そう 私たちは
日常のドアを開けながら生きる
何事もなき
それでいて それなりに満足な
{ルビ同=おんな}じ時間の
{ルビ同=おんな}じ場所で
毎日毎日 繰り返し
人々は皆 すでに{ ....
風鈴の音
金魚の赤
縁側で夕涼み
ビールの泡
ダイニングの
トライアングル地帯
何があるか分らない
眠くなった。
作り笑いが下手な
君
駄ジャレが下手な
僕
は、真空の一点で凝縮し続ける無言する{ルビ性=さが}である。
仄暗い
道を歩いていると
星雲を繁茂する
一角で
ぽっかりとあいた
湿っている暗闇が
{ルビ濃紫=こむらさき} ....
草合歓の葉陰から
かすかにもえる月を見た
藍青の波間にひかるものは
あれは はるかな昔
指から落ちた曹長石のかけら
青みをおびた涙の石の粒
もしも
月の淵から水音がしても
蠍が ....
雑音から 聞える
あの 道は
どこか
案山子と 6月の
微風の 元
雑音は 膿んでいる
あの 道を
越えれば
花畑
だが その時 私は 聞いた
雑音から 呼び止める声を
....
私達は知らない
戦時中にかけがえの無い妻子や友を残して
死んで行った兵士の
爆撃で全身が焼け焦げてしまった少女の
青空を引き裂く悲鳴を
( 昔話の地獄絵巻は深い地底に葬られ
....
ウエッジソールのサンダルなんて
3年たったら過去の遺産
昔はやった厚底サンダル
今年のウエッジソールと何が違うの
星型の砂を探して
海に行こうと決意した
私はふわふわと波に乗る女
....
足元は、崩れている。
真っ直ぐ歩くことも{ルビ覚束=おぼつか}ず、
肩が揺らいでいる日々。
( ぼくの脳内には
( 壊れたリモコンが内蔵されている
胸を張れども三日坊主。
....
今日は職場の老人ホームの納涼祭であった。通常の業務を終えた
後の18時半に始まるので、正直勤務中は、「今日は一日、長いな
ぁ・・・」と思いながら働くのだが、いざ盆踊りが始まってしまえ
ば、暮れ ....
目の前に置かれた石を
思い切り、蹴る。
弾道は前方に細く長い弧を描き
一面の霞の向こう側にある
無数の「明日」を貫いて
激しい雷雨の日を貫いて
柔らかな陽が注ぐ日へと
....
さて
飽きるほどの恋からも遠ざかり
梅雨の間隙を縫う洗濯ばかりに
脳みそを支配されている私に
今のところ夏の予定はありません
貴方
先月結婚したそうでおめでとう
おかげさまを持ちまし ....
花を買って
部屋に飾り
香を焚いて
静かに座り
読みかけの本と
ハンケチを用意して
すすり泣く
できれば
大きな声で
できるだけ
長い間
それを
気 ....
この眠れない夜
少し開いた窓の隙間から
カーテンの裾を揺らすのは
頬を掠めるひやりとした夜風
紛れ込んできた露の雨音に
畳の匂いが、一層、濃くなる
月があるわけでもないのに
外は仄か ....
土砂が流れ、人が死ぬ。
山あいの村を、水があふれる。
生活をすべて、押し流していく。
ささやかなものを。
IT長者たちが、お互いの富を分配する。
早い者勝ちですよ、と
悪びれずいう。 ....
始めて出会って三秒で
僕等は抱きあった
それは僕の小さな悪戯
握手をしたまま右手を引いて
僕は君を抱きしめた
そのまま僕等は抱き合った
余りに君がチャーミングだったから
そうせずには居ら ....
ここに
太鼓がある
太鼓は
太鼓の皮と胴があって
バチで叩く
皮だけでは
太鼓にならない
胴だけでも
太鼓にならない
太鼓の音は
どこからするのだろう
放課後のプールサイドに一人きり石を投げれば割れる太陽
まだ細い腕もいつかはヘラクレス鏡にうつる半裸少年
肝だめし墓場を歩く君とぼく怖くないよと結ぶゆびさき
花火あがる綿菓 ....
黒色の雪がヒラヒラ舞い落ちる
それに合わせてリズムをとるぼく
ブランコにのりながら遠くまで飛ばした
靴は雲の中に突き刺さり落ちてこないよ
ぼんやり光っている電灯に夜蝶が ....
ちっぽけな わたし
だれも みていない
それでも わたし
ここに いるの
ないて いるの
わらって いるの
おもって いるの
いきて いるの
....
障子のむこうでは
雨の簾が揺れています
重なり合う影を
私の分だけ
一枚引き剥がして
あなたの流れに
耳をすませ
聞き取りたいのです
....
彼は今迄何度も転んで来た。
愛に{ルビ躓=つまず}き、夢に躓き、
恋人の前に躓き、友の前に躓き、
鏡に映る、自らの{ルビ滑稽=こっけい}な顔に躓き、
振り返れば、背後に伸びる
長い日 ....
私とあなたの間には
数十億光年の距離があり
互いの影はいつまでも交わることなく
仮想の白い空間を歩き続ける
( {ルビ孵化=ふか}を知らない孤独の闇に{ルビ包=くる}まれて
( ....
戯れる森の雫が、
ひとびとの拍手のなかで、静かに横たわる。
あなたの流れる姿が、
森の節目に、厳かに薫り立つ。
標高をあげている森は、
巧みに感度を敷きつめて、
わずかに彩色を動かしな ....
女は宛ら 一室の部屋だ
好きな男好みに 設(しつら)えられた
日々模様替えする 夜々配置換えする
九十九を過ぎた婆さえも 「あれまあ不思議!」と云うような
女は部屋の 一室である
想い人あら ....
そのとき奇跡を初めて信じた
この世に無駄ないのちの誕生はひとつも無いのだ
あっ、食べたね
その肉はさっきね、
やわらかく やわらかく揚げたんだよ
ああ
カリカリのドッグ ....
雲はきっと甘い
だって君のなみだは
ほんのりさくらいろだもの
今年もまた 原っぱに
レンゲ草が一面に咲きましたよ
レンゲ草は
その真っ白なすべらかな姿を
揺らしています
中華料理店のトラックが
止まりました
レンゲ草をごっそりとっていきまし ....
シャチを吐いたなどとは
とても言えぬ
あの白と黒の
愛しい人 日傘で待ちます
私はいるから 死んだ後でも
ここにいるから ....
青々と
広がる蓮葉には
明け方の雨の
ひとつぶ、ふたつぶ
みつぶ、よつぶが
それは見事な玉を作り
ころころと
風にゆれながら
まるで生まれたての
宝石のよう
真っすぐのびた
....
* 逢う魔が時 *
逢う魔が時に
夜が浸透してゆく
何も起こしてはならぬ
何も触れてはならぬ
何も感じてはならぬ
まなざし以外は
重ねてはならぬ
流されてはならぬ
逢 ....
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