どこから。
ひやりとしている土の上で生きている梢の揺れる(揺れる)末端に刺さる光、が
わたしの温い肌に染む ....
この度は思いもかけないことでなどと
気休めを言うものではありません
死ぬことは生きている限り必然で
むしろ生きていることこそが偶然なのだと
私たちは本当は知っているからです
眼前の笑いか ....
ちょっとあんたまた買ったのむやみやたら
よめもしない本ばかりあふれて気がしれない
バルザック? 二十六冊だって、そこいら
にあったじゃない『従妹ベット』やら『純愛』
荷風やら菊池寛やら小林秀雄 ....
チューリップ・ツリーの上で
しきりに鳴いている蝉にしても
伝えようとしているのだ ....
チューリップ・ツリーの下で
まどろみ 森のことや ....
言葉の木を枯らしたのは私です
寄生木を植えたのは私です
萎れてゆく花に拍手したのも
枝を鳥の死骸で飾りたてたのも私です
言葉の木は何も言いま ....
道端で
ガードレールを呑み込んで
冬の蛇が死んでいた
白く 汚く
冷たく 硬く
すべてに背中を向けていた
ひとりの少女が泣きながら
蛇の頭を撫でていた
私は言っ ....
理由なんて
ない
大声を 上げたんだぜ、
因果関係を 超えていく
大声は 勝手だ
ピアスの数が ふえたから
違うだろ
隻手の声のように
逆照射する
俺に
....
乙女温泉ボーリング会社の親方は
掘るのは名人
放るのは素人
乙女温泉協会とのボウリング試合ではいつも
ダブルスコアは当たり前
悔しいので
穴堀対決といきたいとこだが ....
ひとりぼっちの王様がいて
ひとりぼっちの王国を支配していました
ひとりぼっちのテーブルで
ひとり占いをしました
ひとりぼっちの道化師をみつけて
ひとり芝居をさせようか
ひとりぼっちの音楽家 ....
荒地に倒れた鉄塔に
花と葉と鱗に覆われた子が棲んでいた
やまない雨のなか
たったひとりで
ひとりの赤子を生んだあと
風の向こうへと去っていった
雨が近い午後の下
....
火星の人類学者は、毎日毎日「お断り」ばかり繰り返している。「珈琲に砂糖は?」「いりません、ブラックです」「クリームは?」「いりません、ブラックだと言ったでしょ」というたぐいの「お断り」だ。甘いのが嫌い ....
それは嘘である
しがらみのジャングル・ジムを
通過できる肉体はない
青空へ!
跳躍のつかのま
ぼくは地球へ落下する
格言つきの日めくりの上に
欲望と追憶のカリキュラムに
それからしぶし ....
烙印を押してくれ
この世でもっとも繊細な風力計にも
触知されない樹木の呼気を ....
歩道橋の階段に足をかけたのはもう深夜で
街道をゆきかう車のライトがやけにはやい
ひさしぶりに気分が昂ぶっていてなんで
突然そんなふうになったのか皆目わからない
下半身から力がぬけてよろよろとた ....
いつものとおりだと
泣いてしまうので
美味しいお菓子の作り方で
カレーを作る
言葉の王国には
言葉の王様が住んでいて
ある時は
言葉の災いや悲しみに弄ばれ
時には言葉の民や王妃が
言葉の命を落とし
またある時は
言葉の試練が押しよせ
みんなで言葉の手を取りあ ....
夕陽に向かって
加賀一の宮駅裏の公園から
手取川にかかる橋を歩き
まん中のちょっと手前で
深く一息
トン トン トン トン と
公園の方から三つ過ぎの僕がや ....
ある乳飲み子は
愛ある母の乳を飲み
栄養の意味を知らずとも
子供に育ちゆきゆきて
ある男子は乳を忘れ
愛撫ゆえに乳首を吸い
重ねる日々に乳房を選び
ある日衰えを知ってゆく
ある ....
夕焼けは赤いばかりではない
夕焼けは時々青く見える
悲しい夕焼け 青い夕焼け
はっきりとでなく ぼんやりと
はるか遠い夢は輝く
悲しい夕焼け 冷たく輝く
流れた涙は過去へと消えていく
....
暗がりのなか
細い光に照らされて
一匹の蛇が泣いていた
目を閉じたまま
わずかに汚れた白色に
かがやきながら泣いていた
蛇から少し離れた場所に
ひとりの少女 ....
古い写真
同じ年の子供たちが
いっせいにポーズをとって
こちらを見ている
覗き返す
私と
唯一
目が合わなかった
十歳の私
偏屈な子供
いつもみんなが
ガラスの向こうにいるよ ....
影だけが落ちていて 拾い
においだけが落ちていて 拾い
ねむりだけが落ちていて 拾い
線路の上をゆく雲と月に
拾いものでいっぱいの両腕を照らされ
歩 ....
また降ってきた
ぼくは樹木に身をよせ 心を
誰からもみえない角度にかたむけて
ときおり
満ちてくる静けさを
溢れるまえにこぼす
こんな美しい雨のなかでは
ひとも盆栽のように育つだろう
五月に入ると
死んだ詩人のことを思いだす
いつもへんに悪ぶっていたな
「ユリシーズはどこにもいないね」
そう言って
はなやかに降りだした雨の街路に
出て行ったきり
忘れたのか 置いていっ ....
私事ながら、私の詩を評価する方法には3種類ある。(どうでもいいだろうが、一応入りなので読んでいただきたい。すっ飛ばしても影響は無いが。すっ飛ばしたい方は、「見えない」から読んでいただければよろしかろ ....
全然違ってしまったときには
炭酸のような音楽を
太陽が間近の窓で
メッセージを少しだけ受信する先の
光って白くなってしまって
見えないのは
ただの 気のせいさ
....
寒さが染みてきて
壁から伝ってくる
ひ
暖房を酷使しても
革のソファは冷たくて
ふたり絡まりあっていても
耳に吹きかける息が白くにごる
ひ
かつて
部屋の中で燃えていた
暖 ....
溶けた青色を見つけられないまま
虹は消えてしまった
ビルに反射された心音がふるえて
空も消えていく
取り残されたうろこ雲が溺れそうで
それだけはおんなじ、ね
身体を作り直そうと
くち ....
雨季のタレーがなみだつ。かなしみをたたえて、
すぎさってゆく時間をつらぬいて、
浮世のゆれつづける、虚実のいろがみえる。
とおい、タレーのかなたの国へ、ぼくはかえる。
すぐそこにきてい ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131