川縁の草いきれの中を
ひた走った記憶は
あるいは夢かもしれず


はじめは
ひとすじの流れにすぎなかった
けれど運命は
生まれる前から決められていた

旅を重ねるごとに
強さを身 ....
飛び降りたら街道だった
山駕籠を襲って客を突き殺す
駕籠かきは慣れた顔して寄ってきて
分け前を寄こせと言う
知るもんかというと
てんでに杖を構えて挟み打ちにされた
ひとりは払いのけ
残り ....
「ええと…ミスターチャド、くん?」
「いいえ、チャボです。ボクシングの『ボ』…」
「ああ、ぼったくりの『ボ』ね。…実戦経験ありか。どこのプロレス?」
「あのう…正義の、味方です…」
「聞いたこ ....
全てのいろが

変わっていく

はざまで、ふたり

確かな、ぬくもり

感じながら
お祭りを終えた夜のように
まだ熱い頬と首すじ
余計にはじけた夢を見ました

はじけたことだけ覚えてる
色とにおいはこぼれても
はっきりと鼓動が踊ってる

もったいなくて、ね
夢を思い ....
湿った風が吹く朝に
君は薄い火を灯した幹から両手を離す


種の保存の掟は果たせたのだろうか
君の生き方は純粋で幸せだったのだろうか
最後は雲の切れ目から青空が見えたのだろうか


 ....
燭台にともされたろうそくの炎が
一点の曇りもない銀のナイフとフォークに
照り映えています
用意された皿はただ一枚
白い無垢な皿です
さあ時間になりました
採れたての ....
もくもくの白さを
蒼い空に貼付けていた夏は   ミ〜
ろうそくの灯火なのか      ン ミ
最後の悪足掻き          ン ミ
                  ン ミ
      ....
すきとおる泪が
青い洞門をすべり落ちる
あなたほど自然に私をさとすものはない
美しく象形した蚕の吐糸がやさしく肌を包む
あなたは私を裸にせず裸にする
新しい息吹は真珠となり
このく ....
ビブラートする白
は、流れ落ちて目覚め
あとは黒い眠り

指先は
猫毛のように鍵盤を滑り
響きは深閑に温度をもたらす
私の背にかむさるその暖かい音色は
恍惚に揮え光冠を放ち
空中 ....
空からまっすぐ垂れた
雨の糸
大地に織られ
数多の模様を描きます


縒り合わさって森となり

縒り合わさって海となり

縒り合わさって国となり

土に染み渡るまで
浮 ....
「薬を飲み忘れたわ!帰らないと」

マンボウを見に
水族館へ行こうと
誘ったのは彼女の方だったのに
家を出てすぐ言った

「どこが悪いの?」
「知らないわ、生まれてからずっと飲んで ....
もう
鋭いところまで、
来てしまっている。

人々は、
気付いているのであろうか。
虚空は、
妖しく、うねりながら明滅している。
あさっての老人は、
{ルビ落葉=おちば}に手を合わせ ....
俺が何人の女を抱こうと
友よ
俺は君の知っている幸せを
友よ
微塵も知らないのだ
友よ
俺が欲しいのは
友よ
少しの優しさと少しのぬくもりなのだ
友よ
君の言葉の所為で俺は死にたく ....
腰の曲がった老婆がひとり
大雨の中を歩いている
両手を鎖に繋がれて
重い足枷を引きずりながら
濡れるに任せ歩いている

彼女にも愛は確かにあった

独り暮らしの雨は寂しい
愛は何処へ ....
  行ってらっしゃい、気をつけて




  静かな朝の洗面所


  ちっぽけなスペースに


  無造作な歯ブラシ5本の安堵感




  本日も良好、我が家は ....
優しい声は健在で

いつも 私を癒してくれる

そばにいれたら

あなたの横にいれたなら

その声を いつも聞いていられるのにな
夕焼けのなかに
ぽつんとビルが
建っている

ながめていたら
たたずむひとに
見えてきた

ひとが
暮らしている
のだから

ひとに
似てくるのは
当然のこと

かもし ....
ブルー問ふ京の都の古家ぬけ落ち込むぼくに空指しながら


麗しき姿であれどきみに問ふ如何なる意図や人魚の胸像


高速の指の運びに混ぜられてゆく鍵盤ももはや灰色


「色たちが心中し ....
これまでにいったい
いくつの財布を使い
いくつの財布を捨ててきたんだろう
ある年齢を過ぎた頃から
新しい財布に買い換えても
それまで使っていた財布を
捨てることができなくなった
だから
 ....
僕は奈良公園で鹿の角をにぎっていた


同じころ

父は帰りの電車のつり革をにぎり
母はスーパーで安売りの大根をにぎり
妹はベッドの上で携帯電話をにぎっていた

隣の部屋の夫 ....
叫び狂う
夜空に向かって両手を広げ
蛾にでもなったかのように
キラキラとした粉を振りまき
星もない空にでも
誰にも言えない悲しみを打ち明けるように

生きている私
生きてきた私

 ....
ゴミ箱のふたには
大きく達筆で

 燃えないものは
 潰して中の空気を抜き
 嵩を減らしてください

         と記してある

おそらく読者は私だけだから
あらため ....
純粋ならざる錬成から生まれ、
おぞましき獣となりて、
いまだ人ならず。

異物、
或いは汚物を喰らい、
蛆と成り果て、
蔑まれようとも。

いつか人と呼ばれる ....
あなたのいない       空       白       を、日々うめる努力をしています。
もう、慣れました。     空が      白く      雪で染まってから随分たったので。
昨日は眠 ....
今日が終わる
その少し手前で

ひとつ足りないことに気づく

いつものように
君を送りとどけた駅で

「またね」でもなく
「さよなら」でもなく
「ありがとう」でもない

ひとつ ....
貴金属コーナーに群がる高校生は
鼻で笑えたけど
たくさんの買い物袋を両手にさげて信号を待っている中年夫婦を
バスの中から見た時
手袋をはいていない手も
雪の上での足踏みも
会話からもれ ....
天王寺動物園に
桜が咲いて
カラオケの音量が
最大になった日

僕たちはアポロの前で
待ち合わせた
どこに行く当てもなくの約束
ただ一緒にいたかったから

もっとたくさん、桜がみた ....
ほんとうに欲しいと思ったんだ
あの夜

だから
ここにいるだけで
しあわせ

夏が終っても
君が胸を泳ぐから
 

クロール


息つぎをせずに
どこ ....
君は覚えているだろう
君がはじめて掴んだ自由は
真新しい買ったばかりの自転車に乗って
得意げに街中を走りまわる事。


そして今
世間との関わりを君は海に投げ捨て
白い灯台すれすれを斜 ....
千波 一也さんのおすすめリスト(7731)
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