裸眼散歩
葉月 祐

星も見えない
月も無い
私を照らすのは
切れかかった街灯だけ

目を細めながら
ぼやけた夜を焼き付ける

何も無い訳じゃない
手の平の中に
あの日の言葉と
光が残っている

届けきれない言葉のもどかしさや
持て余した感情の行き先を
どこにも放り投げる事が出来ない
夜道を進めば進む程に

このあきらめの悪さをどうか笑わないでほしい
ザリッと足音を鳴らして私は夜を見上げる

星も見えない
月も無い
ぼんやりと見える雲に
道路の上を走る冷たい風

腰にまいていた
カーディガンを羽織り
再び歩き始めながら 考える

いつの日も
明日雨に打たれたとしても
そこにあるのは
悲しみばかりではない事を
忘れてはいけない


街灯が点いては消え、また点いて
その度に私の輪郭も
浮かんでは 消え また現れる

それを見つめている私を
雨臭い風がそっと濡らしていく
明日は雨だろうか
それでも構わない


夜を駆け抜ける風の音
カーディガン越しの冷たさ
なびく髪が少しだけ
重たさを増している

滲む視界に苦労しながら
家までの直線道路を歩いた







自由詩 裸眼散歩 Copyright 葉月 祐 2016-08-28 22:55:18
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