たわいもないもしくは深刻な
天使たちの会話を切り裂いて
チャコールティースの王たちが円に酔い痴れる滅びの夏
閉め切られた部屋の中に
続々と集うひとびと
片足の無い者は言葉を投げ続け
真っ白 ....
・・・・・・父は営林署の職員だった。私たち家族は小高い丘の上に建てられた社宅のひとつに住んだ。数十軒の社宅が営林署の三階だての建物を円形状にとりかこみ、遠くから眺めると近世の城とその武家屋敷の集落のよ ....
梳き櫛の息の根をわたし止めて
泣く姿、の、無音部分
を拭った指、の
薄命部分、月に透かせば
血潮は青ざめるばかりで
発光もせず
黒髪、の
窒息密度で、黙ったままの ....
窓から世界が見えすぎるので
何度も何度も触れつづけては
指とガラスをたしかめていた
消えた素顔をたしかめていた
描かれた線に雨は重なり
音だけを残して見えなくなった
....
ゆっくりと朝になっていく一日に
決まったかたちの挨拶を投げ掛けて
次第に集まってくる思考を
開きかけの目で確認する
机の上には
いつからか書きかけの手紙があって
便箋は空を薄くした色
....
厳しい借金の取立てに耐え切れなくなった男は死ぬことにした。崖の上で靴をそろえる。ふと右手を見ると、同じように靴をそろえている男がいた。目が合った瞬間、ふたりは理解した。つらかったですね。それももう終 ....
微笑みに沈みながら
ゆっくりと溶けてゆく君が君が
追いかけられることにつかれて
しごとも捨てかんけいも捨て
色さえも捨てた
ほのおの残した灰のように静かに
軽く風のような涼しいが吹いてから ....
いえのかたずけがひとだんらくしたので
えんがわにすわっていると
ぽろぽろ
そらからなみだのあめがふってきて
にわじゅうをみずびたしにした
みんなおしゃべりにはあきたらしく
しぶきをあげ ....
伸ばした腕の先の
手のひらの先の
中指の先っちょが
触れるか触れないか、
のところまで
夏が。
列車を待つ顔たち
照らす陽射しの角度を
知ってか知らずか
右へ傾く
....
線路を歩いた
草がたくさん生えていた
誰もいなかった
ずっと前に廃線になったのだ
線路沿いに坂を上っていくと
車両が置き晒されていた
子供が廊下を走っていた
もう少し歩いて ....
波間に夢を見る
ふと揺られていた
気がつくと電車などに乗ってしまっていて
しかも田舎の単線の三両編制で
左手には木々が広がり
進行方向右の窓のそばで
ぼんやりと外を見てると
すぐ ....
6月の快晴に出会って
やあ久しぶり なんて手を挙げたりして
からからに乾こうとしてる街を
隙間を見つけながら走り抜けたりする
名前も知らない鳥が
真似できないような声を出してる
それに ....
雲 のチビ は
ちらり すまして
ふんわり おなか
に まるまって
かくれんぼ なの
だれにも 言わないで
抱きしめたら
ここ へ そら
鍵盤の流れ
書斎の壁
狂った額に優しく
私は受話器を落とす
「悲しみを愛せよ・・・」
無数の音符に巻かれて
加速する刃
氷を突き、宙を舞った
私は目覚める
衝撃は ....
秒針がふるえて
ぼくは ただ
青くなってゆくばかりだ
深みが光を吸収し
かわりに
無数の粒子が
まとわりつく
探してた言葉は
どこにも見えず
たえなまく
泡
....
なやみにみちてねむりに落ちる
まどろみながら足は窓へ向かう
外を見下ろすと今まで知らなかった河が流れていて
月の光子を静かに回す
いろいろなものが流れていく
光が流れていく音楽が流れて ....
青空の下、作品が並べられている
授賞式に集まった名優たち、やはり洋モノにはかなわない
何種類もの香りに鼻がおかしくなりそうだ
彼の作品が並べられている
彼は空の青さに気づかない
....
夜の汀に
静かに打ち寄せる旋律が
月を濡らし
とびきり無垢なくらやみ
豊かな潮騒に包まれる
すべての静かなあなたたち
今はただ
波間に映りこんだ月のように
やさしく揺れて
なにも持た ....
(1)
高校生のとき、
まだJRが国鉄だった時代、
三十日間三十万円日本一周鉄道の旅を計画した。
青春18切符があれば、不可能事ではなかった、
東京を通過しないとどこにも行けない関東圏、 ....
どこから夢で
どこまで夢だったのか
わからない
という 朝
さざ波がたっていたので
ただ
風をさがした
前に進むための
1オンス
やがて
なにもか ....
夜で潤んだ廊下のタイルに
こぼれていた非常口の灯りは
緑
それなのに
何からも 何処からも
匂いの消えた夜だった
緑色に 浸りたい
そんな気がしていたのは
....
気がつくと きみは
魚になってしまっていたので
ずっと
きみを知っていたのに
はじめて見たような気さえした
望遠鏡をのぞくと いつも
波がよせては砕け
飛び散る
セロハ ....
王様は爪を研ぐ
家来は昼寝
子供たちは目隠し
数え歌を歌う
王様の爪は三本爪
三つに分かれて何でも殺す
一つは矢に
一つは槍に
残り一つは秘密のナイフ
弱いもの貫き
....
信号を無視してあらゆる交差点を渡った 緩慢な自殺未遂もことごとく失敗に終わり
裁縫バサミで刺した腕の傷も今はもうほとんど目立たない
つながれた大型犬が吠える それにつられて隣の家の
つな ....
塀の上のツツジの蜜をアゲハ蝶が吸っている
硝子屋の軽トラが道の脇に停まっている
見上げたら
茎のような電線の向こうに
無期懲役の太陽がある
自分の魅 ....
ごめんなさい
あなたは、
夕方になったのに、
まだシャッターを降ろしていなかったの
ですね
わたしのシャッターは
とっくに降りていて、
だから、
まだシャッターを
降ろし ....
ふせじ の なかの
ながい ゆめ
とんとん どうにか
すすけてく
ならくのそら は
しらせぬ いろで
ここやら どこやら
さき ゆれる
わたらせ まい よ
と ....
自分を忘れるほど
君する夜
遠いのです
東京タワー
今夜も綺麗に咲いていますか?
僕は都会が怖いので
蟻をプツプツと潰しています
これ以上苦くならない為に
部屋が散らかっているので
....
冷蔵庫には蟹がある
九本足の蟹がある
あたしは今夜見ないふり
首の赤味を押さえます
もしか
あなたが欲しいのが
甲羅の色のランプなら
あたしは ....
この街は地図に載っているのに
どうして迷ってしまうんだろう
いつも見る夢のイメージで
飛び越えてみようとしたけれど
上手くいかないものだね
今日と明日の境界線は
思いのほか広い
....
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