誕生日に買った花瓶
薄く透き通る黄色いガラス
食卓の窓辺に置かれ
水仙が部屋を見渡している
母の誕生日に咲く庭の水仙
可哀想だけど
そう言って摘んでくる
朝の澄んだ霊気を ....
水に濡れたまま
雨にうたれている
妻が傘の下からタオルをくれる
いくら拭いても
濡れタオルだけが増えていく
妻は可愛い人
こんな時でも傘には入れてくれない
濡れタオル屋でもや ....
柔らかな薄桃色の掛布団
夕暮れの雲に覆われた空
真っ白なシーツをふわりとまとう敷布団
おやすみなさい
積み上げられた徒労を包み
疲れた笑いを
しずかにほどいて
瞼を透かす朝のことなど
....
アタシは衰弱を否定する老人を哀れむ
アタシは革命を嘲笑する若者を哀れむ
アタシは現実を拒絶する大衆を哀れむ
アタシは服従を肯定する個人を哀れむ
今や傲慢さを隠そうともしない奴らに
踊らさ ....
遊べや遊べ わらしべ一本
わらしべ一本 遊べや遊べ
遊びをせむとや生まれけむ
誰もが一本のわらしべ握り
明日は長者か乞食ぼうずか
種もみの実りを待たずさり
中洲で噛みあう ....
どういふことだ
まだ
ひとのかたちをして
星の上にゐる
急がなくてはいけない
廃村のはずれの小さな草むらに
菜の花が咲きはじめてゐる
……風にゆれてゐる
やさしいやうな ....
{引用=
どうすればいいのか
わからない
貝の中で
泣いていた
日
それから
いちど海がかれて
空がおちて
ながくもないとしつきを
二億年と少しへだてて
....
ゆきの降らない冬の日々
吊られたあらいざらしの
Tシャツはふるえていた
それはゆきを待つわたしのように
次第に乾いていく暖かい日差しのなか
磔刑にされしろくしろく待ちわびている
誰 ....
トウモロコシに憧れたので
トウモロコシになりました
さらりとそう語れたのなら
カッコいいかもしれません
でもそういうわけではなく
トウモロコシに生まれ育ち
トウモロコシになりました ....
1
毎年この日の夜には
上原君の星が話しかけてくるはずなのに
今年は何も聞こえてこなくて
見上げても光が揺れることもなく
なあ、もう忘れちゃうよ
と、小さく嘘をついてみた ....
木立ちを抜けていくのが
私たちの木立ち
だからすっかり抜けてしまうと
教室がある
先生は、と先生が言うと
先生は、と復唱する私たち
やがて始業のチャイムが鳴り
つまりそれは
....
昼が翻る。
靴が覆る。
夜が、甦るときに。
あっ
腰の骨が
ポッキッと折れた
神経が暴れる
立つことも這うことも
激痛が走る
大混乱に
つぶれた骨が怒鳴る
「愚か者!
粗末にするな
言い訳は聞かぬ
折れた骨は 戻 ....
私の原風景はお母さんだった
お母さんが大好きです
店員さんが運んできたコップの中に
凪いだ海があった
覗き込めば魚が泳いでいるのも見える
こんなにたくさんの海は飲めそうにない
先ほどの店員さんを呼ぼうとしたけれど
彼女なら里に帰 ....
ある日、ふと
僕がどこかに行ってしまった
家の中を探しても
戸外を探しても
どこにも見つからない
自分の中を覗き込んでも
ただ海のようなものが広がっている
どこか遠くの方から ....
旅
こころは
しらないうちに
旅に出る
笛のねに さそわれて
むかし 人びとがすんでゐた
海辺の村で
潮風にふかれてゐる
いつになつたら
かへつてくる ....
青、
樹間に揺れ
白い巨鳥、
羽ばたいて
僕は行く
天に呑まれ
光の矢、光の矢!
蒼穹は割れ
漆黒の宇宙が唸っている
あのひとが「いいね」を押してくれたからずっと消せずに、残るつぶやき
悲しくても
涙を流すこともできず
くやしくても
叫ぶこともできない
誰をうらめばよいのか
問うこともできず
寒々とした
野にさらされている
その積み上げられた姿が
....
とてもとても遠いところから
君の訃報が届いた
時刻表を確認することもなく
僕は一番最初にやってきた列車に乗る
いったいどれだけ乗り継げば
君の場所に行けるんだろう
君の生き ....
地元の植物園で菊花展が開催される頃
入園入口にある車椅子を借りると
母を乗せて湖畔に広がる花々や温室の中を歩き回った
昔、母は祖母を乗せて車椅子を押した
ひと昔前母は 私を乳母車に乗せて
....
バスを待っていると
昨年死んだお父さんが縄をもってやってきた
電車ごっこの相手を探していると言う
せっかくだから車掌をやることにした
もともと小さいお父さんは
死ぬ前にさらに小さくなった ....
みえない場所にいる気がするんだ
おかしいんだ
誰も私のそばにはいないんだよ
いつになく遠くまで見渡せた夜に思った
ああ終わるんだ と
星は一つも見つけられなくて
雲なのか空なのかわ ....
わたしは詩人じゃない
わたしは詩人じゃない
わたしは詩人じゃない
わたしは、
、聲を殺して呟いてみよう
すると
ほら、
砂埃をかぶった
詩人のほうからやって来たりして
....
苦行とは、なにをもって苦行にも値するのだろうか
ほんとうの苦しみとは如何なる場合を指し示すのか
またよろこびとは、救われることのみにおいて真実なのだろうか。
他者とは己自身とは
何気な ....
この世界は
空間に
時間を加えて
3.5次元だけど
2次元の平面に
閉じこめられた
3.5次元の世界の情報は
ブラックホールの
エントロピーからの
贈りもの
「ホロ ....
マカロニと申します
ペパロニではなくて
マカロニと申します
身を捩れば無限大の
シンボルにも見えて
メビウス感が増して
深淵な雰囲気だって
醸すことができます
だけど日常は日常 ....
耳鳴りが気になって眠れない
そう言う君の耳に自分の耳を当てて
同じ耳鳴りを聞き続けた
あれしたい、これしたい
語り合う夢はまだまだある
この年になればいっそのこと
実現しない無 ....
ながつづきしそうもない事をさじに拾っては、
数分の間、あれやこれや考えている。
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