冬の葬列
こしごえ

(足音が空に響く)
木枯しの吹く 門の影にひとり
傘を片手に
かんざしをなおし空をぼうっと見つめる
黒髪がしん
と光る寒さに
空はなにもいわず
そのままの形で をんなは立ち
「あ」
とよぎった薫りに
冬が来たのを知る


映画館内に明かりが灯った
胸の中を足音が近づいてきた
外に出ると
いまにも落ちてきそうな
低く垂れこめた空を見つめた

待っていたのだろうか
この時を
鈍色にびいろの繊細な騒めきに
世界が予感を支配する

寒い
足音は立ち止り
何事か私語ささやいた

「金魚」
傘を忘れた
小雪が黒髪に舞いおりて キスをした





自由詩 冬の葬列 Copyright こしごえ 2005-10-27 15:43:24
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