いつものように仕事をしていた
アパートの郵便受けに貼られた
よくある 空室 の文字をなぜか
一瞬 そら室 と読んでしまうと
ドアの向こう せまい間取りの境界が
ぼんやりしてきて 真っ青な空 ....
山を眺めるのが好きだった
巡る季節はどれもみな魅力的で
春の霞とうららかさ
蝉時雨 打弦の瞑想
夏の視線と秋の吐息で染め抜いた錦の衣を脱ぎ捨て
張りつめた冷気の中でも微動だにしな ....
決して建て終わることのない塔がある
光をまったく反射しないその塔は黒い輪郭に
太古の文様を刻んでいる
日の光のもと
それは実体のない白い影となって横たわり
存在を忘れさせる ....
冬の陽ざしは微笑みのよう
内にこもった人にさえ顔を上げさせる
たわわに実ったナナカマドの木の下を
赤いランドセルがかけてゆく
もしも私に娘がいたなら
こんな ....
疲れがたまってくると
虚しい夢が多くなる
また一つ 生まれては
滅んでゆく世界
砂の城に波が打ち寄せるように
香のけむりが描ききれなかっ ....
傷だらけの携帯電話を見ながら
明日のことを思いめぐらす
不利な戦いになる
このまま今日が続くなら
偶然とは理由がわからないだけの必然
真夜中に白い氷が降りはじ ....
いつもなら、秋冬物を早々と買ってきて
早く着て出かけたいと気が急いているのにね
ことしは何だか少し違う
すっといなくなった夏が恋しくて
秋の早足についていけない
まだ大丈夫でしょうと ....
だから結局
「来月からワーホリ行くから」
っていわれた時点で
ああ、もうだめなんだなと
これは、置いて行かれるんだと
私はいったん、絶望しちゃってて
なんでみんな
突然なんだよと ....
17の夏、あの子と
ブラブラ、ブラブラしてた
大学受験も考えなきゃならんしさ
そろそろ、真面目になんないと
ああ、わかってるよ、わかってる
何もかもに集中できず
机に向かえば脱力し ....
やるべきことはない
取り柄などいらない
守るべきものもない
目指す場所などない
彼岸はすぐそこにある
彼岸はここなのだから
いま僕たちが住んでいるこの場所こそ
かつて彼らが憧れて ....
冷たく懐かれた
幾星霜の旅をさまよってたどり着いた
流れ星の
ふる夜は
君の面影をやさしく
思い出すだろう
この世が無常な
仮の宿りだとしても
僕は永遠に
手紙を書き ....
以前に営業で地方をまわっていた。
お昼に立ち食いそばでズルズルとやっていた。
あとから若い娘が一人。
食券を買いあつあつのうどんを受け取って食べようとした瞬間
彼女の昼食を床の上に落としてしま ....
だから言っただろう悪女なんて自分の正当化だって
自分をいじめる道を作って楽になろうってずるいよ
盲目的に愛なんて語らないけど
でも誰かの好きをいじらないでほしい
セフレけっこう
....
暑て長い眠れない夜
これが夏なんだなあと思う
通りにはラップが流れチャラい奴らもちらりほらり
きっとこれが最近の夏の夜の風物詩なんだな
もし日本がこのまま亜熱帯化したら探検してみたい
極 ....
僕に証明書を
早くくれ
市役所でもらえる
あれじゃなくて
頭のなかで笑っている奴の正体を
あばいて欲しいんだ
風が吹くとやって来る影が怖いんだ
僕のとなりで寝ているものが人間だと ....
実り多き夏を私は愛する。
むせかえる暑さに眠れない夜、透き通る藍色の空に浮かぶ五つの星にあなたの幸せを願う。
魂の繋がりを信じて。
夏に実ったものを私は愛する。
感じることができます。
夜汽車に揺られながらも、心の昂揚を抑えきれないあなたを。
心の師に会える喜びを。
あなたの純粋で綺麗な魂を。
感じることのできる僕は幸せです。
時に切なくやりきれ ....
目を瞑ってごらん。
そして両の瞼の上に静かに手を置いて。
そこに、あの時の青く澄んだ空や、鮮やかな森の緑、自分にとって感じの良い情景が浮かぶなら、あなたはまだ大丈夫。
焦らずに、そしてゆっくりと ....
AといえばA
されど
BといえばB
唇は ほどよく濡れ
指先は ぬくもりを感じ
果ては 穏やかな吐息
大海原を望む丘の上で安らいでゆく魂が一筋の輝きを放つ。
しばらく見なかった太陽がその魂をさらに照らす。
緩く弧を描く水平線が真実を浮き彫りにする。
目をそらしてはいけないのだ。
こんなにも自由 ....
神様がいるかどうかなんてわからない。
祈りの意味なんてわからない。
だけど、全ての人が豊かな心を持てれば良いのにな。
北の国の鉛色の空に
貴方の奏でた虹色の音色が泣いている。
それは今も遥か遠い極東の空まで響いているよ。
そしてその響きは、僕の心に深く染み込んで、僕の魂を優しくさすってくれるんだ。
....
丘の上から遥か水平線を眺める。
ゆき過ぎる冷たい風に新しい季節の到来を知る。
あらゆる概念は偉大な自然に包み込まれ消滅する。
嘘も無く、虚勢もはらず、諍いも無い。
生きていていいんだよ。
....
満たされない心は本能に支配される。
理性など知ったことか。
一体何の為に苦しむのだ。
別れた子供の為、迷惑ばかりかけている両親の為、同棲中の女の為、しばらく会っていない友人の為、積もった借金の為 ....
運命は変えられる。
宿命は変えられないという。
本当にそうなのだろうか?
宿命って何だ?
生まれながらに背負っているもの?
この体内に染み込んでいるもの?
体を切り刻み血を全て入れ替え ....
死にたい、また、死んではいけない、と自分の体に傷をつけてるが、結局は死ぬ勇気がないんだ。
わかるかい?
行為的にはすぐ死ねるのに、精神的にはなかなか死ねないんだ。
その矛盾に僕は馬鹿のような悩ん ....
喫茶店の窓から覗く
街の風景は
透明で美しい
ガラス細工のようだ。
道往く人々の足取りは軽く、
今宵のクリスマスイブの準備に追われる
幻想的な蜃気楼。
漂う煙草の煙に人々の心奥を ....
森の中の喫茶店で僕らはささやかな食事をする。
木々の隙間から日が差し、妻と子供の顔を照らす。
影の中から浮き出た顔は幸せに満ちている。
愛が日だまりの中へ溶けてゆく。
湖畔の小さな美術館、 ....
闇に浮かぶ朧ろの月は
僕の心を開いてくれる。
それはどこまでも優しく。
陸一つ見えない大海原に浮かぶ船からの眺めは
僕の心を不安にさせる。
それはとてつもなく恐ろしい。
僕はどこに ....
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