この世は河であると教える坊主を川へ叩き込んでやったら
喜んで魚になったので悲鳴を上げて倒れた僕は
いつの間にか全身にバターを塗られ
毛並みのいいマルチーズが耳打ちする
「それは百年金縛りだ ....
郵便受けに溜まった新聞が日焼けしていた
古い日付は、風に晒されて
更に風化した遠いあなたの
背中に張り付いて
帰ってこない のに
201号室の、窓から入る西日を受けながら
忘れて ....
アルマジロな午後。
僕は転がる。
あるまじき僕は正午。
ごろごろとアルマジロと転がり、
ヒジキを食べている。
ヒジキはあるまじき美味しさで、
もぐもぐとアル ....
女がクレヨンを奪って逃げた
必要のない色を奪って逃げた
生活はなにも不便にならない
箱をゆすると音がするだけだ
「生活はなにも不便にならない」
念のためフタの裏にそう書いた
....
濡れた鉄塔を越えて
そのままの振動で
ゆがんだステンドグラスを割らないように命は膨張する
このふしだらを運転する技師は
都市にいる幼児のみに聞こえる歌を
アドリブで歌う。
朝刊を配 ....
気が付けば、漂流している目覚め
手を伸ばすその先
十センチメートルで
落ちるばかりになっていて
とりあえずここに、漂っている
どうやら
世界の端は滝になっているらしい
落ちてしま ....
夜闇。暗さに光線、たとえばただアスファルトの隆起したひとかけらを照らしている。点は(このままだよ)とささやき、いつしか光の粉をまいて。すふすふと積もり、埃のようにけむりながら少 ....
ギンズバーグ
の となりの背表紙がのけぞっている
店員は面一にもどした
週間誌、参考書、就職コーナー、コミックと周回する ふと気になって
ギンズバーグ
の となりは暗く抜かれている
ローレ ....
ため息をつきながら
君が死体の話をする
少し笑ってる
ホルマリン漬けの臀部はね
鳥のささ身の紅茶煮にそっくりなんだよ
そっか
今夜作ってみようかな
二人で食べよう
大丈夫まだ生きてる
....
わたしの恋人は
痩せていて
あまり食べないの
お酒と
煙草と
お刺身が好き
映画と
音楽と
こどもと
カメが好き
たぶん
わたしのことも好き
初潮という言葉と海とのつながりとかを
ぼんやりと考えていた頃に
おまえの家は紙の家だとからかわれ
私は学校へ行けなくなった
私は紙のにおいが好きだった
鼻をかむ時のティッシュのに ....
やがて、それはゆっくりと始まる
誰も気付かない視点の高さ
から、夜は上昇していく
もう僕らは沈み込んでいる歩幅
もがくよりも深く落ち着いたリズム
呼吸はあちこちで燻っていて
平面に広げ ....
くもり。非常階段へ続くベランダからは大き
な白いビルが見える。本当は白ではなく薄く
濁っているそのビルの外壁には大きなヒビが
いくつか、ひとつ、ふたつ、崩れ落ちるよう
な気配。ジェニファーの俊 ....
いつからか
{ルビ誰彼=たれかれ}のすがたもなき その水
その{ルビ夜=よ}のもとの {ルビ黝=あおぐろ}き{ルビ躯=むくろ}
うごかずうごく
四肢の{ルビ肉=しし}
― … ヒツギには ....
{引用=かみなりさまの おとおりだい
そこのけ そこのけ おいらがとおる
くすぼった 心 雨なんか降らせないで
そら
ななめ 一直線に駆け巡って
そら
隅っこから 満面 真っ黒
....
ゆびさきを闇にひたして
子宮の中に帰ろうとこころみる
背の高いくすのきがわらい
絡まる根でわたしをとらえた
蝉のねごとが聞こえる
綿毛のくしゃみが聞こえる
トマトの放出する酸素が見える ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で
蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
その街に風は吹きますか
手紙のようにそっと遠くから
坂道で靴は鳴りますか
生みたての音楽のように
どれだけの名前を覚えていますか
カタカナの響きに変わっても
この哀しみは君 ....
毎日が
ずっと、遠浅だったらいいのに
って、言ったのは
あなただったか、わたしだったか、
もう わすれてしまった
うつろいやすいふたりだったから
ただ
手をつないだ
波が
....
さいとういんこさんのお腹は大きい
大きく膨らんでいる
さいとういんこさんの子供が大人になる頃
僕はもう59歳だ
それまで生きているかどうかわからない
生きているつもりもないし
自信もな ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=24045
顔をあげるともっと広い世界があって、もっと広い世界でまた顔をあげると
もっともっと広い世界があっ ....
わたしはわたしを以て
いかなる孤独にも戦利し
平伏する憤怒と哀憫を両肩に掛け
凱旋する兵士のごとく
絶望に満ち
絶望にひろがり
靴は鉛のように重く
ポシェット ....
独りだとときどき
夜空と自分の境界線が分からなくて
不思議
かんぬしまちの
おさななじみだったおねえちゃん
がみこさんになったとき
ぼくのこころは
ふ ってはずれて
べっくうさんやのほうに
ぷかり ぷかり
とんでった
きれいだったん ....
帰ろう
と何時でも君は言うので
何処へ、とは聞かない
ヘッドライトが線になるまで
ただ通り過ぎるように
覗くことをしない
触れるなら静かに
斜めになった窓から
射し込んでくる光が
....
干からび抜いた{ルビ駱駝=らくだ}の骸骨
桃源郷から狙い澄まし
放った矢の数十と二本
駆ける羽音は雹の落雷
蝶食う鳥を焼き残し
劈く轟音無色透明
阿吽の痺れは醒めて婚せず
一毫{ルビ櫓= ....
がらがらと開ける
明け方の雨戸に
ひょいと跳んできたら
ちょっとだけにらめっこ
あしどりかるく
自分のおまんまを
きちんと自分で稼ぎ出す
この勤勉な同居人は
何を食べたかもぐも ....
急な坂を登ると博物館があった。
湿っぽい薄暗い埃っぽい、
いかにも淋しいガラスケースの中、
脱脂綿の上にひっそりとその虫はいた。
大きな虫眼鏡で拡大して、
ようやく何やらイキモノに見える ....
あの日のことを言い出すと
きっと君は泣いてしまうのだろう
と思っていたのに
パーティーで久しぶりに見た君の顔はもう
もう
とっくにお母さんの顔で
ふと見えたその横顔の一点
の中に
初め ....
甘栗むいちゃいました
三点倒立で甘栗むいちゃいました
航空ショーで甘栗むいちゃいました
筋肉ミュージカルで甘栗むいちゃいました
死海で浮かびながら甘栗むいちゃいました
女性専用車両で甘栗むい ....
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