普通の人のように
屈託なく笑おう
普通の人のように
チャーハンを食べよう
普通の人のように
洗車をしよう
普通の人のように
スポーツを楽しもう
普通の人のように
善いことをしよう
....
わたしはこれから
目を覚ますから
あなたはカップを出しておいて
コーヒー豆は冷蔵庫、
ナッツ・ケーキは戸棚のうえに
泣いてるうさぎにベッドを貸して
手をつないで坂を下ろう
....
あなたのそのひかりさえも数にされてしまう
あなたのそのこどくさえも数にされてしまう
あなたのそのえがおさえも数にされてしまう
あなたのそのことばさえも数にされてしまう
あなたのそのこころさえも ....
朝 丘珠空港へ迎えに行く
プロペラ機は八月の空をけたたましく滑り降り
ゲートをくぐる人々は無事届けられた
天からのギフトのように
トランクとリュックを下げた若者を見つけ
片言みたいに 荷物を ....
昨日百万円を拾った
この百万円で自分の人生が少し変わると思ったら
少し怖くなった
そのお金がうにょうにょ動いて絡みついてくる蛇のように見えて
とっさに投げ捨ててしまった
....
ゆめからさめて
手を伸ばす
爪にとまった蜉蝣
掃除機をかける音 かすか遠く
木馬が揺れて
ベビーベッドに霜がおりる
目の前で
硝子のつぶが揺れる揺れる
「あ」と「 ....
海辺に打ち上げられたクラゲを見ましたね
巨人のコンタクトレンズと言うので
笑いました
疲れて適当に入った居酒屋で
出てきた器がどれも美しいので
しばらくおとなしくなった私たち
でした
....
うんざりする程のルールには
もう疲れたわ
今夜はこれでおしまい
ノイズのベッドに
レタスとトマトを乗せて下さい
ほっといて
探さないで
アタシを
検索しないで
hamburg ....
この世でいちばん明るいのは
夜の屋根の
いなびかり
そのあとを
追いかけてくる音は
おそろしいけど、と
小さな人がいう
ならば耳をふさいでごらん
あてがえば
柔らかな手の ....
カーテンの向こう暑くなると告げて
にわかに泣きだすそら
も
すぐに澄み
そこなしの青の静けさへ
置き忘れられた幾筋かの羽毛は
朝へと生まれ落ちた夢たちの骸
季節の手妻は継目も見せず
ゆ ....
五線譜にのらない音楽
数学的解決を持たない生命
リズムもない詠唱
楽器を持たない自由
空から降りてくる精霊にキッスをして
それでも抒情は余ってしまって腐る
どこにも幸運な人間な ....
その蝉はホログラムだよ明智くん
私は中古品
でも 走れたらいい
ライトもLEDじゃなく 豆電球の橙色
それでも 三メートル先 見えたらいい
けれど五メートル先の人に
私の足は切り刻まれ もう走れなくなりました ....
ノイズが大好きです
古びたアルミ鍋の底とかを
フォークでひっ掻くと
眼球に
剃刀で筋を入れられたような
感触がキッチン中に響き渡るの
きいぃぃぃぃぃぃぃぃ
っての
好きなんです ....
いつのまにか夜だけがふけてゆくが
僕の朝はいつまでたっても来ない
時間の止まったままの時計をぼんやりと眺め
時系列のなかの無限の選択肢に思いを馳せる
ものごとを整理するには基準が必要だ ....
人形も関節から
壊れてゆく、ら
しい。継ぎ目は
いつだって弱い
場所だからね。
かつてあなたが
若かった頃、肘
も、膝も、首も
指の中に取り付
けられた小さな
関節たちも、み
な ....
引き寄せて歌の精よ耳元に
オンとイのほつれ目
楼蘭の砂から掘り起こされた女の髪のよう
忘れられたイトが絡まった
黴臭い沈黙から ふと
夜は陽炎のようにゆらめき立って
歪み捻じれたこの道を筆 ....
聴こえる
プレス機が上下する度
ボルトとナットで繋ぐために
穴を空けられる度に
聴こえる
ごおん
ごおん
ぐぉり
ぐぉり
きゅるるるるるるる
換気の行き届いていない
暗く狭い工場 ....
爆笑動画botみたいなとこで駅で暴れた男の人を駅員5,6人で押さえ込む映像が貼られていた
笑えなかった
おっさんがなぜ叫んでいたかの文脈は途切れていてわからないし
ともかく屈強なホモ ....
抱えきれないものが
多すぎるだろう
苦しいのにまだ生きるの?
生きたいわけじゃない
ただ 死ぬことに
この世から旅立つことに
意味を見出せていない
挫折したり
迷ったりしている ....
謀反をはたらいた廉で
切腹を命じられたことがある
と聞いたので
話の穂をついで
それはさぞかし痛かったでしょう
どんな様子でしたか
と訊ねると
氷のように冷たい刃が腸をかすめて
あまり ....
嘘か猫のようであろうとして
そのどちらにも失敗してしまった
こうなってしまってはもう
人さらいになるしかないと
人さらいの家に教えを請いに来たのだが
玄関から庭まですうすうと
透明な空気が ....
正しいことを君にあげたい
君が
社会に出て気づくこと
世界は
二者択一の連続で
君はほどなく気づくだろう
公平もない
絶対もない
すべてが
相対性の世の中
だが
ほんの短 ....
重苦しい眠りから覚めた朝
洗面器に映る顔
あの人に見せてしまった怒り顔
見られてしまった すまし顔
水に歪んだ 顔の目が
今日のしたり顔を笑っている
手の平で ....
言葉をのせた彼女の声とか
言葉にならない彼の声とか
全部まだ誰かの耳をすり抜けて
誰かの真ん中まで届く予定のある
そこは人間の、あたたかい、血なまぐさい
飛び交う声はほぼそこへおさま ....
糸杉の並んだ道
夏のただ中だった
一歩歩くごとに
汗は蒸発していき
肌に残されたものは
べとつくだけの塩辛さだった
暑さのあまり
蝉の声さえ途絶えた
世界には
わたしとあなたしか ....
たいようがうしろからぼくをてらしかげをふんであるく
しんぞうがとまりそうになるくらいきみがすきだ
じんせいのおわりからぼくをならべいんをふんでしのぐ
ないぞうがひっくりかえっても ....
空いた穴を塞ぎたいって
ドーナツを目に当てた
この穴が塞げるのなら
きっと私の体も治るのだ
数値の異常を告げる紙を
飛行機にして飛ばした
あっという間に墜落して
車に轢かれて
赤い ....
夏はなんだかすごくさびしかった。これまではそんなことはないのに。さびしくなるのは冬か秋か春と相場が決まっている。
いろんなものが取れかけているわたしは、また色々のことを思い出す。思い出したり、考 ....
夏の終わり
などと書き出して
景色を眺めまわし
残りの年月を数え切れたかのように
何もせず
何も求めず
人に倦み
風の仕草を見つめては
瞑り
欹て
ぼんやりとまた開き
終わる夏 ....
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