浴場上がり
潤沢目尻
豊満の火照り
は、ダレのせいかしらん

まるで
森の都を彷徨するように
思案に没頭してはいたけれど
だからと言って
純に
のぼせた
事情、でもなさそうだわ
 ....
熟れる前のリンゴに
堪えきれず色を塗っていたのは私

リンゴは赤いはずだから
知ってる赤で塗りつぶす

『そのリンゴは本当に赤いの?』
君が言ったので
近くで眺めてみたら
知らない色 ....
小さな赤い宝箱のなかには

赤い血で練られた

犬の人形が一人

教会のステンドグラスでは

神が僕らを見下していた

見えない手によって

人々は屍となっていた

何もし ....
世界には



寂しい男の数だけ
寂しい女がいて




哀しみを抱く人の数だけ
それを解する人がいる



誰も信じられぬ
人の数だけ
信ずるに値する人がいて


探している人の数だけ
幸福 ....
牙が見えるわけでもなく
鍵爪が見えるわけでもなく
こっちを見ているわけでもない
全てはきっと私の妄想

見えないものがやたらとリアルで
見えるものすら覆い隠すほど
真っ黒によどんだ私の視 ....
 *
不意に季節が変わった気がしたのは、強い陽射しのせいなのか

ピリピリと肌に刺す光束ねた空は昨日と別人の顔つきで
僕に微笑みかけて来た
昨日迄とは違い
灼熱を僅かにこめて笑いかけて来る

風 ....
微かに本が吐き出していた
縁の糸に絡み取られたように
また
導かれた一冊の詩集

図書館で目にすると
迷いもなく借りてきた


けれど貸し出し期間の半分が過ぎても開けず
10日が過 ....
恋の仕方なんて忘れてしまった。

私はいつも
その人が誰かのもとへ行ってしまってから、
自分の抱えた想いに気付く。

恋の自覚なんて、忘れてしまいたい。
両手でふたつ
チョキを作って
横に寝かせて
ハンカチをおさえてみる
真ん中がふくらんできて
光る球体がしみ出してきたなら
これは夢
真ん中がしずまったまんまで
外ではせわしく青 ....
じゃがいもときゅうりとにんじん ばあちゃんの「ポテトサララ」をゆっくり食べる


火星から来たのねきっと 突然に怒る男をぼーっと見てる


ドキドキと汗で疲れて起きた昼 破れんばかりの夢を ....
予定のない日曜日
雨続きの週末
部屋の隅あぐらかいて
六弦をいじり回す
干せずに湿った布団みたいに
身体がひどく重いんだ

代わり映えない毎日
部屋を満たす湿度
そのせいか愛猫は
 ....
オルテンシア、幾千の折り紙細工
集球は毬つき
ばよんぼよん
ひも付きではない枝付きの水ヨーヨー

けれど気をつけなければ
あじさいの葉裏はそれだけで{ルビ聖域=アジ―ル}

ヘアリーな ....
6月4日AM0時05分

玄関の鍵をあけ、
わたしを窮屈な女に閉じこめている
ストッキングを脱ぐときが楽園。
爪をひっかけて伝線、
1回500円の過ちにイライラする。

 ....
何故泣きたい

私の心は薄っぺら
私の言葉は薄っぺら
私の行為は嘘っぱち
私は嘘で出来ている
大層な日々など生きてはいない
それなのに、
何故泣きたい

私の涙に価値などない
私 ....
頭の骨の中で起こることが
あなたとわたしの全てではないと
確かめながら
食べ
汲み、飲む
気持ちのよい
作業を続けていますけれど
こころは
殻なしの底なしのたまごなのです
中には
 ....
いったい僕らはなぜ

神によって地球になげこまれたのか

惨めなまでに世界は醜くなる

いくら注ぎ込めば

人類はこんなにもおろかになるのか

直流する稲妻に乗って

いばらの ....
あんさん、覚えておきなはれ
京都のおんな、みんながみんな
はんなりしてるおもたらあきません
御着物似合うおもたらあきません

夜の先斗町はえらいにぎやか
酔っ払った兄さんたちがふらふらと
 ....
パン屋のお嬢さんが
背中をさする手つきで
生地をのばすものだから
もう 薬は要りません

開けては 閉める
逃げ道を塞ぐ
冷えて固まったガラス
透き通る壁の中

発酵したい、ね
 ....
私とはひとつ違いだった
先生の評判を聞きつけて遠方から通ってくる
いわばミーハーな生徒さん同士

どちらからともなく話しかけると
すぐに古くからの友だちみたいに親しくなって
いわゆる「気の ....
まだ色を持たない紫陽花は
ふつふつと泡みたいな蕾をつけて
くすんだ背景に溶け込む

重たく湿った空気の匂いがし
右足の古傷がしくしくと痛む
身体は正確に天気を教えてくれる

 ....
そこそこの底にはいつも君がいて
そこそこの底ではいつも雨
そこそこの底の君が濡れないように
そこそこの底までおおう傘をひろげる

闇にも鮮やかな黄色い傘に
金の糸で縫いつけた心星が

そこ ....
モノクロの空を仰ぐ

モノトーンがいくら混ざったって

見える景色は殺伐とした

あまりにもつまらなすぎる

風景だった

地球の軋みを耳で聞き取り

それをしらせようと

 ....
雨音の創意は多分、
創痍に似た額装


明日以前を水平移動する
僕の為に



背中から
刺してくれ






部屋に
飴色を敷きつめ


古いレコードに
針をおとして
ベビーカーに寝かされて 
泣いている赤ちゃんを 
若い母が覗きこみ 
「痛いの痛い飛んでいけ」と囁けば 
不思議と笑みが浮かびます 

産声を上げた誕生の日から 
幾十年の月日は流れ 
 ....
二人で引いたおみくじは
その元旦の初詣の甲斐があったのか

二人とも大吉だった


大吉にも中身が色々あって

満点の大吉もあれば
赤点の大吉もあるということを
同時に ....
彼女と手をつないで今夜
麓の街で開かれる
夜祭りを見に行く

月明かりが硬く降り注ぐ
蒼ざめた石畳の街の四隅に
かがり火が燃える

やがて大弓を載せた
台車が四隅から繰り出して
街 ....
お願いします、どうか
そんな他愛も無い言葉で
私の古傷を、抉らないで下さい。
ねずみ色のコンクリートが暗く染まる
何か落としものがあったような気がして
歩いて来た道を右から振り返ってみた
つうつうと機械的に落ちるさみだれ

庭に投げられっぱなしの花切り鋏は
いつから ....
かんだかい悲鳴で目が覚める

でもそれはちがかった

醒めたのは覚醒の産声

もう後ろには下がることが

できなかった

今まですれ違った人達は

世界の何%だろうか

今 ....
犬は音量がデカい

犬はいつまでも音量がデカい

猫の音量もデカいが

こっちは、しばらくすると「ブツ…」という音と共に消えるのが定番だ

なのに犬はまだ音量がデカいので

飼い主 ....
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