すべてのおすすめ
残らず文字が飛び去った詩集を開いて
男は夢を見ている

白紙の上に万象を結び付けていたものがなんであったのか
ことばという記号はうさん臭かったけれど今はむしろ生臭くさえ感じている
実体験も夢 ....
わたしは見た
立葵がゆれるのを
風の仕草を想いながら

わたしは見ている
だが今のものとは違う
ずっとむかし
でこぼこ道の端
夏草から抜きん出て
こちらを向いた
斜陽のせいか
ど ....
太陽は慰めない
空は悲しまない
雨は歌わない
誰もいなくても
人はそうやって

ながくもなく
みじかくもなく
はやくもなく
おそくもなく
香は燃え尽きる

すべては鏡で
なに ....
大気の芯はつめたく溶けた硝子で出来ている

濃い影に瞳を浸し

耳は遠い過去でボートを漕いでいた

死んだ男の携帯番号を消していないのに気がついた

やせっぽっちの若造のまま逝ったやつ ....
風が立ち止まると
その樹は息絶えた
葉はみなとけた
地に届くこともなく
夢の中のおたまじゃくしが
絵具のパレットから拭い去られるように

朝は被膜に覆われ
影はみな死産の仔
へその緒 ....
──聞いてほしい
そう言ったきり黙ったまま
あなたは瓜を切る
狐雨 なだらかな稜線
あふれる水気に中てられて
ナイフは曇り
鈍い光が一、二度声もなく
痛いのは自分だと叫んで
果肉に深く ....
拾い集める
眼が餌を
点々坦々と
大きなボウルいっぱい
ぼくらは集められ
味つけされる
小さな脳みそいっぱい
ぼくらは戦う
ぼくらは不発弾
遊びで傷つけ合って
言い逃れが得意
ぼ ....
地の悲しみの澱を素足で吸い上げて
嘔吐する
花びらの金魚
収めきれず
破裂するまなざしの気配

その歌が流れると
わたしの中に風が吹き草木を揺らした
ことばは糸でつないだ骨片や貝殻のよ ....
霧のなかで羽ばたく
ふるえる声
光の底に沈んだ
夜の鱗揺らして


一枚のガラスのよう
結露した
   時間
鏡にしかなれない
いつも裏返ったわたしたちの
化石のような孤独 甘い ....
家中の窓を開け風を迎え入れる

花を揺らし若葉とたわむれ
いまはカーテンを帆のように膨らまし……

 ──いっしょにいかないか

 ──いきたいけどね

一羽の蝶が岩場の花にとまり
 ....
ささぶねにこころのせ
あてもなくただ見とれ
現をかさね朧にいたる
月日は散る花びらより
軽やかに水面をまろび
めぐりきれない永久の
肌の何処にまつわって
在っても見えなくなり
変らない ....
耳に舟を浮かべ

歩調乱して舞う春の

袖の桜に


つややかな

丸石を

箱に収めたまま


誰が挟んだ栞だろう

蝶は飛び

青き幕間に


  *
 ....
酒瓶の向こう 海が見えた

黄金の波 溺れるかもめ

便箋からつぎつぎ剥離して

あぶくになって消えていった

夜の上澄みをただよう海月のよう

デスマスクから解放された

こ ....
夜はカゲロウの翅
昼の光は油絵の中に塗り込められるよう

闇は真中から暈される
四肢はつながりを断たれ
各々結露しながら息をひそめた

瞳の内側に湧いてくる
けむりの肢体
遠い昔のも ....
音楽のせせらぎ
跳ねまろぶ輝き
クスクス笑いを隠すように
去っていった
あの永い一瞬
瞼の裏にホチキスで留めたまま
耳をふさぐ風
風のふところ
雲のにおい
クジャクチョウは目を覚まし ....
音も光も波だ
わたしは糸のもつれたまま
すぐそこの手遅れに輪郭を求めた
模索する指先を虚空が握り返す
ゆっくりと破裂する木蓮のよう

去る旋律 その尾羽の煽情的なタクト
裁ちばさみはどこ ....
蟻を踏み 瓜を食む
 夏の熱 まどろみ乱れ

毬を持ち 森を見た
 月の角 しじまに白く


きみといた うたかたを
書きとめる すべもなく
こころ満ち また欠けて
十六夜の 膝枕 ....
  *

ねじれた果実の熟すころ
死は昨日のように訪れた
時間の底に焦げついた
小さな獣の影
かどわす風にいま黒い水を渡る

古い橋の真中から
栞を落とす子ども
その萎えた手の甲か ....
朝の輝きに包まれて
目覚めたまま夢を見た
雪解けの丘陵地
窪地を挟んで遠く
森は黒々とけば立っている
見おろせば
まばらに雪の残ったぬかるみを
歩くひとりの後ろ姿
すこし後からやせた犬 ....
ふりむけば裸のまま
眠りに落ちる月
しわひとつない空のシーツ
蒼白の 
ひんやりした頬
東雲は遠く
高台から見える町並みは
靄の中から生まれたばかり
橋の上 羽音が
明けの夢の掠めて ....
ぬれた星を見上げ
渇きをいやす
眼球は
キリギリスを歌う
風見の舌と睦みながら
吐血の祈り
内視鏡では
さかしまに蜷局を巻く
死は累々と
あどけなく惨めに
染みはそのまま
母の着 ....
大雪の日
山間の住宅地を車で抜けてゆく
止まったら動かなくなりそうな上り坂
アクセルを踏みこむ
対向車が来ないことを願いながら
暗い空 黒い樹々
水墨画の中に迷い込んだような──
その時 ....
柳がゆれていた
小さな氷の粒が
各々太陽を抱いて踊っていた

