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カモメが鳴いている。ゲームボーイが発するエイトビットの効果音に似ている。ぼくらのあらゆる体液を染み込ませたエロ本だらけのこの廃小屋が、蒸し暑い潮風を吸ってさらに膨張している。ぼくはかげろうの中にいる ....
子どもたちの語彙が拙いから。
とんぼ
だけど
車
高いビル
飛行機
ねこ
ぬれてる
もうツバキが、
だって
ともだち
晴れ
寒い
/ぼくらの/聞こえないうた/呼ばないで
....
次の駅まで5分25秒
話した
他愛もないことたち
人見知りのあなたと
人見知りのわたしの人生が
はじめて交わった
まっすぐに話せないはずの視線が
まんまるな瞳に吸い込まれていく
ね ....
水平線が欲しいと泣いた
混ざらぬふたつが眩しすぎ
泣くしかなかった
空は碧に準じて深すぎて
....
ふぅ〜
誰かのため息が
うなじをくすぐる
振り返ったら
黄色くなった“春”が立っていた
眼は真っ赤に泣きはらし
皮が捲れて鼻水が垂れている
あぁ〜
私はポケットから ....
震災関連番組を見ている
私の背中に
六歳の娘が不意に覆い被さってくる
今朝思い切り叱られて
「ママなんか大嫌い」と
涙を溜めた目で私を睨みつけていた娘が
「ママ、大好き」と言いながら
....
目が疲れたので
書きかけた詩を止めた
いつも そんなことを考えては
暮れかけた思いの中をさまよう
部屋には 人はいないと気づく
誰の影もなく夕暮れが光を落とす
体が駄目になった ....
私はモノに名前などはつけない
自転車や楽器など愛すべきモノたちへ
名前をつけてはいつくしむ人たちに対して
嫌悪感ほどは抱かないがむず痒くなる
しかし私は毎日牛乳を飲むときや
....
忘れてしまえるということは
すばらしいことだとおもう
今日のことも
だれかのことも
わすれながらいきてゆく
わすれられないことを
すこしづつ手放して
花が咲くように
花がちるよ ....
えんぴつが折れるまで憧れを書き続けていた
まっくろい手のひらに重さはほとんどなくて
誰かがのせてくれた飴玉の部分だけひりひりしているようだ
信号がかわるたびに思い出を切り売りしているみたい
待 ....
よく晴れたからお散歩に行ったよ新宿に
気持いいから君も誘ってあげようと思ったけど
五丁目まで行ったところで日が暮れてしまった
靖国通りは駐車タワーを過ぎると途端に郊外じみて
人影の絶えた街は芒 ....
130314
まずはおめでとう
年度末は
がんばったねぇと
誰かが祝杯を挙げる声もして
今日も花霞の空が続く
花と空と地との境目も無くなって
夢のような ....
大概の病気は
自己管理の問題だろうよ
成人病だけ
あんたダメだねえ的な
言われ方ってのが
気に入らねえんだ
俺だって
好きで寝る前に
黒糖かりんとう
一袋全部
食ってるわけじゃねえ ....
人生は悲しみと擦れ違いの連続だ
ただ時折その隙間にしあわせが隠れていることもある
また同様に戦争と戦争の
隙間にしか平和は存在していないんだけれど
だからひとはそれをこころのどこかで信 ....
耕運機のように
ゆっくりと掘り返し積み重ね進んでいれば
あなたが悲しいとき
ぼくも悲しみ
疲れ
あなたの思うぼくになれたのかも知れない
でもぼくは耕運機じゃなかった ....
キリンが首を伸ばして
夜空の星を食べていた
星がなくならないように
父は星をつくった
どうしてキリンが星を食べるのか
なんて関係なかった
父はただ星をつくった
やがてキ ....
いつもたくさんの洗濯物で
満艦飾に彩られていた庭が
屈強な男どもに踏み荒らされていく
六畳間に上がりこんだ現場監督は
うち捨てられていた円卓を
作業靴の足でガンガン ....
「準備中」看板ガチコン音も高くさしこめば
なんだこれ風はいつもよりも強く激しく午前四時
ガードレールの交通安全幟ばたたたた
何だってそんな風がひょうひゅう
どうしたって高ぶら ....
玄関であなたの手を握り
じっと、見つめて「じゃあね」って
言う。
そとは風で荒れ
そらはひっくり返ろうとしている。
世界は脱皮をしようとしている。
脱皮する春の皮膚へ
あなたを見 ....
ははーん 友達減らす作戦決行中だな
ぼくは冥王星の隕石です
神のいたずらで地球に落ちたみたいなんです
見るもの聞くもの触るものみんなみんなめずらしくて
キョロキョロ目をまわして暮らしています
空をみて ぼくの星を ....
人に思い残すこともなく
疲れた
連ねる文字もなく
僕は 鉛筆を 握っていた
やがて時間が流れ
明日から逃げだした 体は
死んだ
白い灰に変わった
暗がりの映画館で
白黒のスクリーンには
だぶだぶの燕尾服に
しるくはっとのチャップリン
ふらりと現れた酔っ払いと
ふとしたことから口論になり
胸ぐらつかみ、胸押しあい、もつれ ....
巨大な風車の影が
枯れた笹原と採石場と
牛舎の上を繰り返し通り過ぎて行く
くねくねと形を歪めながら
くねくねと
大地の歪みをなぞり
絶え間なく地を這う影は
まるでコトバ
人の心 ....
季節の足跡が白い凍土となり
剥がれた絵の具のように
海鳴りが景色に仕方なく張り付いている
此処には君はいない
それでも此処は君のいた場所
今日君はい ....
単純なことほど難しく
複雑なことは解らない
無器用なことを言い訳にしながら
いま退屈が僕を殺そうとする
出来ることと出来ないことの境目には
いつも壁があるから
仕方なく ....
今日僕は何をしていたのかを考える
多分 青山の暗がりのどこかをさまよっていたのだろう
人と笑いあえるひと時を探し
煉瓦の壁を見つめ 考えた
だけど僕の思う理想が叶えられるわけでもな ....
130312
厳しい経営の曲面を乗り越えられるか
「銚電のぬれ煎餅」(登録商標)で
やっと電車を走らせてきた
名物を焼いてやっと凌いでいたのに・・・
....
スタートラインはみな一緒だった
だけど長く厳しい走破の途はそれぞれ
舗装された途を走るもの
獣道を注意深く走るもの
畦道を田圃に落ちないように走るもの
砂利道を痛みに耐えながら裸足で走る ....
そのあと
泣きながら話したこと
そのあと
青い空に憧れたこと
そのあと
たんぽぽの綿毛が優しかったこと
きみが傍にいたこと
本のあいだにしまい込んだきもちのこと
故郷という ....
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