隻眼の花にこぼれる
はじまりの波のはじめから
めぐる魚からほどける光
片方の目はまばたいて
沈みくるものを受け入れる
敗れつづけてなお勝つものがあり
不幸せの上に成り立 ....
*島の魔女
「だってわたしは魔女だもの」
赤い唇を歪めて笑った魔女に、
オリオンは硝子壜を差し出したまま俯いた。
魔女はしばらくその頑なな様子を見つめてい ....
* ローレライの夜
「オリオン、君はあの歌を聴いたかい」
航路図を広げながら問いかけたスピカに、
オリオンは首を振って見せた。
「わたしはちょうどベッドの中だった」
....
綺麗な声に目が覚めた
立ち上がって海岸線を歩く
波音と風音の穏やかに響く砂浜に
僕は桜貝を見つけた
手に取るとひんやりと冷たくて
薄桃色が微かに温かかった
温めるためか 温まるためか
そ ....
僕が部屋のベッドの上で女の子とキスしていた頃
外では無邪気な子供達が走り回っていた
僕が彼女の部屋のベッドの上でフェラチオをしてもらっていた頃
外では蝉達が有らん限りの声を上げて叫んでいた
僕 ....
愛情を持ってことばと向かい合う
簡単なようでむつかしい
誰かの作品を読む
誰かの日記を読む
誰かの声を聞く
誰かの
親しみを込めて私はそこに立つ
私の親しみを
だけどあなたは知らな ....
降り立った夏の停車場せみたちの鳴き声拍手喝采のごと
実家へと歩く田園風景のさびしきひとりと描かれる夜
秘密基地としての廃屋いまはもう月光だけの棲み家となりて
失った記憶と ....
ちいさく
きらめく おと
つれてって
つれてって
こばこのなかから
なつかしさ こぼれて
ないてもいいよって
いってくれる
甘栗むいちゃいました
三点倒立で甘栗むいちゃいました
航空ショーで甘栗むいちゃいました
筋肉ミュージカルで甘栗むいちゃいました
死海で浮かびながら甘栗むいちゃいました
女性専用車両で甘栗むい ....
もう大人になった気がして二本足で立つことにした誕生日
「生命線を持って生まれたかった」スクラップされていくロボット
大福だと思って食べたら素甘だったという悲しみを背負う
....
髪の毛にエレベーターが刺さっている女の人と
危うくぶつかりそうになって
うっかり乗りそうになりましたが
それよりも階段の方が健康に良いので
大丈夫でした
自動販売機の前では
一匹の ....
海や土やマグマや風と
一緒に浮かんでいるという
私は
身体を選んだわけでも
心を選んだわけでもない
先にあるものから
たくされたような
安物の 腕時計が
地上 から ....
窓辺を漂っていたスウィートピーたちは
薄れて消えてしまったよ
白いのもピンクのも薄紫のも
いつか行こうなんて云っていた
銀の門のある空中果樹園も
いつのまにかどこへやら消え失せてしまったよ
....
溶けるまで
眠れそうな遠くの日々が
溶けていくまで
深々と、動かない部屋で
指を折る
指を折る
ありきたりな言葉では
追いつけなくなりそうで
街灯がつくまでの時間を
静かに歩 ....
自由とは一種の平和さがある
「うお座の運勢が悪いから、今日はいて座だよ、僕。」
ハナタレ小僧が言っていたのを真似して
「うお座の運勢がいいから、今日はうお座だよ、僕。 ....
神戸っていうのは、不思議な街だね。
洒落たウォーターフロントと、にぎやかなショッピングモール。
混沌とした中華街までもが、通りを挟んで混在してる。
ほらさ、自分って海ふりーくですので、こ ....
今頃は、さらさらした風が吹いてきて
いつも 左肩から
あなたを感じる匂いが します。
昨日 通ったことのない
知らない道でデジャヴした
山吹色の花咲く庭の
崩れかけた壁の上 ....
ガソリンスタンドで働く父のために埠頭で釣りをする母
サンドウィッチにはさまれたクラゲがただ干からびていくのを待ってる
ヒツジの皮を被ったケダモノだが牙はすでに抜かれてし ....
かかりすぎる 振り子
届くまで 飲み込んだ 長さ
ふさがってる ノート
ささやかな 白 の 記
とめられたいのなら
かわって
につかなくなって
ぽーん と 破れた ....
地をふりかえる
もはや人でないものとして
山に分け入るべき時だ
鼻を濡らして
舌を濡らして
人としての重荷を下ろす
頬を赤らめ
森を通って山の頂上にたどりつく
おしり むずむずする
....
いのちの たづなを つかんできみは
あしたへの ベールに またたきする
あのとき かんじた こわい、こわい
きもちを しかい いっぱいに かんじて
せかいの ただ いってんで ....
林の前を透明が過ぎ
曇をわずかに残してゆく
枝が風に
風が枝になるさまを
雨は照らしつづけている
水と水のふるえのはざまへ
羽はさしのべられてゆく
水を聴かず 音だ ....
踏み込んだところが山の入り口でお眠りここがゆめの入り口
僕はまだ死んでいないとあなたから雲の手紙がひろがる深空
この花の名前をあなたに聞いたはず昨日の夢の廃屋の庭
生きて ....
何か掴まなければ と
恐れなくてもよいのだ
いつでも繋げるように
私の両手は空いている
嘗て星々に触れたとき
驚きながらも微笑んだ
一秒よりもはやく
私たちは老いてゆくから
....
嵐の日にカンパーナが遠くでないている
そんなに悲しい声でなくのはやめてくれ
森が揺れているよ
悲しい悲しいと、
カンパーナ
誰もおまえの森を奪いはしないのに
....
我輩は狛犬である。
うん。
口元はきりりと締まっているのである。
うん。
だらしなく口あけた相棒とは違うのである。
うん。
だが百年に一度くらい口あけて吠えたいのである。
うん。
....
君が眠っているうちに
パンが焼きあがったみたいです
お母さんはお父さんを呼び
小さな女の子はテーブルを手早く片付けて
髪を撫でてもらいました
君が眠っているうちに ....
いつも遠くから見ているだけの君へ
今日は花を贈りたいな
どんな花が好きなんだろうな?
びゅーっ
世界各国の素敵な花たちをどこからでも
プレゼントできるよ
どんな花でもリクエストして ....
さっき見た君の姿は瞬く間になくなってしまって
いま、僕の吹いてるところは身を縮めたくなるほど寒い
ここから 君のいるのはあっち?こっち?どっちかな?
びゅーっ
あれ?
今見た ....
暮れていく夏空に似た恋をして大人になったつもりでいたの
言わないでほんとはもうね気付いてるあなたは優しいだから辛い
どうしても言えない言葉を胸に抱きあなたとわた ....
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