古物が集積された
墓場のようなビルの前
フェンスにもたれて
剥げた手足を
褪せた顔を
晒しながら
途方に
暮れて
きみは空を斜めに
見つめている

いつか駅にいたきみ
もうなに ....
来なくてもいい。


なんども待ち侘びた声の残滓が

まじわる心のゆく先に咲く

いっぽんのありえない人生に追いついて

その熱さに目もそむけ

2度と見られなくなったと ....
クリスマスイブに降臨する
ピッカピカの大天使、

クリスマスイブに舞い落ちる
さらさらの粉雪、

言葉と
こころと
理想と
夢とを
傷つけられて

千切られる寸前まで ....
青い雨が
灰色の空から降り落ちる
夢の中
白百合の頭部が
ポツリと
落ちる

小さな三角形の帆を張った胸が
なみだの波紋で揺れている
だれにもしあわせを
届けてあげられないので
 ....
  静かさ


静かさ、といふ音があると思ひます。

秋の夜長、しをれかけた百合を見ながら
静かさに耳を傾けます。



{引用=(二〇一八年十一月八日)}



 ....
港区三番街のコンテナとコンテナの間に 隠れるようにうずくまって夜 雨に打たれながら野犬と交尾した

人に心を開かないわたしが 犬に股を開いた
ビクンビクンとよがり イキ狂った それを
あなたは ....
粉雪が降って
誰もいない夜、

心の花を枯らした
おとなしい哀しみが
うつむく

林檎の木から
甘酸っぱい香りがする
幻想世界、
真っ新な空気が
喉の奥まで冷やしてくれる ....
色画用紙をひろげて
影をうつす
木炭でなぞる
しばらく眺める
笑いがこみあげてくる
なんと へんなかたちなのだ
俺といふやつは
俺は笑つた
笑つて 笑つて
笑ひ尽くした
 ....
足で漕ぐのは
オルガン
という名の舟

音符の旅
息でつなぐ
ときおり苦しくなって
とぎれる
生きていたという波の上
気配だけになった猫
ふんわり鍵盤の上を渡る

秋の日は
 ....
炎の刻印が
街に押されて
ようやく
冷たい夜が明ける
街のマリア様たちは
眠い目をこすって
もう、
明日から振り返ったとすれば
何度目の
希望を
浪費しただろう

夜 ....
波の跡が
空に残って
だけど
いつのまにか風が消していく
秋の雲はことさら
はかなげで
明日にはもう
冬のものになってしまうだろう

空は
海のなれのはて

今はもう絶滅した海 ....
  けだもの


ひとの声がする

空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に

やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする

《祈りなさい ....
ぼうっと過ごしている
この午後の一時を

自動車の走行音
黄金に照り輝く瓦
微かに揺れる送電線
何処までも澄み渡る蒼穹
この私が今此処に存ること

この午後の一時を
ぼうっと過ごし ....
心、泳いでいる

風が吹いている
いたわりはことばじゃないって
心あたたまる暗示をもらったのは
悪意すべてを認めて受けて立つ
鎧のあいつから

心、泳いでいる

泥まみれの ....
わたし 娘だった頃 夜歩くのが好きだった
公園の木に挨拶し 
のみならずこっそり名をつけて
木の肌に手を押し当てては 
そっと名前を呼びかけた
誰もいない真夜中ならば 
抱きしめたりもした ....
すべて消えてなくなればいい

想いも 愛も
淋しさも悲しみも
ここにいたという軌跡さえ
波にさらわれてしまえばいい

a dream
誰にも知られずに
消えて行く私の言葉たち

 ....
ひんがしのくにのね 群らない夜は
だれもか大勢の中で たったひとり
回遊魚のように 周回する深夜バス
満員なのに みんな たったひとりきり
だれもが どろりととけた目をして
混雑した車内 ....
水を
飲み干す

きれいに
戻れるの


過去は
穢されて
きれいは
きえはてて


水を
飲み干す

涙も
流れるの


過去の
ゆるせない
じぶんも ....
もうあざやかさにそめあげられた青空が
海に落とされ
凍りつく落下速度の門を
美しく破る波の牙

切り立つ崖の上に立って私の
半生を眼下の海に沈めたい

秋も終わり

歌う虫もいず
 ....
切りとる
世界を
見せて
おくれよ
写真じゃ
ダメさ
詩じゃなきゃ
見えない


心という
見えないもの
おもいという
不自由なもの
楽しげな
笑いなら
楽しげに
見 ....
なのに
たゆたうように月は光りつづけ
あきもせず夜空を見上げる
あなたの横顔が冷たい

聴こえるはずのない
化鳥の鳴きごえがした

なにかを奪い去る甲高い意志
その悲しみを ....
わたしの 中の 美しい言葉よ
わたしの 中の 憎しみの言葉よ
わたしの 中の 哀切の言葉よ
わたしの 中の 怒りの言葉よ
わたしの 中心 全ての想いを
燦き 輝き 憤って 震えよ
燃え上が ....
月曜日は買い物日和だ
砂漠の中のショッピングセンターへゆこう

遠くの部族が集まる日曜日よりはましだから
きみの前髪を上手にきってくれる人をさがそう

くだらない思想でこころを壊さないよう ....
妻が財布を買ってきた
古い財布と、中身を入れ変える

小銭と幾枚かのお札を、入れて
レシートの束を、捨て
ポケットの空洞に
旅先のお寺で買った
お守りをそっと入れる

その日から
 ....
  或る秋


切り取られた空が

造り酒屋の軒先にひつかかつて

はたはた ゆれてゐる

おかつぱの姉さんと

坊主頭の弟が

口をまんまるにして

それを見つ ....
磁石は
線をだす

磁力線と
いう

おなじ
性質は
はんぱつし、
ちがう
性質は
ひきつけ
あう

磁場のなか
磁化が
おこなわれる
なか、
つみは、
 ....
 とある街で

金木犀が香る
だけど金木犀はみあたらない
探しているうち
何年経ったろう
すっかり風向きは変わってしまった
行きついた先で
仕舞い忘れられた
軒先の風鈴が鳴った

 ....
くらいくらい 荒野につくりあげた
復讐の塔に閉じこもり
「ひとりだ」と呟いたら
はたかれた

ひたすら 喪いすぎたのだろうね

青い夕暮れに細い声でないてさ

耐えられないわたしを  ....
(10(テン)月4(シ)日は、てんしの日だって?ふーん)


天使の日


闇の清廉さを
剥がされつつある
このゴミだめの街に
夜明け前
タワーマンションに灯る明かりへ
 ....
うそみたいな
ねいきを立てて
みるく色の
おひさまのはーぷに
なでられて

しずかなおとが
きこえます
とおい とおい
そらの つまさきまで

「こんにちは」

 ....
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