私がとても遠いのだと思っていた人は
すぐ目の前にありました
なぜならその人は海だったのです
必要とあれば向こうから
そうでなければひいていきます
私がどんなに駿足でも
どれだけ望みを握 ....
経糸の波が島に打ち寄せ
砕けた珊瑚の欠片が筬の羽の隙間を通る
浜は白く織り上げられ
降っては降りてくる日射に
転がる岩岩は奪われた影を慕っていたが
素足 ....
淡い夢をみる夜がある
夏休み庭に植えたブーゲンビリアに
いつの間にか背丈を追い越され
生い茂る葉がどれだけ季節を重ねても
記憶は夏しか残らなかった
....
そら
おそろしい
しずけさ
ふくらむ
むねに
雷霆ひびき冴えかえる
雲
たれこめて
いずれふって来る
私の上に
見つめあえる
傘は
無用であります
そういったものは
そ ....
小学校から帰って
叔父に自転車の運転を習う
家には大人用しかない
「両足がとどかないよ」
「おれだってとどかないよ」
叔父は自転車のサドルから腰をおろして
片足しかとどかない姿をぼくに見せ ....
灯籠浮かぶ川の道
真夜中の夢のように
満ちていく花の香の
中に浸って居たかった
冷たさ残す風飾り
蝶々の群れのように
飛んでいく薄紅の
真下に立って居たかった
しとしと続く梅雨 ....
その現代詩、セルダムイリーガル
なんてちょっと格好いいじゃん
自由詩に
もし決まりとか約束事とかがあるなら
張り切ってぎりぎりを狙うよ
NGワードがあるなら別の言葉をさがす
使われ ....
この
腹の底から
溢れ出る
涙は
私の涙でもあり
君の涙でもあるのだろう
サヨナラの時は
刻一刻と
近づき
そんな
酷い
答えしか出せない
この母体を
子宮を
....
朝めざめると
あなたは哀しい
人の形をしていた
毎朝きまって
そうなのだとしても
本当のことは
けっして言わなかった
言葉にできないことや
したくないことを
たく ....
愛は四重奏
愛は三重奏
愛は二重奏
愛は孤独奏
その身を削いでゆく
どこまでも
いつまでも
と、いうわけにはいかないのだ
だれであっても
どんなひとであっても
あげくの果て
使いものにならなくなった
....
チェロが重低音を響かせる中
正座した理屈が
墨を含んだ筆をとり
大きな美濃紙の中央に
ごつごつとした岩山を
描く
モノトーンの岩山は
山肌の陰影だけ 浮き上がり
山の際 ....
隣の男が
うちのウサギを盗もうとしていた
その男はバニーガールのように網タイツをはき、ウサギ耳をつけている
おれはウサギテロリスト
世界に散った哀れな飼いウサギを集め
反乱を起こ ....
夏の初め
曇り空の海に浸かり
上向きに浮かぶ視線は
隠れている
太陽を探すばかり
くるりと反転して
水面を押して
飛び立って行くであろう翼を
もぎ取る勇気もなくて
黒い染みを広げ ....
悲しき道化師の夢を見た
がらんどうに流れる残響
琥珀色の朝日
笑顔の仮面は外れることなく
重い鎧をつけたまま
笑いながら、泣いていた
笑いながら、怒っていた
笑いながら、哀れ ....
いらないものを
雨に流すから
雨は泣いてしまう
あなたも
私を捨てるから
私も泣いてしまう
雨に濡れて
泣いてる雨に濡れて
とうとう止んでしまう雨のほうが
勇気があるの
ひ ....
わたしはどこにもいません
だからどこにでもいるのです
わからないまま
刻みつづけているのです
ビネガロンってかっこいいよね
と恋人が口にした地下鉄の中で
家に帰ってパソコンを立ち上げ
ビネガロンを調べてみたらあら
サソリモドキというクモみたいな
サソリみたいな凶悪そうな生き物
....
一匹は
左目の無い老いぼれで
もう一匹は死もイトワナイ
砂漠ならばいい
砂漠のヒキガエルのおなかにシリアルナンバーが
あったというならあったのだろう
アーティフィシャルなヒキガエル
けれども日曜日の遅い夕方
ふと目をやった河原の石に
なぜバ ....
あたしは
しがないサラリーマン家庭の
家族
毎日の献立に数円の違いを見出し
家計を切り詰め 朗読に当てる
でも楽しい 自由だからココロは
出あったのは ひとりの人間としてのキ ....
夕立に西日がさす
顕れた私の表皮のように
小さな個室にて
スチールと硝子の板が
点と点で結ばれてゆくのを聴いている
白いシャツの青年が
自転車で脇をゆく
ずぶ濡れの帰り道には
明日 ....
硝子のセキレイ、鳴き声が届く、彼方、遥かの、
もういないあなたの鼓動、
耳の奥の回廊、すべて、ではない、
稲穂、誘い追う、昆虫たちが歌わない夏、
あふれる、記憶の洪水を押しとどめる、波、
な ....
音域が広がりすぎて小人出る
テルミンのように触れずに奏でられ
真昼の留守宅コップは端へ端へ
また祖母に会えそう異国の逢魔時
109スカートだけが濡れてない
....
貝殻のノイズに剥がれたちいさな夜に遅すぎた痒み
シーソーのように揺れるのを忘れちまったんだ悪魔
手のひらで溶かしたはずのチョコレートが剥がれ
それは耐え難い痒みなのだ、と言い聞かせようか ....
ざわざわする
ほんとは 誰とも
繋がれないのではないかと
ざわざわ する
自分のことで 手一杯で
優しくなれない
ざわざわする
約束は果たされず
勝手なこと言って 浮いている
....
ね、ういろうさん
あんたちょっと歩くの速いよ
引っ張らないでくれる?
「お手をするかわり、おやつくださいな」
ね、ういろうさん
あんたちょっと拾い食いはやめなさい
あと、たまには吠 ....
雨を聴くひと
土を嗅ぐひと
奏でられる調べには限りがある
奏でられない調べを夢にみすぎて
からだを置いてきた場所を
遠ざかってしまう
胸の奥には想像上の内臓があって
白いバラ線に ....
アリスはそこへ乱暴に投げだされ
黒い瞳に大粒の涙をためた
やがて朽ちてゆく散らされた意味の
灼熱に乾いたサハラカラーの砂漠の丘に
一面、蒼く鮮やかに咲く魔の花の
雑音交じりの夢へといざなう、 ....
おいらカナブン
ブンブン飛ぶぜ
黄金虫って言うな
カナブンって呼べ
そっちの方が性に合ってる
カナブンって
なんだか
自由な感じがするじゃないか
葉っぱの上では隠してるが
一旦空に飛 ....
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