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生はうたた寝の夢
死は深い眠りに落ちること
起床ラッパで墓から出でる
そうでないならそれもまたよし


 辻に立つ風
  霧雨をまとい

 枝をくぐった
  ツグミの声に

  ....
壊れた天秤が地平の距離を金色に燃やすころ
符号の片割れにされたうさぎは橋から飛び降りた
もの事が売り買いされていた
のたうつ悲鳴が
脚を生やして時間からの逃亡をはかる
そんな一日との組体操に ....
{引用=鬱蒼}
鉈で枝をはらう
雑木林に入口をつくる
入ったからといってなにもない
暗く鬱蒼としたそこに
誰を招くわけでもないが
時おりもの好きな通行人が
ちょっと覗いては去ってゆく
 ....
わたしは太陽を取り出した
黒アゲハで覆われた
生まれる前の静かな光を
誰かのノートの上で風が踊っていた
人の総体としての手その指の間からこぼれ落ちて
地図上にはなにもない
埋もれた時の痛点 ....
露にたわんだ蜘蛛の巣を吐息まじりの言葉でゆらす

肺の風琴 あばらの木琴
こころの洞に張られた弦に
触れるようで触れないような
白い蝶がふわふわと

先細る意識の果てに向日葵の燃えさかる ....
{引用=水辺の仮庵}
月は閉じ
口琴の瞑る仕草に川の声
白むように羽ばたく肌の{ルビ音=ね}の
ふくらみこぼれる光は隠れ
ふれて乱れたこころの火の香
探る手をとり結んだ息に
ふりつむ{ル ....
{引用=冬の髪の匂い}
雪の横顔には陰影がある
鳥は光の罠に気付かずに
恐れつつ魅せられる
歌声はとけて微かな塵
雪はいつも瞑ったまま
推し測れない沈黙は沈黙のまま
やがてとけ
かつて ....
{引用=声の肖像}
どこかで子どもの声がする
鈴を付けた猫がするような
屈託のないわがままで
なにもねだらず行ってしまう

風がすまして差し出した
果実は掌で綿毛に変わる
ぱっと散った ....
寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた

蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか

四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
 ....
休日は地獄耳
落下する電車の静けさ
天井からぶら下がっている
こめかみの光 カミキリの声
傾斜し続ける 声の影
ぶどう酒色に濁った季節
腕をひねり上げる
  自由――自己への暴力

 ....
{引用=胡桃の中身}
感覚と本能の間
奇妙な衣装で寸劇を繰り返す二人
台詞を当てるのは
土台無理なのだ
虎はいつだって喰いたい
馬はいつだって逃げたい
やがて波打ち際
血まみれの馬は海 ....
{引用=忍路・蘭島}
翡翠と書いてカワセミと読む
そんな宝石が飛び去る刹那の後姿を
有難い気持ちで見送った

3500年前の環状列石は
見かけも手触りもありふれた石
そりゃあそうだろう
 ....
泣きぬらしたガラス
とり乱す樹木
細く引きよせて
下着の中へ誘いこむ
風とむつみ合い
あお向けに沈んでゆく
せせらぎも微かな
時の河底
陰影に食まれながら


