幼い静物
ゼロスケ

どちらかといえば左
ひじは伸びる
壁紙を引っかく
高い窓のひそみへ
うでを投げた
なでるのはちり

照り返しの灯
冷たい外気と通じたい
幼いころの無性の眼で
黄金色の空を捉え
 行きかう肌
 行きかう殻
脳裏に砂とタイル
熟れた青臭い果実

枝を迫り出す
ドアが叩かれる
川に落ちた
ドアが叩かれ
水中は苦しい
ドアが叩かれ(まだ)
汚い水は苦しい(はやく)
ドアは叩かれ
開け放たれる

海岸に七歳の子供の
溺死体が打ち寄せられる
僕は泣くだろうか それとも笑うかな
懐かしむように頬をなでる
永遠に紅いままの頬を

どちらかといえば北
内開きのドアから
出て行く者はまだいない
果実に口寄せて
まっさらな空を見上げる


自由詩 幼い静物 Copyright ゼロスケ 2009-10-31 14:53:20
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