すべてのおすすめ
やわらかく包む結び目のすき間から
ほんのりと匂いくるりんごのまるみ
そんなことば
太陽を溶かした夜を柄杓からグラス
唇から四肢へと移す食卓の綺羅
そんなことば
まな板を叩く音
単 ....
ここがどこなのか
どうやってここに来たのか
わからない場所で
思う
花が花であったこと
風が風であったこと
今ここに
花かどうかわからないものが
咲いていて
風かどうかわからない ....
くしゃくしゃに
丸める明日は
色をわすれた今日
あの日の
これからの
漆黒にかがやく
まぼろし
くしゃくしゃの
わたしの
こころの
からだの
すべての
ながれていった瞳 ....
いつも行くはずの近道は薄明を終えて神社の鳥居の脇を吹き抜ける
平坦な午後に並ぶ学生たちが少しのやすみを記憶するとき
みちゆきは確かに真新しいスーツを纏い 大きめの制服を着て
まばゆいほどキ ....
静謐の夜を穿つ
透明な明滅は
哀しみの在り処を指示し
沸き立ち、立ち消え
律動する
冷える夜底をひっそりと
移動していく影
背景に流れ
根なし草の寂寥と
一握の希望を落とし込み
....
夜の廊下に
落ちている声
踏まずに歩けば
聞こえくる声
思い出せない
幸せな音
思い出せないまま
そこに在る
遠のく雷 遠のく虹
遠のく空 空
営み ....
二〇一八年十月一日 「楽しくくたばれ!」
楽しくくたばれ!
二〇一八年十月二日 「断片」
ぼくは何も言わなかった。ひと言も口にすることができなかった。何
を、どう言 ....
笑うに笑えない
涙の
クリスマスプレゼント
できるなら
粉々に砕いてしまいたかった
ターコイズブルーの
恋のかけら
その一粒が
こころの隅に残って
チクリと痛む
....
たすけあい
ささえあい
かなしみあい
よろこびあい
そんなふうに
まいにちをすごしたい
こんないまだから
そんないまだからこそ
すこしのへんかをきたいして
だれ ....
静かな潮の満ち干きが
袂に隠し持つ黒い手帖に蒼い譜面を奏でる
陽炎の傷痕に海月の脚が優しく絡み
波打つ水面に蓋然性の円を結んだ午前零時の次元の窪み
深呼吸は沈む胸の最奥に聳える鍾乳石となり ....
コロナ
コロナる
コロナれ
コロナれば
コロナります
コロナる時
コロナろう
コロナった
コロナるまい
令和3年の地球はコロナ禍で窮屈
コロナウィルスはヘンタイす ....
{引用=*}
せり上がった斜面から景色は傾れなかった
すっかり土色になって個を失くしつつある
落葉の層の乾いた軽さ 熊笹の有刺鉄線
汚れた雪がところどころ融け残っている
眼は狐のように辺りを ....
ふるさとを後にして
私たちはやって来た
この足場を切断された
途方もない寂寥
ふってはわき、ふってはわき
緑の芝生にいつしか立って
思い思いに踊っている
私たちはさみしいのだ
....
「長生きしたいと
思うことは自由だが
それを叶えるために
他人の気持ち良さに犠牲を強いるのは
死に値するほどの重罪だ」
これは私の敬愛する
ニューヨークのユダヤ系詩人
ジョージ・ゴー ....
爪が伸びて伸びて
あなたの心臓の奥まで届いたら
あたしなんでもあんたにあげるよ
なんでもしてあげるから
欲しいものがあったら先に言ってよ
でもね
あたしの唇だけは
決めた男が ....
武器を背負って駅の改札をでたら
街は暗くなってた
電飾の看板に吸い寄せられて
地下の酒場に入ると
店内はカビ臭い匂いがした
隠微な空気の中に
淫靡な雰囲気のHostessがあらわれて
....
おぼつかない
おちつかない
しっくりこないというか
納得いかないというか
地が足に着いていないというか
気持ちがふんわりと宙に浮かんだままのような
決して悪い気がしているわけではないのだけ ....
世界の厳かが露わになるこの夕べ
わたしは静かに此処に留まり
在るものすべてに身を委ねる
まるで人生の鍵を手に入れたかのように
在るもの在るもの輪郭鮮やかな世界が
おもむろに眼前に広 ....
年に一回誕生日がくる
必ずきて年を重ねる
子供の頃は
早く大人になりたかった
大人の今は若くいたい思う
誕生日を祝ってくれる
たくさんの仲間がいる
照れ臭いけれど
嬉しいが ....
午前中の四時間授業が終わり帰途に着く
ランドセルが左右に揺れる
昼食のインスタントラーメンを啜る横で爺さんが大江戸捜査網の再放送を観ている
隠密同心 心得の条の辺りで体が左右に揺れ始める
麺を ....
輪のカードを読む
望んだことのない種類のやさしさをまえに
わたしは この ふるえが、
なぜなのかわからない
ふるえ、読む
輪のカードに
望んだことのない
種類の
やさしさに
....
下を向いていよう
誰にも見られないように
下を向いていよう
見失わないように
下を向いていよう
陽射しに負けないように
下を向いていよう
風に吹かれないように
下を向いていよう
穴に ....
冬のへその緒が春に巻きついて夏が死産した。父からの電話はそんな内容だった、ぼくは耳を疑った、それはミミが何かを画策したからに違いないと、ミミは実家の隣に住んでいる島崎さんちで飼われている九官鳥の名前だ ....
余った包皮を
上野クリニックから
入手したら
先ずチンカス等の汚れを
十分に取り除いて
熱湯で二時間茹でます
その際灰汁が大量に出ますので
しっかりと取ります
茹で上がったら少し
透 ....
海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている
降り始める雨
降り始める雨
にびいろを打ち
にびいろに渦巻き
(今頃何処かの街角で
産まれ落ちる子の ....
一面銀になびく草の原を
未明の馬が駆けてゆく
どこからどこへ駆けてゆくのか
ほこらかな そして不思議にしずかな躍動で
一面銀になびく草の原を
駆けてゆく未明の馬は
そうだ きっと
....
お詫びだー
お詫びはどうしたー
本来なら菓子折りを持って
詫びに来ねばならぬところ
もちろん誰も来ない
いいんです
そんなとき
菩薩の心に
なることなんです
人の限界を知る
....
みなみ風を意識して
あなたのいない
空は高いですか
若いころの才能は
ライバルをつぶす
ことでしたか
年老いた権力者は
弱い者いじめが
好きでしたか
本当にいる暗 ....
二〇一八年九月一日 「葉山美玖さん」
葉山美玖さんから、小説『籠の鳥 JAILBIRD』を送っていただいた。クリニックに通う女の子の成長物語だ。会話部分が多くて、さいきん余白の少ない目詰ま ....
ようやく畑にたどり着いた
遠くを見て佇む案山子ひとり
腕はだらりと垂れている
そばへ歩いてゆくと
帽子を取ってお辞儀をしてくれた
私もお辞儀をする
顔を上げると案山子は
帽子を持って ....
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