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──献杯の酒を飲む夜に

  * * * 

高校三年生の頃、僕は恋をしていた
あんなにも好きだった娘(こ)に
教室で話しかけることもできず
震えながら・・・告白しようとした
夏 ....
妻が財布を買ってきた
古い財布と、中身を入れ変える

小銭と幾枚かのお札を、入れて
レシートの束を、捨て
ポケットの空洞に
旅先のお寺で買った
お守りをそっと入れる

その日から
 ....
時には、夜のドアを開けて
静かな世界を照らす
月を眺める
秋の宵

――あなたのココロの目に視える
  月の満ち欠けは?

日々追い立てられる秒針の{ルビ音=ね}から逃れて
やってき ....
今、僕は、旅先の尾張名古屋名鉄ビル9階の
「矢場とん」で味噌カツ定食を待っている。
景気づけに、豚の横綱がポーズをとっている
絵柄のグラスビールをくいと、飲む。

思えばあれは9年前…独り旅 ....
深夜の台所で 
小皿にのった梅が 
まあるく佇み 
影を、伸ばしている 

些細なことで取り乱す 
僕とは違い 
微動だに、せず 

のっぺらぼうの顔で 
ただ、そこに。 

 ....
玩具銀行の赤い判子を押した 
福沢諭吉の万札を短冊代わりに 
笹の葉群に吊るします 

夏の涼しい夜風が吹いて 
はたはたはたはた 
数え切れない諭吉さんが
笑います 

時折ちらり ....
 6月の「ぽえとりー劇場」のオープニングでは、Ben’sCafeに集まる人にとって言葉の味わいの深まるような有意義な詩の夜となるよう願いをこめて、宮沢賢治の「注文の多い料理店」の序文を朗読しました。  .... まことの自分である時は 
背後に透きとおる
あのまなざしが 
黙って微笑を浮かべます 

まことの自分である時は 
色褪せていた日常に 
肩を並べた花々が
次々口を開いてゆきます 
 ....
旅人は{ルビ叢=くさむら}に埋れて 
横たわり  
いちめんの空に 
浮雲の群を見ていた 

それぞれに{ルビ流離=さすら}う雲は 
違った形の膨らみで 
西から東へ流れゆく 

自 ....
最近、黒い手袋が
落ちているのをよく見かける 

ある時は職場の廊下 
ある時は駅の構内 

人間達の無数の足が 
通り過ぎてゆく隙間に 
{ルビ木乃伊=みいら}の面影で 
誰にも届 ....
詩人とは・・・ 
夜風に哀しく{ルビ項垂=うなだ}れる 
名も無き 
独りの草である 

詩人とは・・・ 
哀しみの野へと分け入る少年の 
蒼い背中に慰めの音色を贈る
竪琴奏者である  ....
夜道に光る自動販売機の横に 
「TRASH」と黒字で書かれた白いゴミ箱が 
暗闇の丸い口を開けていた  

空っぽのペットボトルは棄ててもいいが 
棄ててはいけないものもある 

旅人の ....
「 よいしょぉ・・・! 」 

どしゃぶりの雨の中 
三人の男は 
橋の欄干にぶら下がり 
川へ落ちそうな独りの女を 
心を一つに、引き上げた。 

(ソノ時彼ハ、ジーンズノ腰縁ヲグィ ....
お盆休みも通勤バスに乗り 
車内で騒ぐ 
夏休みの学生達に 
ちょっと眉をしかめて 
掻きわける 

向かいの席に座り 
あくびをするサッカー少年の 
膝には擦り傷があり 

痛そ ....
一日働いていれば 
あちらこちらから 
いろんな形をした石が 
飛んで来る 

痛みなんかはないふりで 
ほんとうは、あちらこちらに 
こぶは膨らみ 
あざは残り 

なんでもない ....
仕事から帰り 
洗面台でうがいをする 

ぶく ぶく ぺぇ
ぶく ぶく ぺぇ

まっしろな洗面台の
お湯と水のつまみは 
少し飛び出た両目で 
真中のましろい底に
丸い口を空けたま ....
一人のひとの 
こころに宿る 
一つの宇宙 

銀河の塵を何処までも 
深く掻き分け泳いだ場所の   
無明の闇の広がりに 
ぽつんと一人 
ひかりの人が 
仏の姿で坐っている 
 ....
その頃田舎で独り暮らす老婆は
畳の部屋で湯飲みを手に 
炬燵の上に置いた
一枚の白黒写真をみつめていた 