卵をひとつ割るように
今日という日は生まれた
宇宙がそうだったように

ヒヨドリの声で問う
己とは
欠片ばかりで像を結 ....
汗も涙も塩辛い
胆汁は苦い
寒さに震えるネズミ
呼吸を忘れたネズミ

肉体と精神の糸のほつれ
つぶれたトマト
窓から飛び出した冷蔵庫
氷嚢をあたためる心臓

入れ子状の死
ゴミ箱 ....
裏口を叩くものがある
名をもたない
持っていても知る術などない
晴れ着姿の少女の形をしたなにか
扮装と立ち振る舞いがすべてのもの

ほつれていった
むらさきの血のほとばしり
内臓をひも ....
水脈を断たれて土地が干上がって行く
わたしの生涯は幻を耕やすことに費やされた
この胸にいつも寄り添っていた処女地は
人類共通の淫売婦にすぎなかった
精を貢ぎ続けたわたしも
彼女の周囲を飾る白 ....
冬のささやきに染まる頬
たぶらかされる唇もまた
つめたい 
熾火のよう 
ことばは
今朝の淡雪すら溶かしはしない
樹々を渡るすずめらの
目くばせほどのぬくもりも
変わらない距離で深まっ ....
 *いたずら書き

故人の顔にいたずら書きをするのはやめましょう
(たとえそれが噴き出すくらいに面白くても)
自分ではもうぬぐえないし弁解だってできやしない



 *粘土あそび

 ....
すずめを追ってヒヨドリは
桜の色葉をくぐりぬけ
共に素早く弧を描く
糸でつながったみたいに

 *

落葉が元気に駆け回っている
ヌードになった街路樹の
先っちょでわずかな枯葉が千切 ....
山の錦を見上げれば
まなこに落ちる
雪虫は
苦い文字のように
熱く 湧きあがることもなく
違和だけを残し
すすぐ目薬の
青い器に 光が泳ぐ
空の肺を満たす羽虫
大量発生
いのちの数 ....
atsuchan69さんのただのみきやさんおすすめリスト(128)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
白紙への長い旅- ただのみ ...自由詩5*24-7-21
見つめる声- ただのみ ...自由詩5*24-7-14
非在の果実- ただのみ ...自由詩4*24-7-7
葬夢- ただのみ ...自由詩6*24-6-30
四千七百四十五日- ただのみ ...自由詩3*24-6-22
無言劇- ただのみ ...自由詩4*24-6-16
拗ね拗ね団──いつかレインボーマンと- ただのみ ...自由詩4*24-6-2
あの虫がいるのは窓ガラスの内側か外側か- ただのみ ...自由詩6*24-5-26
迷宮の蜂- ただのみ ...自由詩5*24-5-18
二日酔いが抜けてきた午後- ただのみ ...自由詩5*24-5-11
狸囃子が聞こえる- ただのみ ...自由詩3*24-5-4
石蝶夢- ただのみ ...自由詩3*24-4-21
ヌード- ただのみ ...自由詩3*24-4-13
夜に添う- ただのみ ...自由詩6*24-4-7
春偏愛- ただのみ ...自由詩5*24-3-31
瞑る春- ただのみ ...自由詩3*24-3-24
鈴絃──いつか誰かが書いた詩- ただのみ ...自由詩3*24-3-9
逝くまで書いて- ただのみ ...自由詩9*24-3-2
それは天使ではなく- ただのみ ...自由詩4*24-2-10
月に添う- ただのみ ...自由詩3*24-2-3
よみがえる- ただのみ ...自由詩5*24-1-27
うさぎとカケス- ただのみ ...自由詩3*24-1-20
非在の姉弟- ただのみ ...自由詩4*24-1-13
コールドスリープダウジング- ただのみ ...自由詩5*24-1-6
ウイルスカクテル- ただのみ ...自由詩4*24-1-2
たわわな虚無- ただのみ ...自由詩4*23-12-23
冬の裸歩き- ただのみ ...自由詩8*23-12-3
死者の友- ただのみ ...自由詩4*23-11-18
見上げてごらん空耳を- ただのみ ...自由詩5*23-11-11
余韻- ただのみ ...自由詩2*23-10-28

Home 次へ
1 2 3 4 5 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する