小さな舞台に幕が引かれる
けれどそれで終わりではなく
むしろまばらな拍手の後を
どうやって取り繕うか
それが今の問題
この日を闊歩する風が
肋骨の隙間を通り抜けて行く
....
(足音が空に響く)
木枯しの吹く 門の影にひとり
傘を片手に
かんざしをなおし空をぼうっと見つめる
黒髪がしん
と光る寒さに
空はなにもいわず
そのままの形で をんなは立ち
「あ」
....
ぼうたかとび の
しなった 影に
のる
リュックには
ゆで卵と
つまみだされた時の ための
パラレル シュート
たかい たかい
ほら 棒のてっぺんに 両足をつけて
....
あなたのうみにとびこんで
あたしをひろいにきたの
これはぶかぶか
あれはきつきつ
それはこそばゆい
どれならぴったりくるのやら
やわらかい ....
#01
だれかが しんでしまった日を
なぜ 命日 というのでしょうか
きのうは だれかの命日で
たぶん きょうも だれかの命日で
そして あしたもまた だれかの命日です
....
一日に何度も何度も
「わたしのこと好き?」
って聞いちゃうのは
あなたがわたしのことを好きだって
信じているから
だから
しつこいって怒らないでね
もしもあなたの気持ちが
変わるような ....
なみだかわきよきおもいでふりかえる わすれなきようあすにしおりを
{ルビ弘明寺=ぐみょうじ}のもみじ茜の延長で熔けゆく夕日 夜を連れ来る
スペースをあけた言葉のためらいがふわり消えゆく コ ....
終わりそうで
終わらない10月
蹴っ飛ばしたい
嫌味な女に
詰らぬ男
私の背中に
いつも銃を突きつけて
びくついてるお前
誰だ
狭くて不便な環境で
眉間に皴つく ....
砂丘に行けば
明日があるかも知れないと
とぼとぼと足跡を残します、そして
砂を数えたのです
波を数えたのです
灯台の明滅を
数えたのです
星を教えてください
色 ....
おそらが
あんまり
たかく
あおく
すみきってくると
あかいふうせんが
恋しくなる
ふわ
ふわ
ひらりと
風にのり
ひつじの群れを
追い駆けたい
....
田舎から出てきたばかりで
胸膨らます新入生
4月からどこに住むのかな
不動産屋は待ってます
みんなが喜ぶ学生さん
重要事項説明書
ひらひらさせて待ってます
これでもわりと良心的なほうよ
....
降りやまぬ雨
風が吹き
雲が流れている
水の中
流れ流れて
雫が温かい
それは なあに
むこう側に君
こちら側
水の中
たそがれて
....
醜いものを見てしまったので
わたしも醜くなるところだった
気がついてよかった
間違っていなかった
わたしは
帰り道
見えていたのは
あの現場
聞こえていたのは
あの言葉
何 ....
一つ信じたら
一つ青い花が咲きます
しばらく想いをめぐらすと
こんぺいとうのようなその花は
かりんかりんと崩れます
一つ夢みると
一つ青い花が咲きます
何かを始めようとすると ....
洗面台の鏡を傾けたら
小さい流木がころげおちた
どうやら 渦巻くのは小さい海
どこか角度の違う世界へと
つながっているらしい
悟ってはいけないよ、と
こころの母の声がして
そっと指を ....
ぞくぞくするものだから
風邪をひいたように思ったのだけれど
なんだ
背中に離婚届が貼り付いていたのか
ついでだから
その上から婚姻届も貼ってしまおう
少し温かくなるかもしれない
それ ....
雨のなかの長い影から
無数の別れの手が振られる
雨のなかの長い鏡が
雨を映して立ちつくし
幽霊のようにかがやいている
川を歩み 立ちどまり
水紋を見つめつづける光が
....
わたしにゆるされることは手をかさねること
六月の墓地でしゃがみこんで草笛を吹くと
わたしの手はやわらかい土のように
生まれたてのなめらかな手を覆う
(ささやくのはありふれたうたのよ ....
一歩一歩沈む
沈む
さ迷う森のあなたに
黒く湿った土が香り
白日夢の欠けた月が
まあるく青ざめて眠る
白む指先で
鼓動にふれる声が
ふるえて腐蝕へ沈む
をんなは
なぜか黙り ....
しがらみが
やさしくて痛い
振り切ってしまえばいいのに
そうできる青さが欲しい
飛び込む勇気をください
たった一言でいいから
振り切ったら
新しい世界が待っている
知っ ....
待ち合わせに遅れそうな時
メールひとつで済ませてしまう
嘘っぱちの言い訳も
おたがいの顔が見えないから
罪の意識を感じずに誤魔化せる
どこへ行ったか
寂しがり屋の待ちぼうけ
....
ひとしずく
ほほの目方をふやしてく
ひとしずく
夕陽は目方をへらしてく
ぼくらは肯いた
つんと鼻を刺激する
空気の冷たさに驚いた朝
慌てて出したコートには
お気に入りのマフラーが巻かれていて
それは大袈裟かもしれないと
くるりほどけば
ひらり舞い落ちた
枯葉が一枚
....
快楽の先に宿りしこの{ルビ種=いのち}背徳散らすマリア横顔
今君が日々重さ増し腹を蹴るこの不思議さを神秘と呼ぼう
生まれ来る{ルビ児=こ}が娘だと知ってから甘さの増した父になるきみ
....
彩りの木の葉 落ちて行く 季節の空 指の先に飛ぶ鳥 目で追って 木漏れ日は胸の奥 小さく 華 ほころんで
淀川のほとり
息子に川の名を聞かれた
ミシシッピと答えた
みもふたもないはなしである
漱石の夢十夜の第一話
おんなはあっさりと死んで行く
おとこは大きな真珠貝を手にとって
庭に穴を掘り埋葬する
死亡診断書は何処にある
埋葬許可書はもらったか
....
彼の眼は遠くの風景を見る
地平に沈む夕陽の色
冬に砕ける灰色の海
湿地を覆う冷たい霧
彼の耳は遠くの音を聞く
森に降る激しい雨
向こう岸の教会の鐘
鉄橋を越える貨車の響き
....
秋はいいよね
ストーブは焚けない季節だから
おふとんの中
冬のおふとんはあったかすぎるから
パジャマのボタンを外して
背中に手を伸ばし合う
私の胸の脂肪は つぶれて横にはみ出る
私は君の ....
私の中に
深く 深く
埋められたものたちを
日々に 深く
掘り返している
とても
大きな穴が
あく
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