身に纏う軍服と帽子の唾下から
時間を止めたまま今も微笑む 
あの日の息子 
 ....
江ノ電の窓辺に{ルビ凭=もた}れ 
冷たい緑茶を飲みながら 
ぼうっと海を見ていた 

突然下から小さい手が伸びてきて 
「かんぱ〜い」 
若い母の膝元から 
無邪気な娘がオレンジジュー ....
昨日のゴミ置き場で 
幸せそうに日向ぼっこしていた 
白い便器の蓋が 
今日は無い 

腰を痛めて十日間 
介護の仕事を休んでいたら 

先月の誕生会で 
目尻の皺を下げていた 
 ....
らんぷ一つのテーブルに 
湯飲みはひとり 
ねじれた影をのばして立っている  

窓の外から聞こえる 
鐘の音や鈴虫の唄
歪んだ唇を開いた{ルビ縁=ふち}からすいこみ 
器の形のままに入 ....
夕暮れ 
母校の校庭の隅に立つ 
{ルビ巨=おお}きい{ルビ欅=けやき}に額を押しつけ 
涙を絞って泣いていた 

この木のまわりに穴を掘り 
子供だった僕等の宝を入れた 
卒業前のあの ....
よく晴れた日 
玄関を開くと 
小さい{ルビ向日葵=ひまわり}の植木鉢が 
倒れていた 

恋に傷つき震える 
君のようで 
ぼくは{ルビ屈=かが}んで 
倒れた鉢を両手で立てた 
 ....
ざざあ 


ながしに水をすてる 


空っぽの 
やかんの中身をみていると 
わたしの頭のようだった 
窓辺の{ルビ日向=ひなた}に置かれた{ルビ壺=つぼ}は 
ざらつく{ルビ表面=おもて}を 
降りそそぐ日にあたためて 
まあるい影を地に伸ばす 

窓辺の日向に置かれた壺は
「何者か」の手 ....
終電前の 
人もまばらなラーメン屋  

少し狭いテーブルの向こうに 
きゅっ と閉じた唇が 
うれしそうな音をたて 
幾すじもの麺をすいこむにつれ 
僕のこころもすいこまれそう 

 ....
 日曜の午後 
 鎌倉の喫茶店で 
 「 詩人の肖像 」 
 という本を読んでいた 

 店内の天井から 
 ぴったりと静止した 
 サーカスのブランコのように 
 ぶら下がる 
  ....
「 みなさ〜ん 
  ぼくのあとについてくると 
  穴に落ちますよ〜     」 

背後から 
ぞろぞろと 
杖をつくお爺ちゃんや 
車椅子をこぐお婆ちゃんが 
頼りない 
ぼく ....
三十過ぎて 
忙しさを言い訳に 
すっかり運動不足の僕は 
最近腹筋をはじめた 

しばらく鍛えてなかったので 
体を起こすたび 
床から上がってしまう両足を 
しっかりと抑えてくれる ....
玄関のドアを開くと 
家族の靴にまぎれ
老人の下駄がふたつ 
並んでいた 

あたりを照らす
天上の 
{ルビ仄=ほの}かな灯り

下駄箱の上に
立て掛けられた 
一枚の絵 
 ....
atsuchan69さんの服部 剛さんおすすめリスト(45)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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梅の顔_- 服部 剛自由詩610-7-8
ましろい短冊_- 服部 剛自由詩509-7-8
宮沢賢治からのメッセージ_〜言葉というたべものに就いて〜_- 服部 剛散文(批評 ...2*09-7-3
花の合唱団_- 服部 剛自由詩409-7-3
ペネタの雲_- 服部 剛自由詩909-6-5
黒い手袋_- 服部 剛自由詩809-3-4
詩人とは・・・_- 服部 剛自由詩508-12-26
(_無題_)- 服部 剛自由詩408-9-5
いのちの綱_- 服部 剛自由詩908-9-1
21世紀のサッカー少年達_- 服部 剛自由詩208-8-14
ましろい顔_- 服部 剛自由詩2+08-6-6
洗面台の顔_- 服部 剛自由詩6*08-4-4
涙ノ星_- 服部 剛自由詩308-3-17
「_詩人の窓_」_- 服部 剛自由詩3*07-11-12
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