人は名前を付ける
人は火を使う
人は言葉を並べる
人は音楽を奏でる
人は絵を描く
人は道具を作る
人は医療をする
人は弔いをする
人は農耕をする
人は酒を飲む
人は料理をする
人 ....
天空を横切り優しい春の風、
近付くなら
無の断崖に立つ以前、
垂直に次々貫入来たるモノ
緑の葉群れ浮き立ち揺れ
うっすら透かし彫り光帯び
今、赤いセーターの女の子笑 ....
真実は近付かず
近付き表せば嘘になり
無力感に打ちのめされ
諦念と哀しみ抱き
ながら
魂の塔を昇る、登り続ける
ふぅと息つき聴き入れば
仄白き声のヒビキ無限
内なる祭壇を打 ....
愛は強くしなやかに
恋は切なく甘酸っぱくて
歓びは高く天を突き破り
悲しみは深海に沈みゆく
光りと影の協奏曲が響きあう
帆布を揚げて
ヨーソロー!
船長は高らかに叫んだ
目指す宝の島は
オレの背中の地図に描かれている
酔えば赤く浮き出て航路を示す
ラム酒を飲み放題という条件で
航海に行く契約書を交 ....
「変ね…窓閉まってるのに。」
おりんの金魚が死んだ その晩のこと
湯屋から店にかえった おりんは
小窓のわきに吊るしてある掛け軸が 畳に
二つ折りになっているのを掛け紐つかんで持 ....
燃える森の光に
子らの遊び戯れ
ジャングルジムの鉄路
銀に錯綜しながら
放擲されるブランコに
登り棒いち早く昇り詰め
遊び疲れた子らの
使い尽くされた肉体
燃える森の光に置かれ ....
追究1
何をそんなに人の事を攻撃するのか?
性欲、または本人は気づいておらず欲求不満
上層部へ密告、
追究2
なぜ自分ばかりみんな攻撃するのか?
股間がだらしない奴が一方的な恨み
上層部 ....
早春、きみは少女、
入学式を前に、いちはやく試着して、
歓びまわっている、
三月のセーラー服の少女、
早春、きみはあるいは、その少女の制服の下で、
日に日に成長してゆくような、
ま ....
「こんな掛け軸さ、女中部屋に贅沢だよねぇ!」
おゆうは小窓のわきの壁に釘を刺して
御隠居が おりんに渡した掛け軸を吊るすと眺める
本紙の中央には硝子ビイドロの金魚鉢一つ
そこに ....
月に葉隠れとはいうけれど
そぞろ虫の影におびえる酩酊者
道端で眠る小地蔵が倒れて
まだ青い無花果の実が零れ落ちている
....
「御隠居様!若い方がお二人、お迎えでお見えになっておられますっ。」
おりんが厨で、上部にある女中部屋へ呼びかける
すると 床へ梯子が降りてきて
「おや、もうそんな時間でしたかな。分か ....
天空の彼方から銅鑼の音が響き
東の風とともに
青い龍が螺旋を描き
舞い飛んできた
干からびた大地に
人々は飢え
龍を待ち望んでいた
鉛色の厚い雲が湧き立ち
雷鳴は轟き
銀の雨が降る
....
もう起きるのか
朝から騒がしい 春と冬がもめている
どちらも「まだだ」と言い張っている
冬眠していた生き物も目覚めが悪い
始発の電車はすいていた
ゆっくり座席に座り
眠気の中で私の中のあた ....
その日 近江屋の縁側で鳴っていた
庭師の枝切り鋏は申の刻に止んだ
お使いの出先から六ツ半にかえった清吉は
一人遅い夕食を済ませると 土間へ降りてきて
大きな身体を二つに折り おり ....
蒼穹に白雲の流れ
わたしは時を生く
純白の息を吐き
高鳴る胸を静め
一点の光となり
蒼穹に垂直の矢を放つ
消える白雲の流れ
今、安らぎ目醒る私に
未知からの閃光 ....
夕映の 風にそよぐ
お堀端の柳の枝は青々として
「今夜も、蒸すのかね…。」
低く重なった綿雲を見る
蔦吉の 下駄の鼻緒は切れていた
「仕方ないね。」
下駄を脱ぐ右足
....
「茶トラ猫、あの日以来…来ないわねぇ。」
近江屋、厨の上部の隅
かけてあった梯子を床から上げる おゆうは独りごちる
そして 三畳の間に敷かれる煎餅布団に座って
脇に置かれた小 ....
もういいよ
ぼくはひとりで
大丈夫
宵闇に
想いをつくし
風に舞う
言葉を失くし
琥珀に浸る
往きゆきて
墨の流れに
身をまかせ
{ルビ闇路=やみじ}の{ルビ褥=しとね}
{ルビ花埋=はなうず}み
今日たまはお腹が一杯で痛いと言うので
急いで近所のATMに連れて行った
下痢気味でジャラジャラとうんちをしたら
ATMが詰まってしまい
救急車を呼んだ
待つこと30分
このATMはお札 ....
天空は澄みわたり
歓喜の楽章が鳴り響く
裸の少年は羽ばたくように
空の青に溶けてゆくように
吸い込まれていった
深まる 純粹無垢な真紅
滅んでは次々また育ち色付く
真紅その暗まる深み異様な威容 に、
この世界という謎
すべて含まれ在り と。
「何だ、これは。」
トラの左肩を掴むハチの目にチラッと
ずれた小袖の襟元から 見えた刺青
肩から ずりッと引き下げて
「桜吹雪の刺青とは洒落てるじゃないか。やっぱり遊び人か。」 ....
ひろやかさ 一面に
真綿の雲の伸び拡がり
空の海原、淡く青
色の此の世に入っていく
深く深く入っていく
離れることなく
ずんずんずんずん
ひたすらひたり
ひ ....
空に 冴える下弦の月
雑穀問屋の屋敷の裏庭
縁側の沓脱石の傍で
浅い眠りにつく ハチ
ふと 嗅ぎなれない匂い
目を覚まし 見廻すと縁の下に
小さく動く影一つ
「誰 ....
弾!弾! 弾!弾!弾! 弾! 弾!弾!弾!
朝昼晩の境なく空を切り裂く砲弾が
半熟玉子を潰してゆく
テレビも興味を失ったのか
当たり前の日常にまみれた俺たちは
よそ事のように黙ってい ....
セピア色に閉じ込められた表情は
硬く結ばれた口元と
こわばる頬
眼差しだけが生きている
たった一枚の写真
逢った事のない親族の表情は
戦闘に出る伯父を中心に
こちらの世界を見ていた
....
空に冴える下弦の月
ポツン と川ぼり佇めば
水面にこぼれる 舟宿灯り
さっき 別れてきたばかりの
タマの泣き顔
浮かんで揺らぎ
男泣きする トラ
ガラリッ
....
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