僕達は時間の船に揺られて
明日へと流されていく
明日につながる今
この瞬間にも時は止まらない
長く続く航海も
いずれは岸に辿りつき
安堵の一息つける日がくる
....
家族
焼け跡から一枚の写真
楽しかったあの頃
親を殺した顔が笑っていた
子を殴り続けた顔が笑っていた
ひとのこころ
クルマに顔があるように
ひとの ....
朝露が飾る野原は 可愛い
お澄まし顔の女の子みたいに
しいん、としていて
洗い立ての髪、風に靡かせている
黄色い花、薄紫の野の花の
色々の顔で 僕らを見ている
ねえ 僕らも そんな風 ....
―もう少し生きてみるか―
駅の改札を出てきて
ふと洩らした中年男のことば
連れがいるわけではない
一人で改札を出てきて
ふと洩らした独り言
僕は電車に乗ろうとして
改札に向っ ....
また少しネジが緩んだ
私の中でくるくるとメリーゴーランドが回りだす
夜の暗い遊園地
メリーゴーランドだけが
くるくると光り輝きながら回る
いつまでもいつまでも回り続ける
....
昔、食堂で働いていた
明け方5時まで開いてる店で
ローテーションで昼出たり、深夜出たり
働き始めてからしばらくして
高校卒業したての女の子が二人
一人はどこにでもいるような ....
当て所無い片道切符の遠い駅
尿意に立ち寄ったトイレは
蟋蟀らしき秋虫の音が木霊する
あれは便所蟋蟀だろうか
所業に耐え無為と生きる便所蟋蟀
然し秋虫の類では無いような
さりとて確かめたりは ....
{ルビ埃=ほこり}がかったランプの下
赤{ルビ煉瓦=れんが}の壁に{ルビ凭=もた}れ
紙切れに一篇の詩を綴る
クリスマスの夜
遠い昔の異国の街で
一人の少女が売れないマッチに火を ....
深くみずをたたえて、湿度を高位にくばり、
森に沈みこむ薄化粧の木霊は、
香ばしい季節の賑わいを、端正に、はおり、
浮かび上がるみどりに浸る、
眩い光沢を、透き通る声の上に配して。
流れる ....
鏡に映る「私という人」は
だらしなく伸びた髪を
ばっさ ばっさ と刈られていく
( 少しくたびれた顔をしてるな。
( いつのまに白髪が混ざりはじめたな。
幼い頃
{ルビ日 ....
白馬に乗っかった王子様に
円らな瞳のテディベア
女の子は(誰でも) メルヘンがお好き
だから毎晩頭の中の絵本を紐とく
透けた羽を持つ仮想の恋人と
だから今宵も 夢の中にて好き放題
だから今 ....
自転車に乗って
歩道に沿った白線の上を走っていた
アスファルトの割れ目から生える
しなやかな草々をよけながら
背後から
{ルビ巨=おお}きいトラックのクラクションが聞こえ
....
指環をつけようとして
指を眺めたら
関節がすっかり変形した
人差し指と
中指と
薬指とが並んでいる
少しばっかり
痛々しくもあるそれは
持てる以上の力と知らず
がむしゃらに使った ....
空を
見上げようともしない、君の
泣きはらした頬の ぬくもり が
染みる
舌足らずな恋は
時を止めるすべも知らず
いたずらに季節ばかりがすぎて
最後の秋
西日を受けた
一面の ....
薔薇の花咲く花園で
私は子守歌を歌います
口のきけない弟は
ブリキの太鼓をたたきます
今日もパパは帰りません
遠いお国で戦っているのでしょう
今日もママは{ルビ愛人=あみ}のそば
お ....
ある月夜の晩
白い翼の生えた可愛らしい少女が
ある村はずれの広場にそっと舞い下りた
月明かりが優しく広場を照らす
少女は天使だった
天使は月夜が大好きだった
月の光は天使の心を和ませて ....
遠くに来ている。雨が降ってきた。
ぼくは黒い綿のパーカーを羽織って
霧雨の中を行く。
ふと見ると、砂粒のような、でも
うるおいのある水の粒が
からだいっぱいについている。
ぼくは水の粒をい ....
とにかく眠たかった
窓の外には雨音が聞こえていた
眠るでもなく起きるでもなく
浅い眠りの中で見る夢は
悪夢ばかりで弟が僕の首をしめていた
季節の綱渡りを続けるこの頃
アラ ....
ただいま
と、呼べる場所をいつもこの手の中に持っている
気付かないほどに当たり前の鼓動の中にいる
夜更けへ向けて風速は加速し続けている
明日を見渡したいから、と
君は潜望鏡を買ってき ....
遊ぶために生まれてきたんだ
それだけだ
それが人間だ
仲良くみんなで遊べばいい
それなのに俺はここ最近
とらわれてる
檻の中に
自分の模様に
なあ月が
見え ....
魚の名前や花の名前に似ているけど
それとは違う言葉
直線ではなく曲線にも似ていない
それでも閉じている言葉
数え切れないそれらを
生み出しては忘れ去り
墓標をたてては
思い出と気取っ ....
そんな目でみないで
奥にしまいこんだ「ぼく」を暴く
凶暴で柔らかな力
その手をはなして
祈りを捧げる清らかな手は
時に花を握り散らす
その影をふまないで
いじらしく動く足跡は
....
夜明け前
どうしようもなく腹が減ったので
もそもそ蒲団を這い出して こっそり開ける野菜室
梨は無造作に掴み出し さっと洗って皮を剥く
しゃるしゃるしゃる
しゃるしゃるしゃる ....
愛してくれとは言いません
でも愛してもいいですか
あなたの今日の幸せを
明日も笑顔であるように
祈る自由を私にください
あなたの言葉に耳を向け
おどける姿を ....
女が日盛りの中 黒い蝶を追つてくる
蝶は女の心の反映そのままに
定めなく飛び 深い森に迷ひ込む
木下闇の黒蝶は 決して見えない
陽だまりに現れるのを待つしかないが
いつまでも待つ ....
{引用=健康な人には医者はいらない。
いるのは病人である。
わたしがきたのは、義人を招くためではなく、
罪人を招いて悔い改めさせるためである。
(キリスト、新約聖書ルカ5:31-32 ....
上空から見下ろす海
小刻みにさざ波たっている
雲は氷山のように海に浮かぶ
前方には白く大きな空中要塞
近づくとそこは雲海となり
白いふわふわの絨毯に変わる
....
水色のキャンパス
白い花びら、ふたつ、みつ
風の描いたような君の唄
軽く手をふるハロー、ハロー
鉛筆画の微笑みは
鉛色の雫でできてるの
はじめから
うまくのれてなかった、 ....
心はいつも回転扉
くるくる回って踊り子になる
あなたの心を行ったり来たり
赤い靴は止まらない
どうか教えて その一言を
魔法が解ける不思議な呪文
あたしの足は血で滲み
いつしか心の傷 ....
それを愛と呼ぶには
あまりに小さすぎたので
今日から
あなたは友情です
矮小なことば
矮小な声
プルートゥ
あなたを
認めるわけにはいかなかった
好きです
と
ルールは違 ....
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