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雨が小説を書き上げる前に僕は姿を消した
左巻きに回る星に飛び乗って
地続きの空を眺む
「夏」
北向きの窓に小さい絵の具をかき集めて
一番輝いていた頃の僕は
静止画のように夏を洗う
よそおう纏う切れ端は
僕のような顔をして
どこへ行くのか答えない
「言葉猛獣使い ....
眼鏡ケースの中にボールペンを見つけた時
ドリップパック珈琲の袋の反対側を裂いて粉バンした時
ねじれたりよじれたりしなくても
何だっていいんだよと
コトバは私を受け流す
チョコレート海老入りマスタードサバランを
隣のテーブルで頼んでいる
水たまりに隠した亀が
もうじき鳴きそうだわ
席に着くなりその話
をするとA子さんは
足早に
過包装の雪の中へ
飛 ....
アラジンのランプのようにスマホの中に入りそう
街を歩いているのかスマホを歩いているのか分からない人
古タオル猫古タオル?道に転がるマフラーだった
野心が目鼻つけて歩いている
うつ伏せに浮かんでいる文字の背を言葉に
揺れる水面
浮き沈むかたち象る
遠ければ遠いほど意味は重たく
暗い水底から手招きする魚影
木葉日のレモンカードの行方知らない
小鳥啄んでいる ....
土の香を清々うたふ水仙の花
瀬音に秒針の音紛れ込む冬日
金魚がいると思ったら、赤いプラスチック容器
PayPayと鳴く鳥がいるらし
ジャンボ機から見れば小人のような私の暮らし
海鳴りを昭和のドラマに聴いてゐる 鬼籍に入りし人偲びつつ
風花やビル立ち並ぶ回路舞ふ
調子っぱずれの音を奏でている駅ピアノ 冬休みももう終わりか
柱の隙間から拝む富士山となりました
子沢山の家の洗濯物 日が落ちてもまだ風に揺れている
最強寒波襲来 シクラメンも私も家に ....
お正月、ゴミ集積所にも人形が貼ってある
冬空に鮮やかな花梨の水玉
内股でランニングしている人とすれ違う
冬枯れの木で沈黙する柘榴の実
子供たちが帰って、またシーンさんがやって来た
若いなあと思いつつ同じフレーズでまた泣けるフジファブリック
花を抜くのも潔いのが名ガーデナーらしい
ビスが一つ落ちている。もう元の場所には戻らないだろうな
歩行者一人行かせて不満げな ....
海に向いた拡声器が知らせるある漁師の死
車の目前に降り立った白鷺にも母の話は途切れずに
黙々とボールを蹴る子冬木立
小さき鉢の菫に冬のひかり憩う
水平線を折るその指先から飛び立つ折り鶴