兎の好きな彼女のために
ペットショップで衝動買いをした
白地に茶色で小さくてかわいくて
その頃僕たちは同棲をしていて
彼女はその兎をピーターと名付けた
2DKのアパートの寝室だっ ....
君と僕は天気予報をしよう。小さな声で。今日のことで明日のことを考えるので、植物がのびるようにそのまま続いていくから、おぼろげな勘でいい。
ウェザー・リポート、ウェザー・リポート。スープはトマ ....
目を閉じて
自分の身体をなぞる
髪がある 冷たい感触
耳がある したのほうが柔らかい
眼窩がある 目が飛び出そうで怖くなる
鼻がある 少し油っぽい
唇がある 言葉が溢れそうだ
首がある ....
ねむるためのよるに
ねむらない
とかすはずの砂糖を
とかさない
珈琲は苦いほうが目に痛い
肝油ドロップをふたつぶ口に入れて
つくりかけのシャツをつくりきる
かたづかない部屋に
....
・マキャベリの「君主論」が好き
・「”不況だから貯金”の意味がわからねぇ。だから不況なんだよ!」と散財
・断末魔のようなヴァイオリンを聞いて ボクシングを観戦するのが好き
寺山修司が ....
供養の途中で 焦点の合わぬ眼球の底から 更なる深みへ静かに それは石段の香り 冷たく流れる幽霊の 砂が塗り込められた手すりを伝って あるいはそれは灰 前は生きていた生物の 一欠片の骨をみんな持ち寄って ....
もしかしたら私は
口にしていいのかも
俯瞰したようだ
街並みである
硝子だった
観葉植物である
イキモノかもしれない
混ぜてある
というのは嘘で
風はある
風だけはある
ほかはみ ....
向日葵の迷路で迷いながら倒れこんで
そのまま眠りにつきたい
とつぶやきながら汗を拭い
晩夏の土間を掃除なんかしてる
今どき土間なんて貴重よう
なんてPTA会長がすました顔で言って ....
脊椎小脳変性症による両上肢機能の軽度障害 6級
両下肢機能の著しい障害 2級
心内膜床欠損症による心臓機能障害 1級
脳性麻痺による日常動作が殆ど不可能な両下肢機能障害、歩行が不 ....
できるだけここから逃げたい
外は雨模様
すべて流されてゆけ、
ぼくの逃げる必要がなくなる
明日は晴れるかい、と聞いたけれど
足跡すら何も答えない、
さようなら、
言葉では簡単だけれど ....
途方もなく大きな岩です
上空に浮かんだ岩が頭上をすっぽりと覆っていて
地面からのびた一本の柱が支えています
大勢の人がその下で暮らしています
街の周囲には巨大な壁があって
だれも外に出られま ....
ここには居ますのよ。
薬漬けの仔猫が。
とってもおりこうです。
気まぐれではないので、触ってもいいわよ。
分かっているのですが、
分からないことにしておきます。
だって、それが一番楽だ ....
何にも見えない黒い空も
何にもないわけじゃなくて
ただ見えないだけで
たくさんの星
あの夜空
どこからかきっとここも
あの夜空などと呼ばれている
数珠繋ぎのテトラポットを登り
いつも地平線のありかを探した
カモメは空で首をかしげながら
背伸びする僕に不思議そうだね
心は遠く海を渡ってゆくけれど
身体は海を歩んでいけないん ....
正方形を書くと
その中に全て収まってしまう
俺の生活とはいったい何であるか
いつかどこかが
縦笛の接点の傾きにおいて
赤く染まる空の角度よ
今日もワイシャツを
裏返し蒸し返す
....
☆立原道造「さびしき野辺」の場合
いま だれかが 私に
花の名を ささやいて行った
私の耳に 風が それを告げた
追憶の日のように
いま だれかが しづかに
身をお ....
譲治は
転んでもすぐには泣かずに
ひざ小僧の痕を
ひとつふたつと
数えていた
数えているうちに
血が滲んできて
滲んでくる血を見ているうちに
お婆が寄り添ってきて
....
空を破る鳥があり
空を貫く鳥がある
裂けめと裂けめの間から
別の空はすぐ消える
見る鳥だけがそれを見る
去る鳥だけがそこへ去る
雨と緑に
鴉ばかりが実っては鳴 ....
灰色の朝でも、
朱色の朝であっても、
六時の時報をラジオが伝え、
その日がたとえば八月十五日朝六時のニュースです、と
個性を消した声がする。
日々つみかさねられ、くりかえされてゆく
あたら ....
夕暮れの中へ
白鳥たちが
旅立った方角を見つめて
僕も両腕を羽ばたかせている
彼らは悲しみを捨てに行った
南国のフラミンゴ
陽気な友の声を聴きたいそうだ
ま ....
手のひらから小鳥が生まれる
4月の終わりにそれは始まり
僕は少しずつかなしみを知ってゆく
朝目覚めると小鳥は一羽生まれる
だからといって何もしてあげられない
飼い方も知らない ....
<パンダ禁止>
薄汚れた白と汚れの見えない黒でできている
パンダになることは禁止されている
パンダであることは禁止されていないので
檻に入って、笹などを食んでいる
<しまうま ....
ベランダ越しの未だ遠くは
氷雨と陽光がないまぜとなり
見慣れた不陸の白い壁へ
硝子に囚われたあまたの雫が投影されゆくのを
掬い 指で 伝い
一筋いきおい斜めにたゆたい
曳かれてゆくものなど ....
舗道を歩いていました
敷石の目地をいつまでも眺めていました枯葉が挟まれていました思わずよけて
雨が
濡らしたのは前髪で
手前に向うに硝子の簾のように
遠近の補助線となりそれはカンバスという名 ....
本島中部の小学校で よくあるように
高台を開いた土地に建てられていました
二年生の教室だけは校庭をはさんだ東側に
平屋建ての校舎でした
その校舎の裏に緑の小さな森山(ムイ) ....
常夏の島の書き割りが落ちたら
きっとここは西日の当たる四畳半
でも大丈夫
西日の当たる四畳半で今度は
アフリカ大陸の書き割りを描いて
サファリルックに身を包むから
そう ....
スーパーで買い物をしている間に、外はすっかり暗くなって心細くなった。
自転車に積んだ荷物が重くて、よろけないように注意しながら、狭い四つ辻を車と車の間をすり抜けながら曲がった。
ふいに木に咲く ....
「笑う君の手の甲に浮かぶ血管を見て恋に落ちました。(まる)」
背の高い君が体を折り曲げてあたしを覗き込むその目が好き
この恋は本物なんて思わないけど本気だってことはわかるわ
ばらばらに砕けたあた ....
一対五で混ぜるのよ
カナコさんは慣れた手つきで
ビンのどろりとした白い液体を
コップに注いた
それから
冷えたペットボトルを冷蔵庫から出して
ぐわぐわっと振ってから
神妙な手つきで
....
おはよう
冗談でしょ?
冗談だよ
おやすみ
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