重く湿った風が流れる
雨の子が風の中で泣いている
黒く長い葬列
蟻の足元で降りて
葬列に参加する
あのとき雨が降っていれば
この蝶は飛ばなかったのに
あのとき雨が降っ ....
西野の花屋で薔薇を買った
高価だから四本だけ(バーボンに託けて)
紫の花弁が密集しておいそれとは見せてくれないタイプの娘がふたり
丁度よく開いた白い花弁になよやかに反り返る
ピンクの縁取りの娘 ....
ねえ、さよならをしよう
後ろ向きに流れるメロディ
誰かが世界のしあわせを歌うよ
アスファルトを強く蹴る
自分ってなにか
求めすぎて自販機で炭酸飲料のボタンを押す
すべてが泡となって足元 ....
上司にパワハラを受け被害者然としていた人が
自分の部下にパワハラをしている
加害者の時は自覚できない
悪いのは常に他者だから
人を傷つけたってわからない
原因は常に相手にあるから
....
赤い糸で仮縫いされた想いは
たぶんジグザグになって
ゆっくりと遠回りして
あなたに向かっていく
蛍が宇宙の渚で
ゆらゆら揺れながら
天をめざして昇っている
星に生まれ変わりたいと ....
闇夜の行列が憎しみの彼方からやってくる。
それは巨大で、熱情を伴い、魅惑的だ。
逃げ道はない。
それは常に君の前にやってくる。
闇夜の行列が悲しみの彼方からやってくる。
....
衣擦れの音で目が覚めた。
こんな夜更けに、暗闇の中で。
気配をうっすらと残しそれは消えた。
夢であろうか。
誰もいようはずもない。
妻も子も出て行った。
私は病気だ。
心 ....
私は太陽の鏡
雨の日も曇の日も
忙しく道を通り過ぎるあなたに
私は光をさす
振り返らなくてもいいの
私は知ってる
夏の間あなたが早起きして私に水をくれたことを
昨日あくびをし ....
しろい雲を
トッピングした
きれいな青空が
ブルークリームソーダに
見えてきて
まだ午前10時
ころなのに
おなかがへってきてしまう
さ ....
降る雨に憮然と私を晒しても
乾くまもなく次の通り雨
紅(くれない)の夕焼け空に見えるのは
積み重なった寂しさの雲
羽ばたきを知らずに堕ちたさなぎでも
夢のまにまに大空 ....
遠いところへ行ってしまった人へ
忘れていった財布が
今もここにあります
空っぽだよと言ったけど
あの日のレシートが
一枚だけ入ってました
最後に行った
二人お気に入りのお店
....
咲き誇る紫陽花
憂鬱な思いに
濡れたふくらはぎ
閉じられる傘
*
雨上がりの明るみ
触れ合う額と額
優しい石鹸の匂い
封筒を開くと雨が降っていた
ポプラを濡らし翻るみどりの雨
ふるえる雛鳥を包み込む手つき
そうして一気に命を絞り出す
言葉は自らを断つ
川沿いの公園
濡れるがまま置き去りにされて
終わ ....
そろりそろりと剥ごう
皮をつつつ、と剥ごう
夜を剥いで朝を剥いで
私というものが
どこでもない場所で剥き出しで
死んでいる、或いは
台所で皮を剥がれた
剥き出しの野菜や肉に混じっ ....
大気のハロー、青い地球
緑は再び燃え立って
私は自分を忘却し
無限の彼方に身を委ねる
)すべて、すべては去っていき
)果ての果てに眩めくもの
)思考の遥かに見出されるもの
(〃詩 ....
朝日を小瓶に捕まえて
蓋をしめて逃さない
泣き出した夜に雨が降る
綺麗すぎて汚くて正しすぎて間違いで
かけがえのないものを掛け違えるまいにちに
夕陽を虫籠に入れる
幼い記憶を餌にして
孤 ....
今日はのどかな高曇り
光の空が白く白く
一様に広がっている
僕はといえば病院の
外出許可を得てあてどなく
何処までも歩いていく
心も体も魂も
〃身一点に〃*凝集していく
そんな ....
人のエナジーが波紋のように広がり
球体ワールドを転がっている
点で描写された緻密な景色を
掌でなでると砂のように崩れた
熱風、夏空、ふんぞり返る太陽
それを遮るように黒鳥が羽 ....
生温かい午後は
初夏の匂いを孕んで
油断させる
眠気を撒き散らし
{ルビ気力=エネルギー}を奪い去り
時間さえも怠惰に流れ行く
束の間
夢を見たような心地を覚え
雷に撃たれたい ....
しろく印した約束
違えないようにと
丁寧に付箋をはがす
いつかの夏のはじまり
まちあわせを繰り返すきせつ
出会わないやさしさ
みどりに染まるかげを
ひたすらに踏みしめてあるく
....
2000年活きた思想を知る者たちよ
星雲の目でこの惨状を見よ
わずか365日前に
お前も
お前らも
震撼した恐怖でさえ
忘却してしまう
しらばっくれた態度をと ....
うつらうつらする
この午後に
鳥は囀ずり
地は照り映え
私の憂鬱と倦怠は
一吹き風に溶けていく
)なんて優しい午後だろう
)遊ぶ子供の声が窓辺から
)うっとりゆっくり流れ込む
) ....
切り取られたくない心情が
白昼の雑踏にまぎれている
いつだって
誘惑は欲を引き連れてくるもの
楽園を失った僕らに
安全地帯などない
この世に微笑みかけたいのなら
たやすく負け ....
みんなに負けないように
風に向かって自転車を漕いでいる
何かに負けないように
風が吹いていなくても一生懸命漕いでいたから
風が吹かない日には
風の風上に立ったのかと思う
風を感 ....
ほんとうは
言葉にしたくないんです
大切なものなのです
それは確かにありました
わたしの胸にありました
おいてきた思い出
わすれかけた純なこころ
ひみつのわすれもの
と ....
これは何度目の雨でしょう
濡れた紫陽花を摘みたくなりませんか
忘れたいことが多すぎて
なにから忘れたらいいですか
なにもかもを忘れたら
あなた居なくなってくれますか
忘れたいことが多す ....
石と薔薇、石に薔薇
逃れ去る永遠は
石に薔薇を刻み込み
無数の棘で肉を刺す
失われた日々よ、〃無限の〃想い出よ
朝
歯を洗い 顔も洗い
だけど
洗面台の鏡は覗かない
自分の顔や頭髪
見たくない
清潔でも綺麗でもない
日々美しく老いていない
それどころか
老醜が鼻をついてくる
でも ....
雨と紫陽花と書きかけ
わたしはドクダミの花をチョイスした
白い十字のドクダミの花が雨に濡れ
美しく光っていたと書いてみた
それだけで、ほっとした
梅に桜にツツジ、ハナミズキ、五月の薔薇
そ ....
今日は雨
いつのまにか
緑を濡らし
緑に濡れ
あじさいの花、
鮮やかに咲き誇る
私はぼんやりと
病院のホールに居る
立ち働く看護士や介護士達、
立ち歩く患者達、
窓ガラスに映り ....
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