十一月の夕暮れに
落とした財布は
世界の意味にすっかり濡れて
もう使い物にならない
ちょうど
開かれることのない
窓の高さで生きる
ぼくらのように
おとといと昨日と今日の夕焼けの違 ....
お前は
ビタミンを含みながら落ちていく
お前のばか
嬉しいばか
お前は
ビタミンの味も知らないで
そんなに若くして
ビタミンを含みながら落ちていく
お前のばか
お前のばか ....
ありがとう
うまかった
ありがとう
まずかった
いつも
いつも
飢えていて
ありがとう
食べてきた
皿盛りの肉
絞った蜜
犬の舌焦げ
ありがとう
母の ....
なぜだか忘れてしまったりするので
書いておく
そこにも あそこにも
ピリリと鳴ったり 震えたりすると
ポケットの上から触れずにはいられない
現代人なのですか といわれればそれはそうですが ....
雨が降って。誰かが傘をさしたら。
あなたの色を探したい。
いつか、さしていた、あおいあおい傘を。
ほかの人の傘なんて目にはいらない。
あなただけのを見つけたい。
すべてが無駄じゃなかったと伝 ....
いま目の前に
浅い
しかし広い水溜まりができた
やがてそこには
緑か芽吹き
足首くらいの
浅い海となった
しばらくすると
浅かった海は
私の身長ほどの
深い海となった
....
ラベンダー絨毯の中
東へ東へ向かうバス
点在するハーブ園
スィングするカラフルな文字
流れる
ラジオから
セージ、パ リ、マリ 、タイム、、、
と聞こえ
行くのですか
と ....
どうして口をへの字に曲げてるの
彼が訊く
だって重力の法則には逆らえない
不満 怒り 悲しみ 憤り
みんなして私の口を両端から引っ張るんだもの
どうしてそんなに不味そうに食べるの ....
ぺるせうすざの
はしっこで
にじをみていた
あおくひかる
ほむらのようにゆらぐにじ
ときおり
ちいさなほがはぜ
あたりがすこしだけ
あかるくなる
はくいきはかなしく
....
わたしのせなかというものを
つくっていただけるのであれば
どうか車輪の跡を忘れずに
しあがりのまえに
たっぷりと日干ししたものに
あなたというものを
ペダルにのせて
し ....
きれいなものにあこがれて。
でも、てにとどかずに。
みにくいものがあふれています。
じぶんをせいとうかしようとして。
みにくくなっていく。
いきていくっていじがわるい。でも、しにたく ....
烏瓜が真っ赤に色づき
葛の葉っぱがみんな枯れ
桑の木がセミヌードになるころ
カマキリは生きながらに枯れる
雄を食ったのは晩夏で
そんなものとっくに消化して
それでもまだ冬がこないので
....
いまはもうない家の
いまはもうない裏の畑で
空いっぱいに舞っていた
アキアカネ。
物干し竿に 洗濯物に
それをとりこもうとしてる母の髪に
それを見ている私の肩に
アキアカネ。
....
1.夢前編:クレバス
ワンルーム まっ白で
床に 暗い
クレバス
あって
確かに そばに
何か
あって
落ちた。
....
原口氏の詩集を拝受。さっそくというにはかなり遅ればせに手に取った。タイトルは『声と残像』。一読して戻ってきてみると益々その感を強くするが、このタイトルは暗示的だ。暗示、というより過剰でさえある複数の意 ....
凸凹配位座はいつでも漂っていて
なにかの拍子に
繋ぎ合っている手のひらの合間にもある
ついさっきまで当たり前のことが
風ひとつ吹いただけで
何ひとつ理解できなかったり
その道理に畏れたり
....
『長いキス』
君がコーヒーを運んでくる
その姿が近づいてくる時から
すでにキスが始まっている
『キス』
キスするのには理由がある
簡単な理由だ
ふたりがキスしよう ....
「ばかね」
彼女が笑った。
俺は初めて、ばかでよかったと思った。
ひっこしました
と言うのがすきだ
ひっこし
ひっこした あと
ひっこすよてい
も捨てがたい
だからさいきんは
ほとんどの時間を箱とすごしている
早く ....
お池のコイ
腹を浮かせて
ぱくぱく
お母さん私は今日も
息を吸っています
音がないコーラス
コーラス隊は女ばかりじゃないのですね
コイなんですって
コイですってば
コイです夕方の ....
口笛が遠くまで聞こえるのは
まわりに誰もいなかったからだ
分かっていたんだろう
少女よ
どこにも行かなくていい
君が知ってる誰もかもは
どうせ君の知らない場所で笑っている
....
何度ささやいたかわからない
あいしている
のうち
一度だけは
「哀している」
と言ったのだ
きみは気づかないが
かなしもまた愛し
あいしもまた哀し
きみが肩に頭をのせているあ ....
よくあるタイプの夜だった
目は!ラン!として
窓の外がテレビの中にあった海を
ぐっと伸ばし
カジるとカルシウムの味が漂って
観測衛星になった
鏡へ吸い付いたりもしたけど
(朝日や夕日 ....
前の日の晩から決まっていたので
目が覚めてすぐ
はなうたを歌った
朝ごはんを食べるときも
はなうたで
納豆ごはんと大根のお味噌汁だ
やってみようとも思わなかったので
今まで知らなかっ ....
桟橋を子供が
ぞろぞろ歩き
海にどんどん
落ちて行く
それは困るので
番をする事にした
子供の向きを次々と
くるくる変えて戻す
飯も食わずに番をしたので
僕は死んだ
....
ある日
ヒゲが全然剃れないので
やけに切れないカミソリだなと思ったら
カミリソだった
そりゃそうだ
*
ある日
ヒゲを剃っている途中
カミソリにカミリソ ....
ひそかな微笑という呪い‐
に、そう、
この繋げられた血管に
網の目の、繊維‐
質の。
封じられ、封じ‐
込められた、思い、意識、
純粋なかたち。
かすかに起伏した‐
皮膚の、白色 ....
あくまで単調なリズムだ。
バニー、バニー、バニー、
黒いタイツのバニー。
酔っ払いを左右に{ルビ侍=はべ}らせて、
見るは{ルビ開聞岳=さつまふじ}のてっぺんのくす ....
輝くツリーがキラキラと街を行く人がさわさわと
なんだか悲しく見えるのです
何故でしょう?何故でしょう?何故なのでしょう?
音が無い奇跡をいたただいたというのに・・・・。
ここから見える景色 ....
未だかつて
私は新鮮な驚きを知らない
昔 {注大きな船=黒船}を見た人のような
新鮮な驚きを私は知らない
私達はどうでもいいことを
知りすぎた
高度な文明の中で
そうして忘れたもの ....
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