プラスティックメモリー
ジャイコ

何年か待てば
私の細胞はすべて新しくなる
そうしたらこの
君についての記憶も新しくなるのかしら

心臓の一部の細胞だけは
生まれてから死ぬまで
一度もあたらしくなることなんてないらしい
そうしたらきっと
この部分だけは
君についての記憶を保っていてくれるでしょうね

秋になると
あんなにも泣いていた蛙たちは形を潜め
今はもうぎちぎちと
ざわめいていた虫たちの声すらも聞こえない

朽ちていくあなたのひだりうで

必死で縫いつけたはずの青色すらも
星空に紛れて見えなくなってしまった

冷蔵庫からこだまする笑い声も泣き声も
まだ私を迎えにくるには早すぎる
そんなことを考えながらとりとめもなく並んだ数字を
そしてうつくしく整列していくとうめいの君たちを私は
手のひらで溶かしながら中から出てきた緑色と再会することにしたよ

君を刻みつけたこの細胞たちが
どんどんわたしに食べられていくのを感じている
それが悲しいことなのか正しいことなのかはまだわからないけれど
君のことを思い出す私はきっと間違ってなどいないのだろう


自由詩 プラスティックメモリー Copyright ジャイコ 2009-11-24 02:09:24
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