缶ビールを開けて
 ....
{引用=土に還らず}
木洩れ日のゆりかごに
干乾びた夢ひとつ
蟻に運ばれることもなく
ペン先でつついても
カサコソ鳴るだけの

蝉よりも見劣りする
透けた単純構造から
ふと零れる輝き ....
{引用=夕涼み}
薄暗がりがそっと首を絞め
あなたは鬼灯を見た
決して強くはない抱擁で
皮膚一枚を越えられず
互いの頬に帰依するように
自分の愛と思える部位を自分で弄って
記憶に補正され ....
{引用=飾り物}
沢山の飾り物を付けて
自分がひとつの飾り物のように
時代の吊革にぶら下がっていた
円環するはずの路線が
少しずつ内へと傾いて
渦を巻き やがて
凝り固まった闇
終着点 ....
{引用=微風}
うすくなった髪をそっと撫で
朝の風は水色の羽ばたき
幼い接吻
この目が見えなくなっても
耳の底が抜け
全ての言葉が虚しく素通りし
鳥の声すら忘れてしまっても
変わらずに ....
{引用=どうしようもないこと}
絶望を綴ることに何の意味があろう
だが綴ることで絶望は虚構に変わり
また綴ることで希望すら捏造し得るのだ
詩は演劇性を持つ  
演劇は祭儀であり呪術である
 ....
猫のように見上げる
空のまだらを
鳥に擬態した
ひとつの叫びが
紙のように顔もなく
虚空をかきむしる

骨の海から引き揚げた
もつれた糸のかたまりを
自分の鼓膜にしか響かない声を持つ ....
アンテナの上
カラスがめずらしく寒そうだ
度を越した愛撫
風だけがご満悦
抗いながらも抗えず
樹々もさんざん掻き毟られる
その有り様を見て見ぬふり
家々の窓はぬらっと景色を滑らせる
― ....
静けさでいっぱいの部屋
その中心は何処かと
へその尾や砂時計
そんなくびれで繋がって
むやみに染み出して来る
圧力 その張力
部屋は膨らみ丸みを帯びて
閃輝暗点 歪んだステンドグラス 
 ....
{引用=不実日和}
声は裂ける傘のよう
いつかの夏を絞りながら
蜜蜂の愛撫に
義眼を転がして
女の雨脚は
蜥蜴たちの抱擁をほどく
鞄の中で犯された
天使の羽根が舞う丘
青い爪を持たな ....
{引用=週末}
雨はガラス越しの樹木を油絵に似せ
開きかけた梅を涙でいっぱいにする

雨は河住まいのかもめを寡黙にし
水面の泡沫は作り笑いに変わる

だが雨は歌っている 
運命のように ....
{引用=焼香}
{ルビ鶫=つぐみ}を威嚇する
{ルビ鵯=ひよどり}の
声は形より
広々とこまやかに
震えた
春の微粒子
住宅地の雪解け水を
長靴で測り
黒いコートに受ける
日差しを ....
{引用=散策思索}
イモリの仔の孵る日差しを思いながら
心当たりのない手首の痛みを弄ぶ
晴れた寒い昼下がり
氷結した河口の端を恐る恐る渡って行く
至る所に鳥や狐の足跡
人のはひとつだけ
 ....
{引用=愛憎喜劇}
遮二無二愛そうと
血の一滴まで搾り出し
甲斐もなく 疲れ果て
熱愛と憎悪
振子は大きく揺れ始める

愛も親切も笊で受け
悪びれることのない者
理解できずに困惑する ....
真っ逆さまの光の頂
 集めた八重歯を笊で濯いで
女は大きなアサガオの
   白い蛾に似た花を吸う
小さな蜘蛛が内腿の
      汗の雫に酔っている


生木の煙 風の筆
飛び交う無 ....
{引用=冬の朝顔}
白い背表紙の本を開くと朝顔の種が落ちて来た
種は発芽して瞬く間にわたしの妄想に絡みつき
ひとりの女の形を編み上げると濃淡を宿す紫や白
水色やピンクの花を幾つも付けたのだ
 ....
{引用=生者と死者}
安全地帯の植え込みで
ラベンダーは身を縮める
風花の中
一株一株寄り添うように

周囲には細く背の高い
雑草が取り巻いている
枯れ果てた骸骨たち
立ったまま風に ....
{引用=銀杏一葉}
フロントガラスのワイパーの圏外
張り付いた銀杏一葉
冬の薄幸な日差しに葉脈を透かして

用途を終えて捨てられた
ひとひらの末端 美しい標本
飛び立つことはないはずなの ....
Lucyさんのただのみきやさんおすすめリスト(529)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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