幼い頃は持て囃され甘い菓子で育った。
少年の時は真っ白な繭が僕を守り養った。
やがて呼吸も自由に羽を広げる頃、
誰もが欲しがる平等を平然と飛び越える翅。
指折り数えた確率は出会った瞬間に吹き飛 ....
ぽとぽと
あめだま
おとしたのだあれ
ころころ
あしあと
あなにおっこちた
ぐらぐら
かんせつ
はずれないように
ぺたぺた
のりしろ
はがれないように
冬が背中のうしろまで来ている
今夜の雨は仄かにぬるく
地上のものの体温をすべて奪う雨ではない
むしろ
ささくれ立った地表を磨き
朝が来る前に
つるりとした球体に変えようとしている
古びた ....
いつか聞いた
オルゴールの音が
こんなにも懐かしく
わたしの島にもとどく
音階は等しく
何度でも
誰もいない浜辺に辿り着き
朝には朝の
昼には昼の
夕暮れには夕暮れに
染 ....
浮かんだ言葉が
消えていく
いつだって、そう
若年性認知症なんて
あるのかな
誰かメモリーを
増設してくれ
お代は
後払いでいいかい
ダメかい
爽快
カ ....
太陽が僕を灼いて
遠くの世界歪ませた
水槽が君を囲んで
遠くの世界絵に変えた
僕は君の水槽に飛び込んで
濡れたまま手を繋ぎたい
熱い太陽に灼かれながら
水浸し ....
{ルビ=アヒルの子}
何年か待てば
私の細胞はすべて新しくなる
そうしたらこの
君についての記憶も新しくなるのかしら
心臓の一部の細胞だけは
生まれてから死ぬまで
一度もあたらしくなることなんてないらしい
....
テイブルの下に
ひきっぱなしの布団
みかん転がり落ちてるよ
段ボールから猫
なんもないのはわかってるんだ
ポンコツ話も聞き飽きただろ
こっちもうんざりしてるから
冷蔵庫にはたまご ....
引出し開けて眼球を愛でる
価値を産む祝祭の時の色
頭脳で汗かく情報煉瓦
起立するペニスと勃起するミサイル
濃霧に馬の後光の疾風
もっと話を聞かせてくれませんか
そうしたら、
あたしは、言葉のあいまに置かれた
なだらかな読点【、】に背をもたせ、
気まぐれに口をつぐむあなたの 数知れぬ句点【。】の
小さなその ....
うちがわにうちゅうがあるから
ふとんから
でられない
たいくつはしてないんだけど
ひとに
おこられそうだな
*
*
*
*
*
すもももももも
すみずみまでみずみずしい
ほしふるよるに
ビクターのいぬ
*
すやすやとやすらかに
....
深刻ぶるロックで動機づけて
釣り堀から川へ流れ出る水
魚が跳ねみぞれ白く転ぶ
山小屋で地図と革命のタイムテーブル
銀河に殉ずる仏群の大光
*
*
電車をおりたら、正しい冬の予感がした
冬の匂い!
冬の匂い!
冬の匂い!
冬の匂い!
冬の匂いが冬の匂いで
あたしはとっても幸せだ
今年の冬はシチューのC ....
{引用=
悲しむことなどいつでもできるのです
とどかない想いは、手にあまるほどなのに
あきらめない
今という日をすごす 今日
透明な引き潮は、
小さな入 ....
あをによし
奈良のみやこの若葉の頃は
群青 {ルビ縹=はなだ} {ルビ甕=かめ}のぞき
{ルビ藍濃淡=あいのうたん}に夜が明ける
{ルビ瑠璃=るり}{ルビ玻璃=はり}きらり
渡来の品を
....
前衛・側衛を薔薇で固めよ この行進に
軍服に階級章ナシ ゲリラ戦
暗闇にまぎれ上陸するボート
インドラと閃きつつ俳・諧
孔雀音もなく羽根ひらく
庭園に ....
あいという
あめだまをなめました
なんだかくすぐったくて
とけていくのは
じぶんのほうじゃないかって
ふあんになったので
はきだしました
すこし
こわかった
いぬは
....
家に静けさが降っているとき
五人の家族の顔は
お互いそっぽを向いている気がする
わたしはひとりで居間にいて
天気が悪いからって
掃除機をかけようかどうか迷っている
母は体調が悪 ....
タールに浸した翼を
バサバサと音を立てて
羽ばたこうとしている
悲しみはついに水源に至る
さるご婦人から頂いた
ラヴェンダーの香水を
春先に洗面所で誤って
落として割ってしまって
....
冬紅葉 鴉の瞳を染めて降る
凩や 潜熱の葉に森燻ゆる
*
....
{引用=off
部屋の明かりを消しても
真っ暗にはならないんだね。
夜たちからは、もうとっくに
ほんとうの夜なんて
消え去ってしまったみたい。
街灯の光がカーテンを透かし
....
木漏れ日から漏れたような
あなたを愛してみたい
ヒヤシンスの花のように
あなたを信じていたい
画家が描く睡蓮は光りに包まれて
沼の底まで生きている
そこは何処にあるの
額に収められたあな ....
どちらかといえば左
ひじは伸びる
壁紙を引っかく
高い窓の{ルビ顰=ひそ}みへ
うでを投げた
なでるのはちり
照り返しの灯
冷たい外気と通じたい
幼いころの無性の眼で
黄金色の空 ....
詩は世界を構成している
移ろう空の色
道端の小石
花びらのまあるいカーブに
詩が宿っている
だから
世界は詩で造られている
そんな気がするんだ
インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
海底油田の採掘船の間をすりぬけて。
少女たちが物乞いをしている。
海を背にして。
彼女たちは自営業者なのか、と私は考える。
それと ....
一瞬の中に永遠があった
女の顔に夕闇があった
わたし
たちは
あえぎ、つぐむ。
怒りの中に悲しみ
嘘の中に真
光の中に闇があった
灰の中に黄金があった
王の中に奴隷がいた ....
その響きと
余韻しか知らない街で
親しく投げ交わされ
胸にぶつかっては
つぶれて香るトマト
ことこと煮詰めたソースは
ちょっとどころか
すごく甘くて
ふわふわした湯気のなかで
舌がト ....
ふと君と出会ったので
なにを思ったのか
結婚する気になってしまい
程なくして言葉に出してしまい
ふと言葉に出してしまったため
なにを思ったのか
結婚することが現実的に思え
程なくして ....
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