花、枯木
大山猫

一体何がやって来たのか
我々は知っていた
我々は賢明だった
だから―

     ―枯木を飾るようなことはしなかった

何時風が吹いたか
何時夜が輝いたか
誰が知り得よう
夜は水の中に浸された

     ―木と花と共に

或いは幾つかの水滴のために

一片の器
   それは花

夜の底は煙になる
魚たちが群泳する
その硬い口を開ける
今や失われたものに向かって
全てが
  しかし、
唯時だけが動詞になる

誰でもないのか、それは
遂には咲くのか
その涙は
何処の夜、何処の時間に向かうのか
そして―

    ―そしてどの水槽の前に
            花開くのか―

魚たちは見守る
彼等の鱗は柔らかい
彼等は微塵も動かない
彼等の目は閉じることが出来ない

  今や、
    何処へ
      煙はたなびいていくのだろう―

木々は既に醒めることも眠ることもなく
花だけが
夜の奥へと旅立っていく

誰のものでもないもの
触れることのできないもの
残影

我々は死んでいた
死にながら空を見上げ
時の中へ旅立っていくものを
土の中から
過去の方へと見送っていた

    ―誰も戻りは
         しない―

(花
 或いは枯木の夢)


自由詩 花、枯木 Copyright 大山猫 2003-11-10 21:46:57
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