スキャニング
ねなぎ

白いテーブルクロスに
白い皿
ナイフとフォークに
サラダとワイン
ポタージュスープに
若鶏のエヒフ

ここでなければならない理由は
おそらく無いはず
地形は平坦でいて
入り組んでいる
交錯していく
裏を探るような
ワインに誤魔化されることない
配置が敷かれている

気が付いていて
あえて口に出さずに
局地化していく会話に混じる
圧倒的な感情
料理に手を伸ばすことなく
燻ったような匂いを
感じている

受信されない信号が
飛び交っている
ソナーもレーダーも無く
無線の傍受だけを
延々と続けるような
疲れ果てた日常

目の前の顔が歪み
地形図になるように
凍りついた空間
緊張の前線は
運ばれてくる皿に
注がれる事も無く
読むことに廻る

ワインの空き瓶だけが
ジェリ缶のように立っている
否定に否定を重ねて
綾線が作られ
バリケードの向こうに
静かに
砲口が待っている

答えが出ることなく
目に見えた結論を
避けるように
冷めた料理が
片付けられていく
泥沼の火の争いを
見ることなく
窓の外の人々は
通り過ぎていく


自由詩 スキャニング Copyright ねなぎ 2003-11-10 03:47:41
notebook Home 戻る