階段
狸亭

照り返しの眩しい白い階段をのぼる
六六段を数える
栗の木の緑がむせる
コンクリートの階段だ。

後ろを振り向くとまだのぼってくる人がいる。

毎朝沢山の伝票を抱え
昔のぼった経理部への粗末な木製の階段は
来る日も来る日もぎしぎしを続き
いつ果てるとも知れなかったが。

階段はいつも目の前に聳え
絶望的にのぼり続けるうちに
いつしか駅の階段になり
時には山道に彫られた石段もあったが。

生涯にどれだけの階段をのぼるのか。

今日もまた奥深い地下鉄から一二八段の階段をのぼっている
いつも階段をのぼる時に寄せてくる苦しみは
肉体の苦痛だけではない
もっと奥のほうから段々と突き上げてくる怒りだ。

あらゆる設えられたものへの憎悪
階段も人間が造った物だから
馴染んできた階段ほど厭わしい
この目の前の階段はまだまだ続く。
 


自由詩 階段 Copyright 狸亭 2003-11-11 09:21:22
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