そら室の啓示
ただのみきや

いつものように仕事をしていた
アパートの郵便受けに貼られた
よくある 空室 の文字をなぜか
一瞬  そら室 と読んでしまうと
ドアの向こう せまい間取りの境界が
ぼんやりしてきて 真っ青な空が広がった

人も小さな入れ物だが
心は空のように広大で
その境は無限であり永遠であるものと接している

あなたの内に巨大な台風が停滞して幾日になるだろう
瞳の中に稲光が走る 危険すぎて近づくこともできない

大切な日がゆっくりと しかし速やかに 燃え落ちてゆく
炎に包まれて なにもかも
大切な人がゆっくりと今 暮れて 逝く

やがて
濃紺の闇をこじ開けて
未知なるものが顔をのぞかせる
あなたは問う
 「なぜ それが希望であると言えるのか?

なんの確証もない それが希望
朝が空の外から訪れるように
未知なるものはあなたの心と境を接する
無限であり永遠であるものから訪れる

希望とは赤ん坊
抱きしめて育てるもの
その子が幸せになれるか
善良に育つかなんて
いつまで生きるかということさえ
なんの確証も保証もないまま
大事に守り育てるもの

その日もいつものように仕事をしていた
営業成績はふるわない
だが収穫はあった
扉を見つけたのだ
自分の中に







自由詩 そら室の啓示 Copyright ただのみきや 2011-12-05 22:34:52
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