力強い波の音
体の芯まで響かせて
荒々しく波
水面は留まらない
動き続ける
常に新しい顔見せて
洗い流せ
洗い流せ
蹲るこころ
....
今日も妻と
市場でリンゴが安かったのよ
という妻の言葉を
忘れえない
揺れる電車でそっと
僕につかまってた妻
一緒にいつもいつも
続けた伝道ボランティア
今日も妻の三枚目の ....
プリンのカラメル魔法の口紅
甘い恋にはかかせない
プリンのカラメル魔法の口紅
甘いキスにはかかせない
プリンのカラメル魔法の口紅
濡れない時もかかせない
プリンのカラメル魔法の ....
ちょうちょ食べるならしじみちょう
しじみちょうならおみそしる
お味噌入れたら火を止めて
ちょうちょひとふり鍋の中
しじみの滋味はなつの滋味
ちょうちょも豆もオリゼーも
みんなそろって鍋 ....
世界平和を願っていた、あの頃の貴方から、
世界平和を知らずにいる、現在の私へ。
伝書鳩の言伝
私の曾祖母は、私が生まれる前に、戦争で亡くなったと、
祖父から聞いたことがある ....
小さな塵が蒸気を集めて
やがて雨になっておちてくるように
僕の小さな悲しみを
あなたが優しくくるんでくれるから
ほら
こんな簡単に泣けるのを
僕は雨のせいにしている
080805
生えるためには水が要ると
ステンレスのボールが喚く
サルビアの花の写真は
今からでも間に合いそうに
麗しく艶やかで瑞々しくて ....
水を降りていく
やましいことなど
何ひとつない
深夜、もういない父の
容態が急変した気がして
親戚を探しに出かける
栞のように
水槽が鳴ってる
躍り狂う奇跡を 言葉じゃなく
こんな風に 歌いたい
ミシミシと振れる痴癖を
崩れるまで 感じたい
心に綺麗な闇の手を
心に綺麗な淡色を
まわり 君と夢の次の世界へ誓う
その針 ....
街路樹の葉群から
蝉達の合唱の降り注ぐ
夏の散歩道を歩く
額の汗を拭うと
数日前傷ついた右手の{ルビ瘡蓋=かさぶた}が
いつのまに剥がれていた
唇をぐっと噛み締める時を ....
最近妻がビヨンドになってきている
40過ぎだというのに
髪をピンピカリンの金髪にして
耳は穴だらけ
いくつもピアスをつけて
じゃらじゃらと音をたてている
夏だというのに
わざわざ ....
耳を立てて
とおくの雷鳴を聞いている
虹の匂いを嗅いでいる
夏はどこからか
ぼく等の原始人が現われる
川は流れつづけているので
終日ぼく等は瀬にさからって泳いだ
唇まで冷えきったら岸 ....
扇風機が
静かに首を振っている
かきまぜている
ソファに座って本をひらいている
あなた
この作家は、
攪拌という言葉が好きみたい
と、本をパタンととじながら
あなたが
静かに ....
吾子
あなたは ひのひかりを
いっぱいにうけた ほうせきを
おおきな はっぱのうえに みつけましたね
あなたのめは ほうせきよりも
きらきらと かがやいていました
あなたの ....
もうだいぶ短くなった青鉛筆を
今日も必死に削っている
先を細く細く尖らせなければ
気がすまないんだ
そのくせ
極度の尖端恐怖症なものだから
どれほど尖っているのか
目で見て確かめることも ....
雨はいつだって突然に
感覚を刺激する
懐かしい音に
身動きが
――…取れなくなる
夕方の雨は
だめだ
カーテンレースを握りしめた
手の
震えが治まるまで
アスファルトを叩く ....
乱れたシーツに
打ち上げられたのは
僕だけだった
散らばった鱗を
キレイに片付けた君は
もうコーヒーを香らせている
カーテンから漏れてくる
光の海蛇を蹴飛ばしながら ....
小銭をじゃらじゃらさせてる
オジサンは
時代は買えないが
切符は買える
路線図に目を凝らしてる
オジサンは
時代には乗れないが
電車には乗れる
ホームの端で背中を丸める
....
雲があざやかだ
ほらそんな風に後ずさりする
風が糸をひいている
風が糸をひいている
ほらそんな風にあざやかだ
乳胸 見下ろす している
ビルの屋上はよくビルの屋上はいいというけれ ....
ああ 悲しくも
プラスドライバーで マイナスネジは回らない
どんなに冷たくされたとしても
きっと何時かは回ってくれる
どんなに首をかしげていても
きっと笑って回ってくれる
....
空になった米びつを
流し台下の収納から取り出すと 初夏
扉裏から日陰がやって来て
「今日は暑いですね」と作業を急かされる
10キロ袋の角を少し切り
よいこら 持ち上げてから
う ....
だれも
誰もあなたを奪えないよ
だれにも
盲導犬を連れた
女性の方の講演を聞く
視力を
やまいで奪われた
階段があります
ではなくて
のぼりの階段がありますよ ....
境界の打ち水、
風が死んだ下町の昼下がり
狭い裏路地を通りすぎる
黒い日傘を差した女
夜に咲く花が匂う、
鉢植えの月下美人が
錆びた郵便受けの真下に
只ひとつ置かれていた
よう ....
{引用=ばたん――
ドアがしまるような
収穫の音がして、巻きあがる
走り去ったランナーの
一陣の風
よみがえる
まなざしの白さ、
青い息
ゆらぐ光彩に
ぼっ
と一点とどまる
....
まゆに包まれて いくようです
あなたも わたしも
目をつむると
おくるみに くるまれた あなたが聴こえる
熱い帯にタイダイの笑い声が響く
電気工事のおじさん
駐輪場のおじさん
建設現場のおじさん
交通整備のおじさん
ペンキ塗りのおじさん
たくさんのおじさん
設備工事の父さんも
あんな風にタ ....
だらしない服が
花のように香る
からだの線が
浮かんでは消える
あなたは
無言にたなびく
降る曇
くちびる
とじたまなこ
うしろあたま
ひとつかがやく
....
人間の若者に一目ぼれした挙句
天の水門を閉じ忘れて
大洪水を引き起こしたおっちょこちょいな姫よ
今年の夏も忘れずに
天地に涼しい水を巡らせて下さい
あまねく世界中に分布している洪水神 ....
俺たちはみんななめくじ
梅雨が明けても梅雨の時代だ
俺たちは塩をかけられ弱ってる
しおれていく前に誰かとつながりたい
どうせじめじめしてるんなら もっとわかり合おうぜ
世の中には形がない
....
両手いっぱいの憎しみで
ふくらませた青い風船
それを今
ベランダからそっと飛ばす
それは思うように
遠くへと旅立ってはくれず
ただ あたりをふわふわと漂い始めた
部屋に戻り
静か ....
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