瞳が何処かを巡っている
まばたきの度に新たに生まれ
暗がりに浮かぶ光の紋様
見つめては見つめては泣いている
吹雪 涙
同心円の羽の渦
ひらき ふるえ
問う
....
死ななくてもよかったたましいに向けて
打ち鳴らされる打ち鳴らされる鉱と金属
棄てられては増す つばさ けだもの
重なる紙のはざまの光
紙の上に浮かぶ珠
ひとつ持ち ....
白いホールケーキのような町に
シャベルで切れ目を入れたとしても
真新しい粉が空から降って
思い出を挟む間もなく積もる
傘も差せずに動いているなら
髪を白く染めてゆく雪の精
何十年も先の ....
ジャズの{ルビ老舗=しにせ}・ドルフィーで
朗読会の司会をした
詩人達は{ルビ数珠=じゅず}の言葉を…{ルビ紡=つむ}ぎ
休憩時間に賑わう
暗がりの店内に紫煙はたゆたう
カウンターの ....
深く眠って目覚めた朝のゆびさきは
少しまだ透明がかって
夜が
見えかくれしている
動いている心臓は赤い磁石
覚醒してゆく時間に
わたしのかけらを
元在った場所に吸い寄せて
願っ ....
唾を唾で
瞳を瞳で抑えながら
においの無い人ごみは
鉄路に影を残してゆく
ひと粒の胡椒が
紙の上を転がり
拾おうとするたびに終わり
つまんでは落とし またはじまる ....
片目を射抜かれたので
精肉部門に逃げ込んで
働かせてもらうことにした
精肉部門では隠れてカイコを
飼って居た様で
絹糸を秘かに作って居ると言う噂だった
私はシルクロードに居る様な気分で
....
それから空は夏雲湧き立ち、風は川を越えて丘を越えて、それから線路を越えて団地を越えて、それからあの家の窓を抜けて、あの白い壁の部屋をぐるりと回る。部屋には檻があって虎がいて、虎は檻の中で待っている。誰 ....
川が近づいてそっと入っていく
金属くさい くさい 私と
その鎖のつながりあるところまで
この世が終わるなら私ひとりだけ終わっていいと
いつも思っていた いつも思っていた ....
息に揺らぐ火のなかから
手をつなぐ手は現れて
熱から蝶を持ち上げて
小さな火傷を増してゆく
ひかり 涙 ひかり 涙
好きなものを嫌いになる
内と外 ひとりのひと ....
砂地に消え入りそうな輪が
柱の間をすぎてゆく
誰もいない中庭の風
轍の跡を消してゆく
壁にあいた
服のかたちの入口が
白い衣を手招いている
窓に映らぬ 午後の影の群れ ....
いま どらびだの駅だ
むかし おなじ名まえのくにを紀行したが
もうずいぶん前だったので
ぼうぼうとした
かぜの中あたりで 周囲を見まわす
駅舎があるとは知らなかった
いや
とうの ....
おまえではない
おまえではない
絵の具を燃やす手
土に火の絵を描きつづける手
隠れていた猫も虫も去り
原はどこまでも静かになる
鳥も鳥を話さなくなり
常緑樹のなか ....
少しだけ人になる人
背のびをして
外を見る
雨の花がひろがっている
光は近く 遅くなり
音は速く速く伝わる
何もかもが光ではいられない
水の水の水の底まで
....
{引用=
ここには昔きよらがわと呼んだ細流(せせらぎ)があった
}
なにもしらずにおもいつづけた
あなたには こよない日々があったとしらずに
なにもしらずにさがしつづけた
あな ....
帰るよ、とか
ケーキ買ったよ、とか
たいがいの報告に
り
ってひと文字で応える
それは、了解ですの意味だって
わかっているけど
少しさみしいから
り、り、ってコオロギかよ!
って ....
コオロギが傘を忘れて雨宿り濡れた月夜を優しく唄う
こころ美しく 生きたい
誰かの幸せを うらやんだり
今日 私にできること
生きていくこと
泣き出しそうな曇り空
子供の消えた公園
何も伝えずに
貴方は逝った
すべての死者が私をい ....
ちいさく頷きながら君が去ってゆく夢を見た
現実はそう変わらなくてなにもたくらみは仕掛けられてはいない
年老いた少女はいつも夢の花をアレンジメントしているのだろう
丘の上の孤独な愚か者はさらに ....
わたしが
単に私で在る
時、
わたしは世界の一点
世界を占有せんと世界に挑み
わたしは限られた一点に住み込み
限られた一点から世界を眺める
(どけ、そこは俺様の場所だ!)
わたしが ....
遠く轟くのは雷鳴
それとも記憶の彼方の爆音
或いは過ぎ行く夏の
名残の花火
下駄を穿いていた
裸足のくるぶしを
風がくすぐり
バッタが跳ねる草の道
また明日遊ぼうねと言 ....
動かない川の水に、
漆黒と銀白の陰陽
濃密に混じり輝いている
対岸の雑木林、
淡い陽光に照らされ
そよとも揺れず
枝絡み合い重なる奥に
白い空間 ぽっかり開く
凝視されている気 ....
(ねむっているように、うつろに開いて
よこたわっていても、私には見えてる)
瞬きで合図をくれていた
感情もなぜかくみ取れた
そんなにあふれていたんだね
枕元にたくさん落ちていたよ
....
反転した
薄暗い影の
なかに
取り込まれて
居た
なんだったかな
何処だったかな
うちゅうの窪みに
休らって
然るべき場所に確保され
受け留められて
ふんわりと明るみ目覚めた
....
蝉がないている
間接照明に沈む
床のリノリウムは
僕らの小さな願いさえ吸収してしまうのか
フラッシュバックする
ピースサイン
屈託無く笑えた頃の
副作用
ナイトキャップに絡 ....
キーボードの上で
テントウムシが{ルビ触覚=おぐし}を直している
ENTERの右の
7HOMEと8←との間
溝にハマった姿勢だが
寛いでいるようにしか見えない
{引用=どこから とか
....
田舎の
海辺の町は
夏だけ賑わうことの証に
朽ちた郷愁を見せる
古びた町並みは
時代に忘れ去られ
潮風にさらされて
風化した屋根が
陽炎のように歪む
人も少ない真っ青 ....
君と共
夏の午後
暑い外
避けて此処
エアコンに
かくまわれ
君と飲む
冷たさを
僕だけが
覚えてる
夏の午後
暑い部屋
溶けかけた
氷たち
カラカラン
....
三つ編みの中に隠したボタンは
あなたの制服の二番目だった
ネズミにかじられたりしないように
私は一等席を用意した
黒いおさげが光の加減で
緑になるのを気に入っている
重たい髪が ....
あの日僕らは
夏をいっぱいに浴びながら歩いていた
中空を惑星のようにめぐる虹色の夏の果実を
気ままにもぎとっては
かじりながら歩いていた
ふと蝉の声が途絶えたとき
目の前に幕があらわれた
....
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