父さん、殴れ
瓶がばかばか落ちている
どろっとした内容物は
ふくらんでいる
覗き込んでは
ぱんと破裂する
太鼓をたたく
父さん、殴れ
棒がぼろぼろ落ちている
虫がたくさん食っている
....
駅前の公園で
大人になることをまだ知らない僕は
彼女の帰りを待つ友達のふかした
煙草の煙を吸い込んで
萎れた茎のような心を直視してしまう
どうしようもないから
雲の多い夜空を見上げた
そ ....
かつて潔く閉じた手紙は風を巡り
伏せられていた暦が息吹きはじめている
朽ちた扉を貫く光は
草の海を素足で歩く確かさで
白紙のページに文字を刻みはじめ
陽炎が去った午後に、わたし ....
阿久悠が死んだという話が
その日の俺には一番の大事件だったのだが
彼女にはそうでもなかったらしく
朝のコーヒーはインスタントだった
そういえば今日だけじゃなくて
毎日インスタントなのだがそれ ....
シオリちゃんは わたしを見つけるといつも
はじめまして、と言う
わたしも はじめまして、と言う
たくさんいっしょに遊んでも
次の日には わたしのことを覚えていない
でもシオリち ....
私たちは互いを必要としながら
それぞれの場所で夕陽を眺め
明日の湿度を欲しがり飲み込む振りをする
あなたと私は
埋もれてしまったいつかの夏に
栞を置いたままかもしれない
そ ....
ある日
贈り物をしようと出掛けた
セーターを買いに行き
サイズを聞かれた
わたしは答えられない
靴屋に行き
やはりサイズを聞かれ
答えられない
ネクタイを買いに行って
好みの ....
女にふられたけれど、
もうすべて失いついでに失っても、
恥をしのんで生きようと思った。
だから友よ。
きみも死ぬな。
俺はもう歌わない。
もううたううたはない。
夏は終わった。
三年前 ....
音楽室の
Yちゃんの真新しい椅子の後ろに
Yちゃんの埃を被った椅子
その後ろに
Yちゃんの足が折れた椅子
その後ろに
ばらばらになった
Yちゃんの椅子
その向こうは
床が崩れて
そ ....
冬の寒気が細く伸びて
岬の先のほうへ
鋭く尖っていった
遠くで生まれた赤土の丘が
最後に海へこぼれ落ちていく場所で
わたしの そしてあのひとの
フレアスカートのはためく裾から
なめらかに ....
女にふられたので、
好きで好きでたまらない女にふられたので、
砂漠へ行って死のうと、
そのままとかげとかハゲワシだとかに、
食われてしまおうと、
十月の運動会で俺は考えた。
町内会のかけっ ....
硝子細工の
幾つかの重なりは
小さな風の溜まり場をくるくるとかき混ぜて扉を揺らし
丘に続く小道を夢見るのです
夏が降り
気まぐれな模様を織りなして
あのひとの指に留まった雨粒が私の
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216