山の子供達 〜高尾山にて〜 
服部 剛

雨上がりの高尾山 
散策の一行は
山を愛するおばちゃんのガイドに 
耳を傾けながら 
濡れた山道を往く 

ある者は 
ひとすじの細い茎の上に
寄り添い
束ねられた家族のよう咲く 
小さいヤマネコノメを
しゃがんでみつめ 

ある者は 
岩を濡らす水を吸おうと 
立ち上がる無数の苔に 
目を見張り

ある者は
川中の大きい石に腰掛け 
ただ せせらぎに耳を澄まし


「 川の魚は
  大雨の前に石を飲みます。
  重い体で川底にもぐり、
  激しい流れから身を守ります。」 

一行の先頭を歩き  
にっこりとガイドを続ける
おばちゃんの 
勇ましい背中の後ろを
ついてゆく

( わたしも石を、飲もう・・・ 
( 日々の川底に、口をつぐんで潜り込み
( 流されぬ者で、あるように。 


振り返ると 
眼下に流れる
川中の踏み石を跳ねる人々
ひとりずつ 
手を取り合いながら 
対岸へと渡っていた 

( 誰もが山のうちにはしゃいで踊る、
( 自然の子供だった。 

開いた雲間から
降りそそぐ日射しに 
濡れた木々の葉はきらめき 

見渡す四方は
立ち昇るもやに覆われ  
山は、呼吸をしていた。





自由詩 山の子供達 〜高尾山にて〜  Copyright 服部 剛 2007-03-26 20:47:04
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