1、きのせい


コーヒーのにおいがして

君がくるようなきがして

だから

いそいで

へやのそうじをしたよ




2、買い物

服を買うには少なすぎた

 ....
* 波の花 *

この旅路は来世への道
涙はいらぬ
微笑と
小さな夢と
持ってゆく
私たちは来世では一つの船に乗る
その先に咲く
波の花
消えて


* 夜の波 *

あ ....
ブランチに行く途中にリスの死骸
両腕を体にピタとくっつけ
両手をグッとグッと握りしめ
眉は八の字
眉間にしわを寄せ
唇もグイッと結んで
天を仰いで通り過ぎた

多分 今日は
死骸の側 ....
ぐるっと回ったら国道だ

しばらく走れば森がある

色なんか聞くな緑だ
緑に決まってんだろう


緑ばっかだ

なんだっけあれ
あの変な車で行けよ
あの変な車の変な色
な ....
吹き抜ける{ルビ時間=とき}を感じて
思い出映し出したあの時
私の心に炎が燃えた
言いようも無い淋しさに
翼を広げようとしても
あの頃の青空はもうない
ただ風に吹かれて
心の嵐を鎮めるだ ....
なだらかな野辺に{ルビ錨=いかり}をおろせば
緑色の秋がふりそそぐ

やわらかな雲の群れを辿れば
まぶたは風にまどろむ

じっとしていなければ
追いつけない季節

木漏れ日を新呼吸し ....
羽抜け鶏は
見かけほどにはこたへてをらず
日を直に浴びられるだけ
血潮に赫いて
田舎道を闊歩する


見よ
いつもは目を皿にして
獲物を追ふ狐が
{ルビ鶏冠=とさか}王の惨たらしい ....
 
 季節風は風向きを変えた
 僕達は異なる道を歩くことになった
 信号機のランプは黄色に灯る
 もう こんなところまで来てしまった

 涙のない別れ
 突然の別れ

 二人で舞った ....
ほうらご覧よ
あんなに見事な

ゆるりゆるりと
銀の鱗を光らせて
水面に映る魚のよう

ゆるりゆるりと
眺めていたら
水の底から
見上げてるのは
こちらのほう

銀の鱗の魚に ....
ぎらつく夕日を受けて

入江の港を出ていく船がある

あの火玉のごとく直進するものは

いつたい

いづこへ

いづこの国へ



いや そんな単純明快なものではな ....
おいどの大きな者が
持てはやされた遠い昔の
おんなは血を繋いだ。
夜毎
亭主とまぐわって
子を産み
子を育てた。
おいどの小さな者が
持てはやされる今どきの
おんなは血を乱す。
し ....
熟柿が落下して
地面をうろついてゐたカブト虫を
直撃した


貪欲に果実を食ひ破つて侵入してゐた
カブト虫が
果実の方から見舞はれて
すつぽり中に吸ひ取られたのは初めてだ
 ....
水鉄砲を空に放つ


リアス式海岸を
走る

気動車
機関車
各駅停車の
車両達
それぞれが
異なる
ジョイントの音を立てて
走る



水鉄砲を携えて
 ....
技術
 技術外れの季節に
議会を解散したかったのだが
主権者の端くれとしては
クレマチスが良かったわ
と言ってくれるまで
くるり棒を振り回す
麦秋の徒に
陰口
影女
悪巧み
古狸 ....
あなたとおそろの夫婦箸
いまはもう使う気にもなれない
あの頃は愛の姿を信じていた
同じ季節の同じ日々
それでも、素肌に感じる感触は
あの頃とは確かに違っていて
ひとり台所に立てば
化学の ....
壁に{ルビ掛=か}けられた 
一枚の絵の中の蒼い部屋で 
涙を流すひとりの女  

窓からそそがれる 
黄昏の陽射しにうつむいて 
耳を澄ましている 

姿の無い誰かが 
そっと語り ....
気がつくとその{ルビ女=ひと}は 
明け方の無人列車に乗り 
車窓に広がる桃色の朝焼けを 
眠りゆく瞳で見ていた 

列車がトンネルに入ると 
全ての車窓は真黒の墨に塗られ 
闇の空間を ....
北鎌倉の山寺の
{ルビ境内=けいだい}を歩くと 
左手に緑色の池が現れた 

小石を一つ拾い 
池へ投げる 

緑の{ルビ水面=みなも}の真ん中に 
水の花が開いて 
広がる 
  ....
ひとり きりの キッチン

包丁の 手を止めて

ふと

顔を あげた 窓の外

枯れ葉が 一枚

はら はら と 落ちてゆく


まだ 半袖のわたしは

深まり行く 秋 ....
いつもの散歩のコースを延ばして
枯野に入つていくと
遠出の猫に出合つた
こちらも私と同じく
猫族を逃れてきてゐるのか
それとも人界を逃れてなのか
しばらく様子を見ることにする
いくら ....
空中章魚を
紐で吊して干して炙る
焦げる匂いにねこといぬ
鳶がアブラゲ落っことし
財布の紐をつまんでた

春になると
誰も来なくなるから
凧を揚げてみるのだ
お前の髪
蚕の繭だったらなあ

白くて細くてふわんとしてて
綺麗だろうなあ

俺はお前を紡ぐんだ
糸車を
カラカラ言わせて

それから織って
お前は美しいすべらかな生地になり
 ....
ゆっくりと少しずつ時計は時を刻んでいく

叶わないとしていながら

行動に移してスグに失敗

悲しみの奥底の小さな穴から見える

希望絶望そのほかの

万華鏡に反射した波 ....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね

小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
秋の空気には
透明な金木犀が棲んでいる


陽射しに晒した腕が
すこし頼りなく感じ始める頃
甘く季節を騙す匂いは
思い出の弱いところを突いて
遠くにいるひとの微笑みだとか
風邪気味の ....
深閑とした梨畑で
ひとり 蜂の羽音を聞いていた
風は足音もせず忍び寄り
あれは少女だったろうか
黒い瞳の きらめく星の


かすかにふるえるのは
僕の胸の鼓動なんだ
こんなにもうるさ ....
荒涼とした砂漠が広がっている

空気も乾燥して

じわじわと砂から熱が上がってくる

喉がカラカラだ



なんでこんなに飢えているのだろう

いや何にこんなに飢えているのだ ....
「あなたがいないと生きていけない」

そんな言葉はきっとあなたを縛り付け

雁字搦めにして動けなくしてしまう

あなたがいなくても生きていないといけないね



でもあなたと一緒 ....
そんな午後
君と出あった

思い出を重ね塗りしていたら
季節も空を
秋色に塗り替えた

白い秋を
ありがとう
彼岸の頃になると
その場所は
真赤に燃えるようでありました

急な勾配の細い畦を上れば
今来た道を遠くまで
見渡すことのできる墓所
形を成さない朽ちた石版と
名も読めぬほど苔むした石碑 ....
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