みえこ
きみはぼくの肉体の
ひいていく最後の熱量をはかる者 ....
その意見については
おおむね賛成なのだ
ぼくらは一緒に腐れていく関係だから ....
たとえばそれは
黄色と黒の表紙がついた
どこにでもあるスケッチブックで
軟らかい鉛筆を握って
記憶の底の君の笑顔を
なぞってみる
のだけれど
たとえばそれは
終電を逃しちゃった
....
私が「知っている」と言うとき
知らない何かがひとつ生まれる
その終わり無き巡りのひとつひとつを
深く 浅く
許してやりたい
もう何年もおまえをまっている。
とてつもないながい時間がすぎて、
過熱した脳がすうっと凍結する。
雨のはげしくふる朝、ぬれねずみのおまえがやってきて、
にっこりわらう。ラオスとの ....
ぼくは最近おなかが出てきた
だってみえこが言うんだもんなあ ....
風にのって
ぼくのつぶやきが ....
雑音らしい特徴を失ってとめどもなく流れていく
居心地の悪さだけを蹴飛ばしたら
あの風船は中身が抜けていくまで空に降り続ける
そんな雨の中で ボールだけ見えなくなる
てんでばらばらの行き先を ....
震えるような歌声が
体の中を巡る
両手で耳を抑えて
細く細く研ぎ澄まし
正確なリズムを
その歌の意味を
聞き取る鼓動
きっと
泣かなくてはいけないのだろう
泣きながら生きなく ....
コウテイペンギンは考え中
どうしようかと考え中
キングとクイーンよりどこがすごいのか
ただ体が大きいだけなんて人に言えないから
何か言い訳しなきゃと考え中
コウテイペンギンは考え中
ど ....
常夏の夜の底でぼくはアジアを抱いた。
こがね色にきらめくまばゆいタレーの中で
すぎさったはずの貧困がものがたられた。
あくことのない想像力の肉の中で、
一〇〇〇人の男とまじわった女はも ....
厳格そうな大人達の話が終わり、気がつくとその部屋はベッドだけ。転校を余儀なくされたが、忌々しい両親はもういない。代わりに私に与えられたのは空白。両親からの残り物は、ランドセルに文房具と教科書。それか ....
空は飛ばない
翼を広げ
駆けまわる
青い空の下
一面の白に
みんなみんなで
足跡つけて
よたよたと
足先のようにつめたい
するどさの くるおしさの 家路につきます
耳たぶは 暖かそうにも 通りぬけて赤いし
温度の分からない小石に躓いて
ストーブで焼けた服が
怠けた洒落心に 鞭打つので
....
生臭い肉体を焼きすて
骨と ....
いま言おうとした言葉を
忘れてしまった
なにかが胸骨のす ....
ひとは背中の遠い国の
風のおだまき ほどいてくらす
だから誰も変わる自分を
知ることがないのは
腐りやすい肉体をもったぼくらの幸福
よあけの、ふかいしずかなタレーの中にも、
やりきれない嫉妬がまっていて、
ほんのわずかなぼくの不在をうらんでいて、
おそいかかってきたのだ、手にも脚にも。
ひさしぶりの海水の感 ....
いくつもの傷
いくつもの雲
風をのぼり
空の終わりで出会い
いくつもの海を越えてゆく
光は雨に溶けてゆく
過ぎた日の光も
明くる日の光も
溶けあいながら分かれはば ....
小石の影が長くのびて
夕陽の家系図を道に描いた
たくさんの冷たい子供のなかに
ただひとり暖かい曾孫がいて
近づく夜にまたたいていた
天国の緯度経度は
ラファティのじいさんが教えてくれた
地獄がもうないってこと
神も悪魔も死んだってこと
でも天国はこの世にあるのだってこと
ラファティのじいさんが教えてくれた
ラファテ ....
記憶の中の森で
一羽の鳥が巣立ちする
遙かな大陸に向かって
記憶の中の街で
柔らかい雨が舗道を濡らす
恋人たちを祝福して
あの火曜日の朝
私たちの街は一瞬で崩れ去った
あの日か ....
{引用=十五歳抱かれて花粉吹き散らす 寺山修司}
十五歳の海から とんでくる一羽のかもめ
十五歳の海から きこえてくる潮騒
十五歳の海から およいでくるひとりの少女
わたしの十五歳はあま ....
悲劇的な物語にしてしまったら
たやすく感情移入してもらえるだろうか
たとえば私の恋人は
そのむかし精神を病み錯乱したあげく入院して
退院したとたん自殺してしまったと
でももうそれはむ ....
竜道から少し外れた、石の多い場所で
あなたは待っていると言った
すうん。
空には旋回する群れ
あそこにも石が散らばっている、よう
十、は
たくさん。
九九もたくさん。
千、は
手 ....
ある時あなたが産まれた
あなたを抱いた看護婦さんは
「わあ〜やわらか〜い」
と、とても暖かな気持ちになった
ある時あなたは小さな子供で
あなたのまるいほっぺたを見たおじさんは
「ああ、 ....
1
ある男がいた。彼の名は大山昭雄(おおやま あきお)。有名人であり、その独特の職業で成功。莫大な財を成し、人々の尊敬の念を集めた男。
彼は、占い師だった。
彼が脚光を浴び始めたのは、と ....
3
いよいよリスト国際コンクールが開催される。リストは音楽の技術を飛躍的に向上させた。世界の選び抜かれたピアニスト達がリストの魂を再現する。
中でも一際才能を発揮した男がいた。通称ショパン?世 ....
2
朱音は次の夜、ソファーにまたがりテレビを見ていた。いつもこのソファーは身体的にくつろぐ場所で、リラックスしながら友人たちと映画を見ている。
「この CM ソングは誰が作ったんだろ。」
いかに ....
1
コンピュータ音楽のラ・カンパネラが鳴り響く自宅 2 階の仕事部屋。仕上がりの確認作業をしているそれは、コンパクトなファイルサイズで受け売りの携帯電話の着信メロディーに使われる MIDI だ。
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