで あなた方を肥やしにどんどん伸びる
声が子守歌に変わる夜
初めて骸の種となったあなた方に 向き合う ....
少年という瞳によって
護られるものがある
少年という瞳によって
救われるものがある
少年という瞳は
なにをも滅ぼさない
彼自身が
砕かれることはあっても
....
膜に被われた部屋で
日に日に神経だけ鋭くなり
哀しみはいよいよ深くなった
わたしは季節を忘れた
今年も春とやらが来て
幻影のような夏が大きな雲とともに
流れて去った
過ぎた日をそこに ....
僕の今夜のスケジュール
ぜんぶダメにしていいから
会いにおいでよ
なんて
ほんとは自分が会いたいだけ
なんて
言えない
こんな
煙のようないとしさも
いつか空に吸いこまれる
よ ....
こりゃたまらんって言われるほどグッとくるフォルムの貯金箱になりたいんだっていうのにどうにもお金が貯まらないタイプはぁ〜背が高くてぇ〜隣にいて安心する人かなぁ〜なんてお茶ならぬスープが濁る原因は沸騰に決 ....
冬が嫌いなのは
寒い夜に
暖かい思い出ばかり
思い出すから
父は
猫と一緒に
いつまでも
コタツに座っててくれると
ずっと信じてた
換気扇がぶっ壊れて
機関車みたいな音がする
台所であなたと目を合わせたら
困ったような笑顔がどこかへ旅立つ
暮らした年月を
思い出させるすべての劣化
年をとったわね
夜
....
真夏の鳥取砂丘には
ただ一本の樹さえなく
にぎわう人と数頭のらくだの黒い影を
その茶色の肌にゆらしていた
運動靴を履いてきたけれど
砂に足をとられて歩きにくい
切れる息
額から滴る汗 ....
ひとつまみで
一生を切られてしまう虫けらは
気の毒だがね
わたしら人間の縄張りに
勝手に入り込んでしまったのが
運のつき
虫けらと
わたしらの共通点は
命のあること
早い ....
(即興1)
一編の詩を絞り出して一杯のオレンジジュースを飲み
コートを羽織って散歩に出ると
何故か月はいつでも山の端ぎりぎりのところに飾ってあった
研ぎすまされて
あまりに細く
落 ....
薄紅に染められた唇で
君の白さは穢されている
それを嬉しがる君がいて
散る散る花びらの多さに
紛れた君の横顔を
探したけれども見つからない
はかなくて白くてそれでいて
美しかった ....
「自分に味方しないものは敵だ」
という考え方と
「自分に敵対しないものは味方だ」
という考え方は
同じようでいて ずいぶん違う
生まれつきの敵も味方もいやしない
パレスチナ ....
渇いた落ち葉を踏んで歩いた
湿ったアスファルトに
暗い空から
時折雪がこぼれてきた
かじかんだ手で傘の柄を握り
歩いたことのない道を選んで
なるべく迷子になるように
帰る方角 ....
つばさ候補生たちは
まだ知らない
おのれがためのつばさには
成り得ぬおのれであることを
知るはずもない
つばさ候補生たちは
まだ知らない
他人がためのつばさにならば
....
悩む
何を信じ
何を疑うか
叫ぶ
どうしようもない
掻きむしりたい
苦しみに塗れて
生活する中で
信じられることは
もちろん
誰でもなくて
たった一つ
君の ....
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