地に伏していた。身体の自由が効かない。目を開けると、そばに灰色の蛾の死骸が見えた。風でうすい翅がゆらめいている。翅の鱗粉がかすかに光る。蛾の数本の細い脚が、宙をつかみ損ねていた。顔をずらし視線を先に .... おなじすなをさわっている
別の数を言うから
涙がでるだけ
目を見て。 それか
目を閉じて。
見渡す限りの砂場で
雨が降って
いたとしても
同じところにいる、
それだけで
掘ったり  ....
もし
そうなったとき
信じるしかない
自分を知ることが
生きることだと
光の友は言いました

たとえ
殺されても
横断歩道を渡る
夢を私は見続けました
きみがいたところ、そこには
いまでは
言葉がある、
あるはずだった言葉に
ついて、話していた
夜をすぎて、きみはどんどん重くなっていった
この夜は
これまでのどの夜よりも
きみ ....
{引用=ただいま}
毎年の
「ただいま」
が年々ぎこちなくなってゆくのを
自分で感じているのに


{引用=おかえりなさい}
あなたの
「おかえりなさい」
は年々なじんで
小川の ....
真夜中
港まで自転車で走る
橙のあかりが点々と
その下に一人
また一人と
釣り人が並んでる

釣れますか
聞いても誰もこたえない
みな透明だから
二人乗りしてきた友人も
いつのま ....
私をこの場所に向かわせるもの。ということを考えてみました。表現。表すこと。現れること。

一青窈さんの、コンサートに行きました。「ハナミヅキ」や「もらい泣き」など、バラードの得意なアーティストさん ....
少し湿ったね と
旧道沿いの
あしもとのほうから
梅雨のにおい と
祖父のにおいがした


ふりかえると
あたり一面にシャガの花

思い出すひとがいるから
咲くのだろう
 ....
場末のバーで仮面を外す
背中のジッパーつまんで下ろす
皮膚に新鮮な空気が当たる
嫌なことだってあらぁな
今日も日の出と共に家を出て
さっきまで怪人と戦っていたんだ
けどもうすぐ給金だよ
 ....
アテネ・フランセの
フランス人のフランス語の先生に
彼は恋をしました
ジュ・テームあなたが好きです
彼のフランス語が通じません
日本語も通じません
ミラボー橋の下を
セーヌ川は流れるそう ....
***


シルバーの空に映り込むことを知りました


もう
春とは違うよと教えられ

枝先からこぼれそうな
それも
また


みたことのあるカラーでした


***
その日は雨だった
けれど
私は友達二人と老夫婦とで阿佐ヶ谷住宅近くの
うどん屋へ向かった
阿佐ヶ谷の駅までバスで向かい阿佐ヶ谷駅からは
すぎ丸というコミュニティーバスに乗った
すぎ丸の中は ....
松林のにおい
やわらかに透過する光
あなたのその目じりのしわが好きだった
波風がうばっていく言葉に
その想いものせて

わたしたちはあめふらし
ふいに雨音が恋しくなる
傘の下で肩を並べ ....
泣きはらした様な空が
広がり
あたしのうちまたを
細い暖かい体液がまたながれて
玄関の先の土を濡らしてる
うすぎたない腕を
切れそうな糸のように伸ばし
母が若い稲のようにふさふさとゆれ
 ....
肚、なくなって久しいが
これを求める人々があとを絶たないのを見るにつけ
渇望されていることを知る

現れる土壌でないことを
察していても
なお
とびちるこぼれるあふれる
亀裂は断続する黒点
から
ただれて
淡々と
丸いメロディ
一、二、四
円周率の汀に咲けなかった蘭の
つぼみ
ひらくたおやかな
ゆびへ
黄色い
なみだぼ ....
                   080523


99と書く
次は100だと思うとそれ以上書けなくなる
思い切って進め
そんなこと言っても可哀想だと思う気持ちがあり
迷っていると
 ....
こどもの頃

僕はポポという おもちゃの兵隊に優しくキスをした

ポポは照れ臭そうに 真っ赤になって土に潜った


ポポを知ってるのは僕だけ

僕のことを知ってるのもポポ ....
ある日めんどりは思いました
どうしてわたし
歩いているのかなあって
ためしに羽ばたいてみたけれど
やっぱり重くて飛べなかった
もう何年経つかしら
最近は疲れちゃって
毎日卵は産めないわ
 ....
地球がもう少し傾いてたら
この斜め振りな雨に濡れることはなかったかもしれない。


寝ぐせとも天パとも云えぬような頭からは
まっすぐな言葉は生まれない、かもしれないから




今 ....
本のページをめくる
あなたの指が
風のようだと思った


あなたの中で
長い物語ははじまり
長い物語はおわる


本を閉じると
あなたはすっかり年老いて
物語のドアから出てゆく ....
ひつじ こひつじ
1、2、3、4
5、6、7、8
かぞえても かぞえても
こひつじ
いくらでも どこまでも
こひつじ
そんなところで
ねてくらしたい。
誰もいない教室で
机の落書きを消す

たいていが内容の無いもので
消すのにためらうこともないのだが

ふと窓をみると
結露したときに指で書いたのだろう
一つの文字が見えた

「海」 ....
(チューリップが 咲いたよ)

君は少しずつ
透きとおって消えていった
虹色の血液をめぐらせる
心臓と血管だけは
しばらく其処に残っていたが
やがてそれらも
透きとおって消えてしまった ....
西瓜のように
まるい地球をぶらさげて
その人はやってきた


裸で生きるには
夏はあまりにも暑すぎた
冬はあまりにも悲しすぎた


ぽんぽんと叩いて
いまは食べごろではない
と ....
虹のようなところに
キャベツが生えている

抽選でもれなく
誰でも食べることができた

今日はマリーという人が
当選した

まだ生まれたばかりだった
ソメイヨシノ
はクローンです
と理科の池野先生が言った
そこの桜も
不忍池のも
ポトマック川のほとりのも
同じように咲きます

その花達は
実を成すためではなく
咲くために咲 ....
魚を丸ごと
皮も内臓もぜんぶ食べた
それは
ゆうべのことだ


目覚めると
私の骨が泳いでいる


なんたるこった
私を食べてしまったのは私だろうか


どこをどうやって
 ....
                080328



グライダーのように
空中ブランコのように
限りある人生を
ぶらぶらふらふらしていると
フラスコの悪魔に喰われてしまいます

化学 ....
五月の地表を離陸したこいのぼりたちは
太陽から吹いてくる風を上手い具合に活かして
素晴らしいスピードで重力圏を離脱した

それはこいのぼりたちにとって
反乱であり革命であった

こいのぼ ....
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