ポケットから出した手を
温んだ風の中で
大きく振りながら
まるで音色みたいな
あなたの名前を呼んだ
読み飽きた季節の頁が
温んだ風の中で
めくれるように
まるで花弁みたいな
....
ちいさな舟が夜の海をゆく
破れた帆にわずかな風をうけて
帆柱には古ぼけたカンテラ
光はにぶいが少しあたたかい
月のない夜だから
真っ暗の水面は永遠みたい
とじこめられているのか ....
「流れ星に願いをかけて」
「それが 流れ星に もう一度 流れて って願いで」
「また 流れた流れ星に」
「また 同じ願いをかけて」
「・・・ずっと繰り返したら どうなるのかな?」
君がふと溢 ....
{引用=
うしなわれたものは、いつもやわいかたちをしている
それならば、うしなわれるまえに
きずつけずに、たいせつにしていたらよかったのに。
水色の浜辺にちいさな時計をてに ....
朝からユトリロの絵画のような
白い空が満ち満ちていました
夕刻になってようやく
この惑星に落ちてきた雨は
みぞれに変わり
ぬかるんでいくわだち
いつとはなしに雪になり
夜になってはさ ....
羊齒生ひ茂る湧水地
‐清澄な水の中
野生の山葵も生えてゐた
どんな味がするのか?
僕は大事にそれを折り取つた
だが、夢では
夢では味までは分からない
僕は何となく夢の中で夢想した
野趣 ....
安吾の愉悦は
自分の頭で考へる
と云ふ事に盡きる
知の巨人は
逆説に次ぐ逆説で
きみに迫るだらう
神話を覆し
偉人を落魄させ
突き進む安吾は
何処か一休禅師の
狂態に似る
頭の螺 ....
のつぺりした自由だ
僕の顔をしてゐない
自分と云ふ
嫌らしい迄に
嶮岨な山脈を越えてきた
あの自由の顔をしてゐない
ピアスを外し、ピアスをまた着ける
その間に挟まる
沐浴なる時間帯
....
一昨日のテレビで
はじめてその意味を知った子供が
二時間半泣き続けて寝た
男は泣き顔を見られちゃだめなんだ
と言いながらも
その子が愛しくて仕方がない
生きて行くと
心や脳にいくつも ....
Amazonプライムの中の核戦争ドドヤーン
シアタールームに積み上げた本たちが
ドサ
何とかしてよね年上彼氏
震災が来たら一緒にシノーネ
粗大ごみ廃棄300円券をペタ
高枝切り鋏をやっとの ....
{引用=さりゆく夢のなかに
きっと待っていたはずの
いなくなってしまった景色に、
あの朝、
見透かされたような。 束の間の 揺れ ....
またお前が溌剌として空間を行き来する季節が来るよ
まだ蜜はまばゆい重みを湛えるまで熟してはいないが
やがてあらゆる明雪を終わらせる風の便りに指を開き
柔らかな触角で時が経てる悦びを弛まなく識るだ ....
海硝子が集まる潮溜りがあるんだ
陽射をまといやわらかにおし寄せる汀
ひっくり返ったヨットを数え
貝殻なんかひろっていると
不意に気が遠ざかる
雨になれば走れなくなる白い電車が
通う島に ....
ひこうきぐも、
それは、ひこうきが飛んでゆくように、
あっというまに経過してゆく、
とても楽しい、
ひとときのあとの余韻、
ひこうきぐも、
それは青空にもきざみたい、
ぼくのよろ ....
きみが望むなら
この両手をあげよう
きみが望むなら
この心臓をあげよう
ぼくは風となって遠い旅をして来たから
もういいんだよ
いま欲しいのは
きみの頬笑みをひとつだけ
....
1.ジャンク・フード・メモリ
冷蔵庫にババロアがあるから
と言って仕事に行ったけれど
それが本当のことなのか
過去のことなのか未来のことなのか
わからなくなってしまった
残業を ....
・遠く
離れたままで
わたしたち
白い季節を一まい隔てた
(冬の華は六角形に受粉する
その周りを
星の子どもたちが手をつないで
ぐるぐると回りながら
白を蘇生させようとしている
(か ....
子守歌がきこえて
野は秋色にひらけゆく
かなたを渡るひとひらの雲
古き心のなつかしさ……
夏のかたみに置き捨てられた
小さな竪琴を奏でてゐるのは
優し気にうなだれる草々 ....
忘れたものだけ
見ることができた
床に張った
埃 夕日の格子型
蛇口に残る 唇のような水
言うことができた
言い尽くしたことだけを
....
冬晴れの
光あふれる
居間に居て
母の背中と
光をわける
ふたが空いてしまう。
でも、鍵はしていなかった
おもたいふたでもなかったし、
あかない理由もなかったのだ。
蓋が開いてしまうと思う。
水がたくさん入っている。
それから間違えも入っ ....
コン ト ロール ケーキ ケン スギル アイツは、ロッカー
海上花火が鏡のような内浦に映えると
あいちゃんは漁港へと走り出す
地べたに残された線香花火があと三本
八つまわって生まれ年には
かざぐるまで遊びます
昔からそういうこ ....
まだ硬い、
橙色の果皮をつきやぶって、
少しぬめっている、
その冷ややかさ、
滲み出てくる、橙色の果汁、
ほんの少しだけ粘り気のある、
硬めの橙色の果肉、
に挿し込まれてゆく、しろい歯の ....
部屋に椅子がある
隣に体育座りをした母がある
雲が青さを通り越して
手をとり椅子に導く、空は久しぶりね
玄関に並んだ靴
妻は夕食を作り、息子はトミカに夢中
1のつぎの靴 ....
笑っているの?
橋に見えるもののところで
食べているの?
空に見えるもののところで
ぜんぶ君のまぼろしだから
ぜんぶ人のまぼろしだから
強く洗わないで
ふるえる箱から覗く 両眼を ....
高いところを飛ぶ鳥に近づいて見れば
見あげる姿と違ったよ
原始宇宙に漂う 網目のような雨
試されて 行き来する
はじまりは 雲にそっくり
私にもよく似てる 落ちながら
....
どの恋人だったか
アヲハタのサイトがかわいいと
ポインタ空に漂わせ
無心にクリックしたあの頃
やり直せないかな
目が覚めて
自分を嫌いになるまでの
ほんのわずかな時間帯を
まき戻せ ....
青い森の奥に眠る
一匹の小さな竜の子ども
丸まって寝息を立てている
起こしてはいけない
もし目が覚めてしまったら
森の葉がすべて赤くなり
地面から煙があがる
あちこちでパチパチ弾ける音が ....
追い詰められた枝先で
黙り込んだまま
幾つかの季節を
背中を丸めて受け流した
独り言を蹴飛ばして歩いた冬と
味のない言葉を噛み続けた春と
溶けた爪先で帰ろうとした夏を越えて
束の ....
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