亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音 ....
波打ちぎわに
光る、{ルビ蟹=かに}
蟹をみていた、飴色の
もう、よしてしまおう
人間なんて、よしてしまおう
かえるところがあるのならば、それでいい)
お葬式
カラスが黒く はばたいて
おひとりですか、と
月へ笑う
いいえ
あたしは迷子です、と
黒く燃える
火へ手紙を焼べた
....
ときめかせて
はなびらを解き放ち
冬別れの樹、予感
北風までもが人肌の温度
その飛ばす先の青空
気まぐれな季節は
いつも、ふいに帰ってくる
季節のない海の深みに
還っていくその前に ....
−1−
徒らに笑おう
僕らが苦心して果たそうとした事は
どうやら徒労に終るようだから
中味の無い箱が産業道路を溢れ
空疎な前向きの歌がチューブを溢れ
考える事をしなくなったひとたちが
....
目を閉じて
そっと目を閉じて欲しいのです
まぶたの裏に感じるものは
やわらかな陽の光り
それとも七色の虹のきらめき
じっとしていると
風のささやきも聞こえるでしょう
あなたの美し ....
折りたたまれてゆく季節は
いつか振り返れば
一瞬なのかもしれない
湧きいずる水におされて
いま
雲母のいちまいが
なめらかに遠ざかる
使いきれなかったノートの白さ
描ききれなか ....
干乾びた小動物の
骨を拾って土に埋めた
湿った赤土の上を
ゴム製の靴底で踏みしめたから
今度生まれてくる時は
強い動物になるのだと思い込んで
きつく きつく 手を合わす
仕来たりなど ....
あの女房殿は
鶴なんかじゃ無かったのですよ
『夕鶴異聞』
そうですね
去年の秋からだったですかね
巷で有名な
『鶴女房』が来たのは
ええ
見事な反物でございましたよ ....
仄白く明けてゆく空と
暦の眠りから覚めた蕾が
共鳴して
三月の和音を弾く
冬を忘れた陽射しは甘く
僅かに紅を挿した絹の切れ端に
はなびら、の名を与える
こころにある哀しみや空洞を ....
視線の低い僕に繋がれた
のんびり足先まで溶け出す夕暮れと
女の子の目は右に左にゆれだすのが
振り子みたいだと僕は思ったり
たとえばあの踏切の手前に出来ていた
水溜りが死刑囚をモチーフにした絵 ....
ぼくが笑っていればきみもいつか笑う。
だから今夜は、
地球照。
ひときわ明るく笑って、
翳る。
隠してる。
きみの裸月が見たい。
....
傘のほね
しずく垂れるさきっぽ
ぼうっと煙るような空を
みていた
置き忘れた想い
片手いっぱい
こぼさないように抱えたまま
見つからない答えを
いつまで待つの
むらさきの花が ....
午前十時
午前十時過ぎの
屋上でひとり 夢を見てる
螺旋階段を
上るきみ
をそっ と見つめていた
代わるがわる色を映す
水 たまりの空みたいに
流れているようで
留まって ....
砂時計という名の{ルビ幽閉=ゆうへい}を描くべき色彩に迷い、
指先ひとつで幾度も幾度も
流れをもてあそんで
みる
(ここは、アトリエ・スロウ
(時の許しに並ぶ場所
....
やさしさもみんな抜け落ちて
そいつはセーヌの流れに消えた
キリストマリアを引っかいて
破れた爪で十字を切った
....
どこかで聴いたことのある歌
その旋律が 流れてくる
思い出せない
歌の名前
思い出せない
記憶の糸が絡まっている
それでも
どこかで聴いたことがある
それは確かなのだが
思い出せ ....
雨上がりの高尾山
散策の一行は
山を愛するおばちゃんのガイドに
耳を傾けながら
濡れた山道を往く
ある者は
ひとすじの細い茎の上に
寄り添い
束ねられた家族のよう咲く
....
だまし続けて欲しかった、というのはバーブ佐竹の「女心の唄」(作詩:山北由希夫 作曲:吉田矢健治 )の一節だけれども現代詩フォーラムの参加者の中でこんな歌を知ってる奴のほうが少ないことはいかな世情に疎い ....
泥を かわして
かわして また 泥
すきだとか きらいだとか
そんな難しいことは あとからになさい
もっと ずっと あとからになさい
余裕がでるまで 待ちなさい
陽をあびて ....
鏡がふいに斜めを向き
部屋のすみが溶けて明るい
鏡のなかには無色の柱
扉の前には銀の曇
銀はひとり歩き出し
窓を向いては立ちどまる
たたんたたん たたんたたん
素足の ....
折れた枯れ枝に添ったまま
消えていく水時計を持つ土色の葉
陽射しを後にした地の床への風くぐり
通りの方から聴こえる小声
渓谷は乾き こぼれた石
切れた羽に 埋め込まれ
飛ぶ ....
喉が渇いたので
駅のホームのキオスクで買った
「苺ミルク」の蓋にストローを差し
口に{ルビ銜=くわ}えて吸っていると
隣に座る
野球帽にジャージ姿のおじさんが
じぃ〜っとこ ....
「私は何も言いたくない」という言葉が孕んでいる事態について考察してみよう。そうすると人は「言いたくなければ言わなければいいだけじゃない」と言われるかもしれない。しかし、事態はそう単純ではない。
例え ....
たくさんの花を枯らした
サボテンやアロエも枯らしたし
ケフィアやカスピ海ヨーグルトも駄目にした
それでも命は大切にしなければならないからと
小さな虫はその形や色が嫌いでも
なるべく殺さず ....
黒スグリ
雑木林の妖精
えもいわれぬ
腋の下
短い短い
夏の夜
こんな時間に
やって来て
いったいぜんたい
どういうお積もり?
そんな問い掛けに
お構いなしの妖精 ....
人はなぜ詩を書くのだろうか。
「詩を書くのに理由なんてない、書きたいから書くのだ」
まさにその通りである。詩を書くのに理由はいらない。
じゃあ、人は何を「詩」に書き込むのだろうか?と問うと、答え ....
二日遅れのホワイトデーの
白いリボンを髪にのせて
ふわりと回ってみせる君は
大きくなったら
メイドになりたい
という
人様に奉仕したいとは
見あげた心がけだ
と
解釈は準備してお ....
詩は売れない。と言う人がいる。詩で収入を得ることは簡単だ。はっきり言って詩は絶滅危惧種だ。競争相手がいない。なのに誰も市場に参入しない。詩は絶滅しない生命力を持ち合わせている。
なぜ詩は絶滅しないの ....
{ルビ鈍色=にびいろ}の鉄を見ている
あくまで照り返しでしかない光が
滑って離されて放たれる
今目の前にぎっしりと詰まった木々を越えた
越えてうんざりする
体温よ ....
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