初めての海で
吸いこんだ
風のにおいはふるさとのようで
わたくしは、ただ
何万年も佇んでいたような砂浜の印象へ
飛びこんで
いまこの波の揺らぎに没しようと
荒れんばかりの幾多の波の
....
柔らかな風と共に
木陰を選んでゆっくりと歩いてくる
アリス
届きそうに届かないアリスは
夢の途中に僕に立ち寄り
その心の純粋さが削られていくのを
悲しい思いで窓から真 ....
ずっと遠くの方を、
水平線が見たかったのに
空との区切りがよくわからない
から
少しだけ背中を丸めた
薄い水色のワンピースから
覗く白い腕が
夏には似合わない
から
ただ黙っ ....
君は守られてきた
君は飲み込まれてきた
世界は広い
類は友を呼ぶ
新しい世界に飛び込むのは勇気のいることだ
君も飛ばなきゃならない
君を照らす太陽の下で
エネ ....
雨雲が熟すのを待てずに
落ちてきた水滴は
過ぎた日の埃の匂いがする
名もなき小鳥が
一斉に声を上げて
巣を目指して羽ばたき
一瞬の喧騒を誘う
今日のわたしには傘がない
誰も此処 ....
夜が明けて
窓から朝日が射し込むと
目の前に
猫背の暗い男が両腕を{ルビ垂=た}らし
立っていた
「 私ハ生キル事ニ疲レタ
アナタノ生霊
アナタガ誰カト浮カレル時 ....
踊る黒猫
踊る白兎
ミックスする
モダニズムの灰色
歯医者の診察台
に座らされ
歯を削られる
リューターの奇声
飛び散るカルシウム
丸い蛍光灯大小2本
収めた四角い枠
ぶ ....
暗いモリの中で僕は
ひとりで迷子になってた
どこに行くのかわからない
いったどこに向かう?
教えてよ神様
何で僕だけこんな目に遭うの?
分からないまま歩く
足 ....
焦げた胡椒が口の中ではじける
味が悲鳴にならなければいい
僕は想像するよ
ひび割れた指先
産毛を撫でるハサミ
頭頂部が気になる父親
その全てが 君の物になることを
君の中 ....
高音域の理想が響き渡る中を
はぐれないように
迷わないように
独り涙を震わせて
かすかな音色が道しるべ
青白い道に倒れても
失意の海に沈んでも
理想の音波に打ち砕かれても
けだるい ....
ひかりをふところに浸す、
みどりのまるみが、いのちの数式を
一面につめこんだ、
萌え上がる、眠れる森に、鬱蒼と、
うすきみどりを染め上げて。
満たされた隙間を、みずいろの風が、繰り返し、
....
人は選択肢の連続だ
山に登るのも
海で泳ぐのも
人の誘いを断ることも
学校じゃ教えてくれない
生きていく知恵
病んだ社会に
心も病むのも当然だ
簡単 ....
雨が走り去ると
レンズになった大気が
緑を浮かび上がらせ
耳の輪郭を追う
待ち望んでいたタオルケットが
部屋をすっかり包みこんで
静かに反省をうながす
今夜のニュース
鐘の、音 ....
年に一度の七夕当日は朝から
日常の憂鬱が蓋をしたような曇り空
地球全体を水の中に
沈み込ませたようで
纏わりつく湿気で少しだけ呼吸困難かも
空が泣き出すのは時間の問題かな
定時にさらさ ....
窓に
張りついた夏、
グラスの中で氷が
音もなく溶けていく午後
少し薄まったアイスコーヒー
にミルクを少し加える
ゆっくりと拡散していく、
ゆっくりと沈殿していく、
夏。
あの頃 ....
雨と雨の間に
かおを出した青空に
並んで一緒に伸びをする
夏草はいつのまに
私を追いこして
掲げた手さえ届かない
ぐうんとジャンプで
きみ(夏草)にタッチ
ぐうんと伸びして
きみ(夏草)は空にタッチ ....
憧れはそのままに
眩しい陽射しを浴びながら
身に纏った、功績やプライドを取り去ろう
今、暖かいと感じること
明日を思い描けること
喉が渇いたと言え
時に心が痛む ....
助手席の内側に
さよならって
指で かく
いつか
内側が曇るほど
ひどく雨が降った日に
思い出してくれたら
いいけど
それとも
あなたの大事な人が
みつけて
少し遠い ....
夏のきざし
ロビオラチーズ
野菜とトマトのゼリー
夏のきざし
素揚げした菜の花と
カリカリに焼いたパンチェッタ
夏のきざし
かぶの冷たいスープ
グリンピースとさざえの冷たいスー ....
失敗と挫折の繰り返し
カセットテープにやきこんだ
子どもの頃の無邪気な声は
もう聞けなくなっていた
ライトアップされてる
季節はずれのクリスマスツリーは
むなしく光 ....
もずくを食べていたら
小さな小さな
貝が出て来た
何だかとっても
素敵なことに思われて
小さな小さなその貝が
私に幸せをもたらしてくれる
神様からの使者に思われて
私はその ....
どこまでも続くこのみち駆け抜けて旗をかかげて名を刻もう
人の命には限りがあるもの
後悔したくないものだ
恐ろしく穢れた心
垣間見る地獄絵巻
人として正しい行き方はあるのだろうか
出る杭は打たれる世の中
どんどん増えてい ....
さざなみが月を潤ませて
消してゆく二人の名前
ゆうなぎは心の糸まで
もつらせて切ってゆくのか
灯台も暮れ馴ずめば影にまみれ
境をなくす浜辺と海
こわれた砂の城に波が
さよならを塗 ....
彼の目は
像をまあるく切り抜いて
切り抜いたまあるの淵は
切れそうなほど鋭くて
(声)い
{引用=
夜中に眼球が旅をする話を知っているでしょうか。
主人が眠りにつくとすぐ ....
引き出しを開けると
折り重なった時が
落ちている
ぼくはそれらを拾い上げ
整理しなおそうとしたんだ
けれども うまくいかないで
サッカーを見たりなんかしてるうち
雨足に追いこされ
....
頭の上からすっぽり
オブラードを冠ったような
曇りの日ばかりで
じっとりとした湿気に包まれていると
鬱屈ばかりが沈殿していく
そんな夜はお気に入りのマグカップに
とっておきのアッサムを ....
オールトの雲:オランダの天文学者オールトが提唱した、彗星の巣・領域
『オールトの歌』
最愛の娘へ
作りかけの宇宙ステーションからこんばんは
もうそっちはオハヨウの時 ....
物語の終えた本を
閉じると同時に
欠伸をひとつ
いつの間にか外は雨
こんなに近く
ガラスを滑る雨に
今更気づいて
覗いてみたのは
深い夜
明けること
わかっていても
朝はまだ ....
単調に繰り返される無数の足音の渦の中で、
希望を見失った盲目者は歩道を歩いていた。
朝の足場がやけに固い。
ガラスの壁の内側にはふたりのマネキン。
{ルビ何処=どこ}かに顔を落とした ....
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