欠けてゆく
竹節一二三

ある朝
右のみみがきこえなくなりました

ある朝
左手のこゆびがうごかなくなりました

ある朝
右のあしくびがまがらなくなりました

ある朝
左のめがみえなくなりました

わたしがふじゆうを感じないかぎり
これらはふじゆうではありません

だいじょうぶか と
友人はささやいたけれど
だきあうのに必要な器官はのこっていたので
だいじょぶです と
答えて友人のはなをつまみました

もう片方がなくなったら
こまるけれど

ほんとにだいじょうぶか と
友人がもう一度ささやいたので
ほんとはだいじょぶじゃありません と
あまえることにしました

だからこれらはふじゆうな事象ではないのです
わたしがふじゆうだ と
感じないかぎり

わたしの器官はこれからも
欠けてゆきます


自由詩 欠けてゆく Copyright 竹節一二三 2003-11-10 19:05:15
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