鯛       花は桜いろ
サワラ     甘やかなピアノのメロディーは
赤貝      血潮の香りが胸を刺す
はた      深く広がるハーモニー
つぶ貝     彼方を眺め噛みしめる
え ....
水脈を断たれて土地が干上がって行く
わたしの生涯は幻を耕やすことに費やされた
この胸にいつも寄り添っていた処女地は
人類共通の淫売婦にすぎなかった
精を貢ぎ続けたわたしも
彼女の周囲を飾る白 ....
 四国に続く山脈に
 雪が積り
 社の石段に降る雨に
 心を洗った後

 醜く見える貴方の顔

 その薄い唇に
 私の唇触れた事が嫌悪を誘ったとしても
 私の責任ではない

 何 ....
                    大海を眺める男女が つつがなく
                  {ルビ史環=シワ}に さすらいまどう しゅんかん
      あなたのテンには鏡、草原に ....
古木の水底から生え伸び
水面を揺らす、
それ太く透明な音響
世界を震わせ、
この殺し合いの界の
水面を揺らす哀しみ
滲み浸るヒビキに
古木の枝のキシミ
重ね絡み合い新たな響

水中 ....
ドライブする
現時点で何も決めてない
直感に任せてみる

行かないような場所だったり
綺麗な絶景に出逢えたり

色々決めるのもいいけれど
直感に任せてみるのも
楽しいと思う

気 ....
 氷雨ふる
 揺らぐ湖面の深川鼠

 畔のみち樹木の間、
 銀の飾りの濡れぬれて

 あの高い枝の末端から
 最後の一葉、落ちたなら
 老婆の干からびた爪の先
 ひび割れる音がしない ....
ほとり ほとりと
冬の 路

ぽつり ぽつりと
{ルビ詩=うた} {ルビ謳=うた}い

ほろり ほろりと
{ルビ啼=なき}き 濡れて

おーい おーいと
友を 呼ぶ


枯れ ....
明かりの消えた家々の寝静まり
枝の絡まり合う裸木の群れ、
夜空に向い立ち荒涼と
垂直の眼 落ちて来る

(墓堀人たちは今日も棺を埋め
せっせせっせと棺を埋め)

落ち来る垂直の眼、
 ....
壇上に押し上げられて何も言うことがない事に少々戸惑っている

相談がある、と言われたが小学生らしき君は誰だっけ

階段の上では少女が手をふり
暖をとりましょうと眠たい声で言う

だんだん ....
だれもが見ている死 
テラリウムに溺れてしまった花
金色の蝶蝶と迷露
虹色の貝殻は空間の{ルビ郷愁=いえ}

てのひらは きらきら、立ち止まり
素朴ひとみも うだがれる
そぉとした お ....
夕景、
いちにちの役割を終えて、
港の工業王国に静かにそびえたっている、
ぼくのちょっとした、すこし傾いた、
鉄骨のキャッスル、
工場の七階から、
淀んだ窓を開け放って、今日も少しだけなが ....
朝は曇っていたけれど
天気予報を信じて洗濯した
どうせ一日では乾かない
束の間の外干し

冬生まれの子はよくミルクを吐いて
深夜に洗濯機を回したものだった
洗濯物はいつでもエアコンで部屋 ....
 スーパーの食品売場
 高らかと流れ始める
 映画『ロッキー』のテーマソング

 バックヤードから颯爽と登場する
 二人一組で値下げシール貼り回るアルバイト達
 曲がサビの旋律になれば ....
ひらひらはらはら
余韻響かせ舞い立ち
形態から色彩の逃れ出る

うっすら薄い絹糸のループ
形態失い漂う色彩達の輪舞

夢の奥に横たう
もう一つの現実

色彩 新たな形態求め場を求め ....
僕らの明日はどっかにつながってるんだ
さよならなんて言うもんか って
鳴きつづけてぱたりと絵本が倒れるように
 
 
 
さよならとくじらが言った(ように見えた)
さよならと機関車も ....
ほら、見てごらん
指先が少し光っているよ

表情のない肖像画が呟いた

ベランダに出て
夜空に透かしてみたけれど
少しも光っちゃいない

ん… 指が石化している
でもキーボードを打 ....
 雑然とした卓に
 ちょっと戯れに挿した
 寒椿の 紅い沈まり

 眠れないのです

 時は重たいものですね
 全て寝静まっているのに
 音があるのです

 秒針が刻む
 藍 ....
お下がりの大きな自転車は
不躾な轍を踏んでいた
5時のサイレンが鳴る頃には
納屋の隅の方から
古い天気予報が発掘された
曇りと雨の日には
ばってんが付けられていたけど
晴れの日は見たこと ....
思惟のふちから
言葉が崩落してゆくとき
僕は君の夜を抱き
君は僕の夜を抱く

その暗い球体の中に
守るべきすべてが
あるかのように

たとえばそこに
紅い薔薇
暗さの中では
も ....
色づくからすうり
いつのまにか冬

たねを取り出して綿に包み
マッチ箱に入れて待って
ほら黒いたねが黄金色に

祖母から教えてもらったあの秘密は
どこへいった
もう1回試してみたいな ....
はたせなかったやくそくが
はたされないまま
はてまで
つくられたみち
はたして
はたされないものを
はたすことが
やくそくだったのかも
わからないまま
はてまで

初出 日本we ....
白と黒の、うっとりと時の踊り場で寛いでいるかのような、冬
雪は未だ、ここに居てもいいのかどうなのか、
わからないでいるように見えたりする、初冬
暗い雪の夜道を歩いてみれば、小首をかしげた四つ足獣 ....
 
砂になってしまった夕陽は
さらさらと少しく風に吹かれ
まあだだよ、と穏やかな逆反応
 
 

私の幸はどうでもこうでもOK
あなたの幸、あなたの幸こそ
もっともっとエデンの東のあ ....
 止まらない
 人類の負の動力源は
 一握りの
 山脈より
 大洋より
 強い者たちの
 掲げる道理なのだろうか

 連日報道される中東紛争

 はためく旗の下、
 生きねば ....
午前0時を過ぎると
オレは変貌してしまう
コウモリも寝付いた夜に
静かなBARをさがし
街を彷徨い歩く

眠れない連中は
タンゴを踊り
歌をうたい
さかんにキスをする

オレはゲ ....
月の夜だった。
  海は鱗を散らして輝いていた。
    波打ち際で、骨が鳴いていた。
     「帰りたいよう、帰りたいよう、海に帰りたいよう。」
   と、そいつは、死んだ魚の骨だ ....
 17時回ったスーパーの精肉コーナー
 陳列棚に、値下げされた鶏もも肉少量パックが
 取り残され上目遣いで
 私を誘惑する

 手が伸びる けれども
 チキンライスを食べたいわけじゃない
 ....
絹のように 第一印象だけ冷たいおとこだった
くるみこまれて にげだす理由もなぜか無くて
けれんもぺてんも要らぬ はじめての人間関係
粉薬みたくあまにがい心臓で駆けぬけたもんだ
さあ 幕引きです ....
 延暦寺西塔の居士林、
 森閑とした闇に包まれ坐る道場
 打ち鳴らされる警策で
 突如 目を見開くと

 秋霖

 湿った杉の並木が
 生い茂り
 霧のなかに太い幹の影を映して
  ....
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